世界中で貧富の格差が拡大している。アメリカでは全体の1%の富裕層が国の富の大部分を独占していると言われている。ヨーロッパの主要国でも日本でも、アメリカを追いかけるように格差の拡大が進み、経済成長への歩みが停滞、混迷に入り込んでいる。スティグリッツ教授は、アメリカにおいて格差が拡大したのはこれまでの誤った経済政策がもたらした結果であることを立証し、格差問題の解決への処方箋を提示している。
アメリカ政府はレーガン政権以来35年間にわたり、経済の供給側(サプライサイド)を重視する政策を続けてきた。規制緩和を進め、富裕層の減税を行い、社会保障費を減額すれば、事業が進めやすくなり、経済が活性化する。その結果、経済成長が実現し、生み出された富は富裕層からしたたり落ちて国民全体が豊かになる、と悦明してきた。いわゆる新自由主義経済論である。ところがそんなことは起こらなかった。富裕層はますます富み、中間層は崩壊して、貧しい階層が大量に生まれたのである。つまり、政府によって政策的に貧富の格差が拡大してきたのである。また、膨らんだ富は生産的な価値拡大ではなく固定資産(土地)の価格上昇に起因するため生産性の高い経済にはつながらない。またその富を投資に向けるのではなく、短期的思考によって株主配当や経営者の報酬へ回した結果、経済のいっそうの停滞を招いている。
スティグリッツ教授はアメリカ政府の政策を厳しく断罪したうえで、これらの問題を解決する政策を2章にわけて具体的に提案する。すなわち、1.最上層をいかに制御するか、2.中間層を成長させる、であるが、ここには「銀行やクレジットカードの手数料を減らす」「CEO報酬に歯止めをかける」「労働基準法違反への罰則を強める」「最低賃金を引き上げる」「保育対策の経済効果」「医療費を手ごろな価格へ」等々の実現可能性の高い提案が並ぶ。若者によるウォール街占拠事件の理論的指導者であったスティグリッツ教授だけあって、貧しい階層に寄り添ったきめの細かな政策提案に驚くとともに深く共感した。教授の格差社会の分析と処方箋は、その多くが日本の現状にも当てはまるはずだ。そしてスティグリッツ教授の着眼点と提案の現実性からは、一昨年亡くなられた宇野弘文教授の理念と思考と同質のものを強く感じた。
本書は、スティグリッツ教授の前著である「世界の99%を貧困にする経済」「世界に分断と対立を撒き散らす経済の罠」と重複する部分が多いが、現状と原因分析と対策がわかりやすく整理されており、前著2冊よりはずっと理解が容易であった。経済の成長と平等は実現できるとする教授の次の言葉は、多くの人に希望と勇気を与えるであろう。
「もう間違った選択はしてはならない。現在の状況で進路を変えるのは簡単ではないが、国のシステムを構築するルールを書き換えるという選択はできる。そうすることで、政府と企業と労働者のバランスを取り戻し、万人のために機能する経済をつくっていける」(232ページ)。
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これから始まる「新しい世界経済」の教科書: スティグリッツ教授の 単行本 – 2016/2/18
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これから経済を勉強したい人はもちろん、身の回りの経済事象の本質を知りたい人に最適の一冊! いまなぜ資本主義は崩壊の危機にあるのか。巨大格差、移民問題の何が問題なのか。決算粉飾などの企業モラルの低下はなぜ起こるのか。経済は対立や紛争をいか世界に生み出してきたのか。グローバル化はなぜ人々を不幸にするのか……。ノーベル経済賞受賞のスティグリッツ教授が、既存の経済学の誤りをわかりやすく示し、新たな経済の枠組みを説く。
- 本の長さ251ページ
- 言語日本語
- 出版社徳間書店
- 発売日2016/2/18
- ISBN-104198641048
- ISBN-13978-4198641047
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出版社より
ノーベル賞経済学者が示す未来の姿 いまなぜ資本主義の崩壊が起きているのか?これまでの経済学はどこで間違えたのか?
