歳のせいか、酔いの帰りに電車の中で最終章を読みながら思わず目頭が熱くなってしまった。
過剰な表現や何かを誇張するような描写はなく、物語は淡々と心地よいリズムで主人公の日常を描写していく。
季節は過ぎ、世の中はゆっくりとしかし確かに移り変わり、
そのなかで人々は出会いと別れの繰り返しの渦を生きていく。
日本のどの地方でも似たような光景が拡がっていたのだろうことを想像させてくれ、
主人公は成長とともに旅立っていく。
優れた芸術とは巧みに時代を切り取る作業のことをいうのだとということを痛感した。
絵画であれば二次元のなかに時代と瞬間を視覚的に描写し、
演劇であれば舞台上という三次元空間ののなかで時間的に時代を表現する。
そして、小説とは言語という人類の唯一無二の表現方法を駆使して「映像的に」その時代を切り取るのだ。
しろばんば (偕成社文庫) (日本語) 文庫 – 2002/4/1
井上 靖
(著)
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本の長さ414ページ
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言語日本語
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出版社偕成社
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発売日2002/4/1
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ISBN-104036524607
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ISBN-13978-4036524600
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
伊豆の湯ヶ島の山村で、おぬい婆さんと二人で暮らす洪作少年の日々。ゆたかな自然と、複雑な人間関係のなかで洪作少年の心は育っていきます。井上靖の自伝的な名作。小学上級から。
内容(「MARC」データベースより)
伊豆の湯ヶ島の山村で、おぬい婆さんと二人で暮らす洪作少年の日々。ゆたかな自然と、複雑な人間関係のなかで、洪作少年の心は育っていきます。井上靖の自伝的な名作。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
井上/靖
1907年北海道で生まれ、伊豆・湯ヶ島の戸籍上の祖母のもとで小学校時代を過ごす。京都帝国大学哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。1950年、「闘牛」で芥川賞を受賞。翌年、新聞社を退社して作家活動に専念する。1976年、文化勲章受賞。1991年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1907年北海道で生まれ、伊豆・湯ヶ島の戸籍上の祖母のもとで小学校時代を過ごす。京都帝国大学哲学科卒業後、毎日新聞社に入社。1950年、「闘牛」で芥川賞を受賞。翌年、新聞社を退社して作家活動に専念する。1976年、文化勲章受賞。1991年没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 偕成社 (2002/4/1)
- 発売日 : 2002/4/1
- 言語 : 日本語
- 文庫 : 414ページ
- ISBN-10 : 4036524607
- ISBN-13 : 978-4036524600
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Amazon 売れ筋ランキング:
- 513,562位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 296位芥川賞受賞(1-25回)作家の本
- - 6,043位童話・こどもの文学
- - 6,484位日本文学研究
- カスタマーレビュー:
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トップレビュー
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2020年7月23日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
私の一番好きな小説が、このしろばんばから始まる三部作。いずれも長編ですが、もう何回も読み返しています。それでも飽きることなく毎回爽やかな感動を与えてくれます。
