感動的な戦記、「ペリリュー 楽園のゲルニカ」(武田一義、白泉社)へ与えられたのが、日本漫画家協会の優秀賞。評価の理由はこう。
「可愛らしい温もりのある筆致ながら、『戦争』という底知れぬ恐ろしさと哀しさを深く表現して見事です」
誰しも共感するこの賛辞には、ルーツがあったと言えば、誰しも驚く。わたしもそうでした。
それが、「さよならタマちゃん」。実体験をもとにしたノンフィクション漫画です。
しかも本作で、武田氏は漫画家アシスタントから、漫画家へのデビューを叶えました。
◎がんと告げられる前に読むべき本です
題名のタマちゃんとは睾丸のこと。片方が鶏の卵のごとく肥大し、スーパーボールのように弾力がある状態になった。診断は睾丸のがん。作者35歳のときだった!
しかも診断は「肺に転移」。そこで手術で片方を切除し、その後、抗がん剤治療を行うことになったのです。
この抗がん剤治療がいかに凄まじいか、
「可愛らしい温もりのある筆致ながら、『抗がん剤治療』という底知れぬ恐ろしさと哀しさを深く表現して見事です」
ペリリューで生き残り、さらに生きようともがく兵士たちの心と体を描写できたのは、がん治療ゆえだったのでしょう。
104ページ。高齢の病室仲間との会話です。
「ひょっとして食事のにおいがダメでここに?」
「そーです。そちらもですか?」
「そーです」
「抗がん剤ですよね。何、使ってるんですか?」
「え、種類ですか? えーと確か・・・
プレオマイシンと
シスプラチンと
エトポシドとかって・・・」
(中略)
「シスプラチンの原料ってさ、プラチナなんだよ。あの金属のプラチナ」
「なんだよ!! プラチナって。そんなのっがん治す前に体ぶっ壊れて当然だろっ!!」
◎抗がん剤の真実を学びて読みましょう
本書は抗がん剤治療の「患者サイドからの実態」を見事に描いています。
読めば、「やりたくない」と誰しも思うでしょう。そこで「ではどうするか?」「医者の言いなりにならないためには?」と考えれば、光明が見えてきます。
まずは近藤誠医師の情報開示。「固形がんには抗がん剤は効かない」。そして「抗がん剤でがんは治せない」。
もっとも大切な情報は、「抗がん剤は発がん剤」であり、家族をがんにするリスクがあることでしょう。
「さよならタマちゃん」のおう吐シーン、排便シーン、愛妻とのスキンタッチ、愛犬とのじゃれ合いにも、がんを移すリスクがあったのです。
「看取り先生の遺言2000人以上を看取った、がん専門医の『往生伝』」(奥野修司著、文春文庫)
2000人を看取り、自分もがんで若死にした岡部医院の院長の遺言は必読です。
<抗がん剤自体に発がん性があるのに、そのことが最近まであまり意識されてこなかった。(中略)私と一緒にがんを手掛けてきた同僚は両手で数えられないほど亡くなったが、ほとんど”がん死”である。がんの治療医だから、抗がん剤を吸い込んだのだろう。
かつて病棟の看護師が抗がん剤を扱っていたことがあった。そのとき、霧状に飛散した薬剤を吸い込んだ看護師の尿から、遺伝子が変化した物質が高濃度に出たり、流産率が高いといったデータが海外で発表された。そのことが問題になってから、今はマスクや防護服で医療者を守り、安全キャビネットといわれる装置で調剤して病室に届けるようになったが、患者のことは今でもまったく考慮されていない>
「さよならタマちゃん」に描かれたのは、「患者のことはまったく考慮しない」大学病院の抗がん剤治療の実態でした。岡部院長の言うとおり。
<抗がん剤を投与されたら、抗がん剤が混じった汗が滲み出てくるが、その患者が孫を抱っこしたとき、孫との接触を通して抗がん剤が孫の皮膚から吸収されてしまうおそれがある>
少なくとも孫を抱っこするときは長袖を着て手袋を二重にしないといけない。そうでなければ、小さい子供と接触すべきでないのだ>
2人に1人ががんを告げられる日本、一度は目を通しておくべき本であり、おもしろいノンフィクションです。
奥さんとの愛が深まってゆくプロセスも、感動的でした。
さよならタマちゃん (イブニングKC) (日本語) コミック – 2013/8/23
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武田 一義
(著)
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本の長さ280ページ
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言語日本語
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出版社講談社
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発売日2013/8/23
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ISBN-104063524779
-
ISBN-13978-4063524772
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商品の説明
著者について
武田 一義
武田一義
2012年7月『さよならタマちゃん』でデビュー(掲載誌『イブニング』)。
漫画家アシスタントをしながら本作を描き上げる。
今後が期待される注目の新人。
武田一義
2012年7月『さよならタマちゃん』でデビュー(掲載誌『イブニング』)。
漫画家アシスタントをしながら本作を描き上げる。
今後が期待される注目の新人。