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既存の経済学は間違っていた?アメリカ型資本主義は、巨大な格差社会を生んでしまった。同時に国家や社会を疲弊させ、各国で動乱や経済危機を生み続けている。 一体これはなぜなのか?これまでの経済学はどこで間違ってしまったのか?ゆがめられた資本主義の真実を暴き、新しい世界経済のあり方を問う! |
平等と繁栄が両立する経済とは?アメリカ経済衰退の原因を解説し、一連の処方箋を提示。 不平等を縮小し、企業のロビイストや政治家の特権やインセンティブの綱を引きちぎり、経済を支配するルールを再構築する。 |
スティグリッツ経済学を丁寧に解説各章ごとにキーワードとポイントを収録。また豊富な図解とグラフがあるので、この1冊でスティグリッツ経済学が学べる。 |
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
アメリカ型資本主義にリードされた世界各国で、経済は強くなっても中流層は弱くなるという未曽有の事態が次々と発生。富裕層に富は集中し、中・下層は沈んでいくばかりで、巨大な格差社会が到来してしまった。同時に国家や社会を疲弊させ、各国で動乱や経済危機を生み続けている。一体これはなぜなのか?これまでの経済学はどこで間違ってしまったのか?気鋭のノーベル賞経済学者スティグリッツが、ゆがめられた資本主義の真実を暴き、新しい世界経済のあり方を問う!
著者について
2001年「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル経済学賞受賞。1943年米国インディアナ州生まれ。エール大学はじめオックスフォード、プリンストン、スタンフォード大学で教鞭をとる。1993年クリントン政権の大統領経済諮問委員会に参加、95年より委員長に就任し、アメリカの経済政策の運営にたずさわった。97年に辞任後、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストを2000年1月まで務める。行動する経済学者として、世界を巡りながら経済の現状を取材し、市場万能の考え方を強く批判している。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
スティグリッツ,ジョセフ・E.
2001年「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル経済学賞受賞。1943年米国インディアナ州生まれ。エール大学はじめオックスフォード、プリンストン、スタンフォード大学で教鞭をとる。1993年クリントン政権の大統領経済諮問委員会に参加、95年より委員長に就任し、アメリカの経済政策の運営にたずさわった。97年に辞任後、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストを2000年1月まで務める。現在はコロンビア大学教授
桐谷/知未
東京都出身。南イリノイ大学ジャーナリズム学科卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
2001年「情報の経済学」を築き上げた貢献によりノーベル経済学賞受賞。1943年米国インディアナ州生まれ。エール大学はじめオックスフォード、プリンストン、スタンフォード大学で教鞭をとる。1993年クリントン政権の大統領経済諮問委員会に参加、95年より委員長に就任し、アメリカの経済政策の運営にたずさわった。97年に辞任後、世界銀行の上級副総裁兼チーフエコノミストを2000年1月まで務める。現在はコロンビア大学教授
桐谷/知未
東京都出身。南イリノイ大学ジャーナリズム学科卒業。翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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登録情報
- 出版社 : 徳間書店 (2016/2/18)
- 発売日 : 2016/2/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 251ページ
- ISBN-10 : 4198641048
- ISBN-13 : 978-4198641047
- Amazon 売れ筋ランキング: - 44,765位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 23位世界の経済事情
- - 2,161位投資・金融・会社経営 (本)
- カスタマーレビュー:
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Rewriting the Rules of the American Economy: An Agenda for Growth and Shared Prosperity(2015)の邦訳。アメリカの事例が中心だが、参考になる。アメリカでは、80年代以降株主への配当が二倍近くになっているが、投資は増えていない(四割から一割へ)。94頁参照CEO報酬制度などはまだ日本では一般的ではないが、株主優遇は同じだし、「短期主義的」傾向が顕著になりつつある。ピケティへの言及も興味深い。「中間層を成長させる」(第5章章題)のがとりあえずの策である。Rewriting the Rules of the American Economy: An Agenda for Growth and Shared Prosperity – November 2, 2015by Joseph E. Stiglitz (Author)
