平日の夜、愛聴しているFM番組のエンディングソングが気になっていた。透明感のある地声とファルセット。独特のコブシ回しから、喜納昌吉あたりと同年代の民謡歌手かなと思っていたら、それが25歳の中孝介だった。
彼はひとつ年上の元ちとせが島唄を歌う姿に衝撃を受け、独学で島唄を身につけて、インディーズから4枚の島唄CDをリリース。現在も故郷・奄美大島を中心にライブなど精力的な音楽活動を行なっている。
そんな彼のメジャーデビューとなるのが、このMAXIだ。これから新しい世界に旅立とうとする人への卒業ソング『それぞれに』。答えを選ばない生き方もあると悟す『白と黒の間に』。『マイ・ウェイ』中孝介版のような『道』。「くるり」のナンバーの中でも最も切ない曲のひとつ『街』。やはり天賦の声の魅力は圧倒的で、どの曲も心の奥深い部分にある琴線にまで触れてくる。ボーカルを際立たせるアコースティックなアレンジもいい。
裏声を多用し、哀調を帯びた旋律が特徴の、沖縄とも違う奄美の島唄という、ディープな歌世界を背景に持つ中孝介。1曲1曲をかみしめながら聴いている。