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カスタマーレビュー
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2018年12月11日に日本でレビュー済み
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15人のお客様がこれが役に立ったと考えています
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2017年10月9日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
可愛らしい絵柄と抑え気味の筆致のため、読みやすいのですが、いろいろと考えさせられます。読後感がとても長く持続します。
それは、闘病記を”背景”として、実は、奥様と飼犬と、そして周囲の人々とのつながりや信頼関係をすごくあたたかく描いているからではないでしょうか。
闘病記だけだったら、それはそれで貴重な本になったと思うものの、ここまで読ませる本にならなかったのではないかと思います。ただ起きたことを記録していくのでは、貴重な記録にはなるけれど、とても読みにくい、つらいものになってしまうと思うので。
全体に抑え気味でユーモラスに淡々と話が進んでいきますが、時に感情が爆発する時が出現します。そのメリハリの付け方も見事です。素晴らしい表現力です。
特に、奥様の描写がとてもいいですね。
多少話を美化されているところがあるのかもしれませんが、それもあって、完成度のとても高い作品だと思います。
癌の種類によって治療のやり方や症状、しんどさが違うということは確かにありますので、癌患者全員が皆この本に描かれているような経過をたどるわけではないのはもちろんです。
それぞれの患者で、病気や入院生活、治療に対する受け取り方や感じ方も大きく違うと思います。
しかし、ここまで読みやすくわかりやすく患者目線を伝えてくれる本は少ないのではないかと思います。医療従事者にとって大変参考になる本です。
それは、闘病記を”背景”として、実は、奥様と飼犬と、そして周囲の人々とのつながりや信頼関係をすごくあたたかく描いているからではないでしょうか。
闘病記だけだったら、それはそれで貴重な本になったと思うものの、ここまで読ませる本にならなかったのではないかと思います。ただ起きたことを記録していくのでは、貴重な記録にはなるけれど、とても読みにくい、つらいものになってしまうと思うので。
全体に抑え気味でユーモラスに淡々と話が進んでいきますが、時に感情が爆発する時が出現します。そのメリハリの付け方も見事です。素晴らしい表現力です。
特に、奥様の描写がとてもいいですね。
多少話を美化されているところがあるのかもしれませんが、それもあって、完成度のとても高い作品だと思います。
癌の種類によって治療のやり方や症状、しんどさが違うということは確かにありますので、癌患者全員が皆この本に描かれているような経過をたどるわけではないのはもちろんです。
それぞれの患者で、病気や入院生活、治療に対する受け取り方や感じ方も大きく違うと思います。
しかし、ここまで読みやすくわかりやすく患者目線を伝えてくれる本は少ないのではないかと思います。医療従事者にとって大変参考になる本です。
2018年3月12日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
癌の闘病生活を綴ったエッセイ漫画。
とても可愛らしいタッチの読みやすい絵柄なのでとても読みやすかったです。
作中の作者さんの年齢と同じくらいなので、健康について色々と考えさせられました。
病気を題材にしたエッセイ作品の感想で「自分と比べて○○さんは恵まれているから参考にならない(感情移入できない)」というような意見を時々見かけます。
何故突然そんなことを書いたかと言いますと、この作中、「自分は恵まれた環境にあるのだから頑張らなきゃ」と思い詰めた作者さんが精神の限界にも達して感情を爆発させてしまうシーンがあるのです。
症状も、置かれた環境も、人によってバラバラでしょうから、武田さんのようなことを考えた人もそうでない人もいると思います。
もしかしたらそういう場面があってもエッセイの中には描かずにしまっておくという人もいるかも知れない。
でも、そこを描いてくれたことで、身近な人の身に起きることでもあるんだよなあと改めて気付かせて貰えた気がしました。
うまく書き表せないんですが、等身大の「人間臭さ」を感じられる良い漫画だなと感じられた作品でした。
現在進行形で闘病している人が読むのは色んな意味でキツイかもしれませんね。
でも読み終わって、たくさんの人に読んでほしいなと思えた本でありました。
武田さんのご多幸を願います。
とても可愛らしいタッチの読みやすい絵柄なのでとても読みやすかったです。
作中の作者さんの年齢と同じくらいなので、健康について色々と考えさせられました。
病気を題材にしたエッセイ作品の感想で「自分と比べて○○さんは恵まれているから参考にならない(感情移入できない)」というような意見を時々見かけます。
何故突然そんなことを書いたかと言いますと、この作中、「自分は恵まれた環境にあるのだから頑張らなきゃ」と思い詰めた作者さんが精神の限界にも達して感情を爆発させてしまうシーンがあるのです。
症状も、置かれた環境も、人によってバラバラでしょうから、武田さんのようなことを考えた人もそうでない人もいると思います。