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ジョセフ・E・スティグリッツ(1943年~)は、米国の経済学者、コロンビア大学教授。2001年に「情報の非対称性を伴った市場の分析」によりノーベル経済学賞を受賞。クリントン政権では米国大統領経済諮問委員会委員長を務め、オバマ政権とも近く、その思想は民主党の経済政策に影響を与えてきた。
本書の原書『Rewriting the Rules of the American Economy』は、もともとルーズヴェルト研究所の報告書として、主として政策決定者向けに書かれたものであるが、その反響は大きく、ニューヨークタイムズ紙は「最上層への莫大な富の集中と、さらに強まる中間層への搾取を導いた35年の政策(レーガノミクスに始まる自由主義経済政策)を書き換えるための大胆な青写真」と評し、タイム誌は、「報告書が不平等の“秘めたる真実”を暴いた」と伝え、フォード財団は「陸標(ランドマーク)」と呼んだという。邦訳は2016年に出版された。
私は、経済学者・スティグリッツ教授の名前こそ知っていたものの、著書を読んだことはなかったのだが、先日NHKで放映された、今年のダボス会議の「ステークホルダー資本主義」についてのパネル・ディスカッションでのスティグリッツ教授の主張を聞き、ネットで調べて本書を手に取った。(思い出せば、以前からスティグリッツ教授はNHKのドキュメンタリー『欲望の資本主義』などにも出ていたのだが。。。)
そして、本書に書かれていたのは、私の期待通りの内容であった。私は、現在の世界の人間社会における最大の問題は、「格差・不平等」にあると考えている。国の間の争いも、一国の中の階層間の争いも、人種の間の争いも、更には宗教の間の争いでさえも、最も影響を及ぼしているのは「格差・不平等」である。「格差・不平等」がなければ、好き好んで他の集団と争ったり、他の集団の支配地域に移動したりすることはないはずなのだ。(あったとしても、現状よりはるかに少ないはずだ)
本書が議論の対象としている米国は、本書にもあるように、2009年から2012年までの収入増加の実に91%が、最富裕層1%の人びとの懐に収まっている、「格差・不平等」の縮図といえる国である。しかし、その米国でも、1980年代前の数十年間はもっとバランスが取れており、格差が急拡大したのは、大幅なルール変更が行われた1990年代以降のことである。そして、その結果、実体経済は健全な成長から乖離してしまったのだ。
そして、スティグリッツ教授は、金融セクターの改革、短期主義の排除、CEO報酬の抑制、最高限界税率の引上げ、公平な税制の制定、企業の海外所得への課税などにより、最上層を制御し、また、完全雇用の目標化、公共投資の復活、労働者の権利強化、最低賃金の引上げ、女性と非白人へのチャンス拡大、学資ローンの再構築、医療制度の改革、住宅金融システムの再構築などにより、中間層を成長させることにより、経済(さらには、民主主義と社会)を健全な姿に戻すことができると主張している。一方、格差の原因をテクノロジーの発達とグローバル化に求める従来の議論については、否定的である。
世界に広がる「格差・不平等」を縮小するには、世界を牽引する米国の改革が不可欠である。また、いまだ米国を模倣する日本にとって、本書の議論は他人ごとではない。米国・日本の政策決定者の真剣な取り組みを期待したい。
(2020年4月了)
本書の原書『Rewriting the Rules of the American Economy』は、もともとルーズヴェルト研究所の報告書として、主として政策決定者向けに書かれたものであるが、その反響は大きく、ニューヨークタイムズ紙は「最上層への莫大な富の集中と、さらに強まる中間層への搾取を導いた35年の政策(レーガノミクスに始まる自由主義経済政策)を書き換えるための大胆な青写真」と評し、タイム誌は、「報告書が不平等の“秘めたる真実”を暴いた」と伝え、フォード財団は「陸標(ランドマーク)」と呼んだという。邦訳は2016年に出版された。
私は、経済学者・スティグリッツ教授の名前こそ知っていたものの、著書を読んだことはなかったのだが、先日NHKで放映された、今年のダボス会議の「ステークホルダー資本主義」についてのパネル・ディスカッションでのスティグリッツ教授の主張を聞き、ネットで調べて本書を手に取った。(思い出せば、以前からスティグリッツ教授はNHKのドキュメンタリー『欲望の資本主義』などにも出ていたのだが。。。)
そして、本書に書かれていたのは、私の期待通りの内容であった。私は、現在の世界の人間社会における最大の問題は、「格差・不平等」にあると考えている。国の間の争いも、一国の中の階層間の争いも、人種の間の争いも、更には宗教の間の争いでさえも、最も影響を及ぼしているのは「格差・不平等」である。「格差・不平等」がなければ、好き好んで他の集団と争ったり、他の集団の支配地域に移動したりすることはないはずなのだ。(あったとしても、現状よりはるかに少ないはずだ)
