凄く感動した。本当に読んで良かった。何度も読み返したくなる。チャップリン自伝とも似ている。満州で生まれた赤塚が数々の苦難を経て、やがて漫画家となり成功するまでの、家族の愛と奮闘の話だ。ある意味、赤塚漫画より面白い。本人の人生やエピソードを含めての「赤塚ワールド」なのだな。母親と父親への愛があふれている。両親のなれそめの話から、やがて母を父を送る話で終わる。赤塚には、実は、それこそが生きる糧、目的、存在証明であったのではなかろうか。両親他界後、アルコールに溺れてしまう。本書はそうなる直前の執筆だ。
満州での幼少時代の記憶から話が始まる。記憶力がいい。数々のエピソードの事情、背景を小さいころから察していたんだ。父親の仕事(国境の特務員)の豪快な話からやがて敗戦、父親のシベリア抑留、母子の放浪と帰国、母方の実家(大和郡山)での小学生時代、母を支える貧困の生活。このあたり、チャップリン自伝とも似ている。大和郡山での悪ガキのいたずらや遊び、冒険の話が面白い。遊びの才能があり、人気者だった。仲間や弱い者を大事にする思いやり、母親似の男前だから女の子に凄く持てたエピソード、チビ太みたいな子供もいた。ここに赤塚漫画の原点=原っぱで遊ぶ悪ガキたち、があるのだな。
母親が美人で何事にもバイタリティーいっぱいってのが凄い。大和郡山の母の実家の母の妹は「ミス郡山」だったらしい。働きに出る美しい母親が、寝ぼけている不二夫に顔を近づけて「行ってくるね」と言うことに至福の喜びを感じたと述懐する赤塚。執筆時には既に母は亡く、自伝執筆は母に再会する機会であったのだな。やがて父親の実家(新潟)に移り、父親もシベリアから帰還するのだが、新潟の親戚の不人情が哀しい。もちろん、大事にしてくれる親戚もあったのだが。やがて、上京し、漫画家を目指し、トキワ荘の修業時代。遅れて母親も上京、石森や水野らとの共作や手伝い、やがてデビュー。結婚後、「おそ松くん」で大ブレイク。このあたりの話は他にもいろいろ書かれているが、石森や奥さんに感謝する赤塚の謙虚な姿勢が好ましい。本当に魅力的な人格だな。その後の赤塚マンガは、独創的な「キャラ」の創出、従来の漫画を超えるような次元に達するのだが、本書ではそれよりも、父のNHK集金人での勤務など、晩年の母と父の様子を詳しく書く。父母の人生へのしみじみとした尊敬と愛情が泣かせる。昭和の激動の家族史として、マジに教科書に載せるべき本だ。
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