もしかしたらそういう場面があってもエッセイの中には描かずにしまっておくという人もいるかも知れない。
でも、そこを描いてくれたことで、身近な人の身に起きることでもあるんだよなあと改めて気付かせて貰えた気がしました。
うまく書き表せないんですが、等身大の「人間臭さ」を感じられる良い漫画だなと感じられた作品でした。
現在進行形で闘病している人が読むのは色んな意味でキツイかもしれませんね。
でも読み終わって、たくさんの人に読んでほしいなと思えた本でありました。
武田さんのご多幸を願います。
2019年10月26日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
長期の入院を終えて明日退院する夜に
片付けを終えた部屋のベッドで偶然読みました、
病気を本当に治すのは愛なんだろうなって
いう風に思いました
家族
仕事仲間
病気仲間
お医者さん
看護師さん
少しも愛を返せるような人生を送っていきたいです
病気は何かを失わなければならないし
病気は何かを得るということ
使い古された言葉ですが真理だと思いました
静かな病室で一人読めて本当に良かったです
弱さと向き合うことで強くなること
そんな当たり前のことが
できるような人間に
なりたいと思いました
入院をするかたには
是非読んでほしい本です
片付けを終えた部屋のベッドで偶然読みました、
病気を本当に治すのは愛なんだろうなって
いう風に思いました
家族
仕事仲間
病気仲間
お医者さん
看護師さん
少しも愛を返せるような人生を送っていきたいです
病気は何かを失わなければならないし
病気は何かを得るということ
使い古された言葉ですが真理だと思いました
静かな病室で一人読めて本当に良かったです
弱さと向き合うことで強くなること
そんな当たり前のことが
できるような人間に
なりたいと思いました
入院をするかたには
是非読んでほしい本です
2019年1月9日に日本でレビュー済み
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ペリリューを最初に読んで武田先生の作品は一気に好きになりました。
かわいらしい絵とは裏腹に鋭くリアルな描写が心に刺さります。
病気の時の葛藤ってなかなか知る機会がないし、どんな時にどんなことを考えるか感じてるのかなど、改めて思い知らされることがたくさんあります。
武田先生が病気を克服されてデビューされて作品を届けてくださり本当に良かった!と思いました。
泣けるポイントが多々あるので公共の場で読むのは要注意です!
かわいらしい絵とは裏腹に鋭くリアルな描写が心に刺さります。
病気の時の葛藤ってなかなか知る機会がないし、どんな時にどんなことを考えるか感じてるのかなど、改めて思い知らされることがたくさんあります。
武田先生が病気を克服されてデビューされて作品を届けてくださり本当に良かった!と思いました。
泣けるポイントが多々あるので公共の場で読むのは要注意です!
2014年3月30日に日本でレビュー済み
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この作品は、スタッフや担当編集者、及び掲載雑誌の編集部門などの「頑張れ!」が聞こえてくる漫画ですね。
作者本人の気持ちや頑張りだけでは、幾らたいへんな経験をしてても、ここまでの作品にはならなかったと思います。
作者の人柄が、周辺の関係者にここまで支えさせたんだと思います。
冗長にならずに、入院生活をいい空気感で描写できてると感じました。
多分、この手合いの漫画ではテンポが一番難しいと思います。
ブラックジャックによろしくとかとは、まるで違うテーマで、漫画では難しいテーマだったと思いますが、
コマも台詞回しも過不足無く「すごくよかった」です。
健康も大切なのですが、寄り添える人の存在こそがやはり財産ですね。
作者本人の気持ちや頑張りだけでは、幾らたいへんな経験をしてても、ここまでの作品にはならなかったと思います。
作者の人柄が、周辺の関係者にここまで支えさせたんだと思います。
冗長にならずに、入院生活をいい空気感で描写できてると感じました。
多分、この手合いの漫画ではテンポが一番難しいと思います。
ブラックジャックによろしくとかとは、まるで違うテーマで、漫画では難しいテーマだったと思いますが、
コマも台詞回しも過不足無く「すごくよかった」です。
健康も大切なのですが、寄り添える人の存在こそがやはり財産ですね。
ベスト500レビュアー
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ペリリューのコミックの作者とのことで、こちらも拝見しました。
癌での入院生活の実体験を通したかなり重い話なのに、著者の人柄と絵柄で面白く(といったら失礼ですが)読めました。
自分も入院してみていろいろ大変さを実感したのですが、たぶん入院とかしたことがなくても入院生活の大変さとか、病院に入ってる方の大変さ・辛さを感じることができるのではないでしょうか?
また病気になって健康の有難さ、人の優しさが分かると思います。人生観がすこし変わるような気がします。
癌での入院生活の実体験を通したかなり重い話なのに、著者の人柄と絵柄で面白く(といったら失礼ですが)読めました。
自分も入院してみていろいろ大変さを実感したのですが、たぶん入院とかしたことがなくても入院生活の大変さとか、病院に入ってる方の大変さ・辛さを感じることができるのではないでしょうか?
また病気になって健康の有難さ、人の優しさが分かると思います。人生観がすこし変わるような気がします。