一作目となるこのしろばんばは、一言で言えば洪作少年の成長と、出会い、別れがテーマでしょうか。全編に滲み出る優しさが胸に迫る作品ですが、同じくらい散りばめられているユーモアのセンスが素晴らしく、何度読んでも笑ってしまう。そのバランスが絶妙で、だからこそ最後まで飽きさせないんだなあと改めて感じます。
また、人物描写も特筆すべき部分です。かなり多くの登場人物が出て来るにも拘らず、そのひとりひとりの性格や口調、あまつさえ容姿までいつの間にかイメージできてしまう。だからこそ感情移入できるし、物語にどんどん入り込めます。必然、会話シーンが多いのですが、非常に分かりやすくスラスラと頭に入ってくる。恐らくは作者の卓越した筆力、緻密な計算によるものでしょうが、小説において極めて重要なことだなと感じます。これは三部作を通じて言えることです。
登場人物には優しい人も少し意地悪な人も魅力的な人物が多く、やはり特筆すべきはおぬい婆さん。洪作への無尽蔵の愛情と信頼関係は、理想的な子育てでは無いかとさえ思ってしまうほど。血のつながりなど大した意味もないと感じます。
物語の構成要素として、どんでん返しはおろか、殺人や性的描写なども皆無、恋愛ですら淡い恋心があるかどうか、という、極めて平凡に展開する物語なのに、これほど心を惹きつけられる作品になっているのは本当に驚きです。
それがかえって私達の日常と結びつき、成長する過程で誰もが通る幼い頃への憧憬、戻らない日々への鎮魂のように心を揺さぶられるのではないでしょうか。
人間として生きるための大切なものが、この作品にはたくさん詰まっている。そんな気がします。
一作目となるこのしろばんばは、一言で言えば洪作少年の成長と、出会い、別れがテーマでしょうか。全編に滲み出る優しさが胸に迫る作品ですが、同じくらい散りばめられているユーモアのセンスが素晴らしく、何度読んでも笑ってしまう。そのバランスが絶妙で、だからこそ最後まで飽きさせないんだなあと改めて感じます。
また、人物描写も特筆すべき部分です。かなり多くの登場人物が出て来るにも拘らず、そのひとりひとりの性格や口調、あまつさえ容姿までいつの間にかイメージできてしまう。だからこそ感情移入できるし、物語にどんどん入り込めます。必然、会話シーンが多いのですが、非常に分かりやすくスラスラと頭に入ってくる。恐らくは作者の卓越した筆力、緻密な計算によるものでしょうが、小説において極めて重要なことだなと感じます。これは三部作を通じて言えることです。
登場人物には優しい人も少し意地悪な人も魅力的な人物が多く、やはり特筆すべきはおぬい婆さん。洪作への無尽蔵の愛情と信頼関係は、理想的な子育てでは無いかとさえ思ってしまうほど。血のつながりなど大した意味もないと感じます。
物語の構成要素として、どんでん返しはおろか、殺人や性的描写なども皆無、恋愛ですら淡い恋心があるかどうか、という、極めて平凡に展開する物語なのに、これほど心を惹きつけられる作品になっているのは本当に驚きです。
それがかえって私達の日常と結びつき、成長する過程で誰もが通る幼い頃への憧憬、戻らない日々への鎮魂のように心を揺さぶられるのではないでしょうか。
人間として生きるための大切なものが、この作品にはたくさん詰まっている。そんな気がします。
2018年6月24日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
小学生の目から見た大人の言動。小生もふりかえってみれば、納得できないところはたくさんありましたね。なぜあんなふうに人は正直でないんだろうとか、なぜあんな嘘を平気でいえてしまうのかとか。結局人間って、本質のところは子供も大人も年寄りも同じで、みんな内に人の心を映す真正な鏡があって、それがちゃんとみえるかどうかは自分の心のありようしだいなんですね。曇ったときは磨けば、はっきり見える!そして言うことと、みえることはちがうということ。
2020年11月14日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
井上氏の少年期が描かれた作品。今まで「天平の甍」「敦煌」「あすなろ物語」「氷壁」を読んできた。井上氏のあくまで事実を描写する作風は、ときに物足りなく、それゆえ想像力を掻き立てられ、脳裏に情景が焼き付く不思議な読後感がある。「しろばんば」ではその実感がやはり強い。少年が経験する一つ一つの出来事が、井上氏が記憶を紐解くように紡ぎ出されていく。一見、起伏の少ない単調な出来事の羅列に思えるが、確かに井上少年の一部となっていくのがわかる心情の変化が各所にキラリと散りばめられている。そのため一度読んだだけでは「?」な部分も、今後2度3度読む中でその布置ともいうべき意味合いが立ち現れる気がしてならない。少年のまっすぐな感性が、大正の山里で、様々な人間に触れながら、人生の悲哀や深みを感じとっていく、純朴な物語。