本書が議論の対象としている米国は、本書にもあるように、2009年から2012年までの収入増加の実に91%が、最富裕層1%の人びとの懐に収まっている、「格差・不平等」の縮図といえる国である。しかし、その米国でも、1980年代前の数十年間はもっとバランスが取れており、格差が急拡大したのは、大幅なルール変更が行われた1990年代以降のことである。そして、その結果、実体経済は健全な成長から乖離してしまったのだ。
そして、スティグリッツ教授は、金融セクターの改革、短期主義の排除、CEO報酬の抑制、最高限界税率の引上げ、公平な税制の制定、企業の海外所得への課税などにより、最上層を制御し、また、完全雇用の目標化、公共投資の復活、労働者の権利強化、最低賃金の引上げ、女性と非白人へのチャンス拡大、学資ローンの再構築、医療制度の改革、住宅金融システムの再構築などにより、中間層を成長させることにより、経済(さらには、民主主義と社会)を健全な姿に戻すことができると主張している。一方、格差の原因をテクノロジーの発達とグローバル化に求める従来の議論については、否定的である。
世界に広がる「格差・不平等」を縮小するには、世界を牽引する米国の改革が不可欠である。また、いまだ米国を模倣する日本にとって、本書の議論は他人ごとではない。米国・日本の政策決定者の真剣な取り組みを期待したい。
(2020年4月了)
2016年11月17日に日本でレビュー済み
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原題は ”Rewriting the Rules of the American Economy” タイトルくらい正確に訳して欲しいものだ。
著者スティグリッツは冒頭で「アメリカ経済はもはや、ほとんどのアメリカ人のために動いていない」と言い切っている。原因は「1980年代からのサプライサイド経済学に基づく諸政策と多くのルールが成長の鈍化と前例のない不平等を生み出した」としている。昨今資本主義や民主主義の崩壊を危惧する向きもあるがスティグリッツは「政策とルールを直せば成長と繁栄の成果を皆で享受できる社会を実現できる」と説く、これだと明るい未来が期待できます。
スティグリッツはヒラリー・クリントンと指名争いしたバニー・サンダースを支持していて本書もサンダースの選挙政策として書かれたものであろう、ミクロ経済政策が主体である。サンダースはクリントンと二分する支持を得たものの結局敗北したのでこの政策は日の目を見ないのか残念である。
本年3月消費税率アップが議論されていた時スティグリッツが日本政府の「国際金融経済分析会合」に呼ばれて安倍首相ほか経済閣僚に講演したのも本書と同一の内容であり、プレゼンの参考資料に本書を挙げてある。しかしスティグリッツほどの大物が政府に進言しても全く聞き入れられる風もないのもまた残念である。
著者スティグリッツは冒頭で「アメリカ経済はもはや、ほとんどのアメリカ人のために動いていない」と言い切っている。原因は「1980年代からのサプライサイド経済学に基づく諸政策と多くのルールが成長の鈍化と前例のない不平等を生み出した」としている。昨今資本主義や民主主義の崩壊を危惧する向きもあるがスティグリッツは「政策とルールを直せば成長と繁栄の成果を皆で享受できる社会を実現できる」と説く、これだと明るい未来が期待できます。
スティグリッツはヒラリー・クリントンと指名争いしたバニー・サンダースを支持していて本書もサンダースの選挙政策として書かれたものであろう、ミクロ経済政策が主体である。サンダースはクリントンと二分する支持を得たものの結局敗北したのでこの政策は日の目を見ないのか残念である。
本年3月消費税率アップが議論されていた時スティグリッツが日本政府の「国際金融経済分析会合」に呼ばれて安倍首相ほか経済閣僚に講演したのも本書と同一の内容であり、プレゼンの参考資料に本書を挙げてある。しかしスティグリッツほどの大物が政府に進言しても全く聞き入れられる風もないのもまた残念である。
ベスト500レビュアーVINEメンバー
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本屋さんで本書の構成を見てすぐに購入しました。
章編成をみればわかることですが、まず「自由な市場」が引き起こしたことを挙げて、それが最富裕層のみに奉仕するものであると分析しする一方で賃金が上がらない理由を指摘します。さらに、対策としては最上層を抑制し、中間層を育て成長させる方法について説いています。
私の問題意識からすれば、最上層の制御に関心があるのでその部分は熟読しました。
そこでは、特権の網を引きちぎる、あらゆる金融市場をに透明性を持たせることなどを主張しています。
問題意識とその解決の方向性に大いに共感しました。
章編成をみればわかることですが、まず「自由な市場」が引き起こしたことを挙げて、それが最富裕層のみに奉仕するものであると分析しする一方で賃金が上がらない理由を指摘します。さらに、対策としては最上層を抑制し、中間層を育て成長させる方法について説いています。
私の問題意識からすれば、最上層の制御に関心があるのでその部分は熟読しました。
そこでは、特権の網を引きちぎる、あらゆる金融市場をに透明性を持たせることなどを主張しています。
問題意識とその解決の方向性に大いに共感しました。
2016年4月7日に日本でレビュー済み
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ルーズヴェルト研究所主任エコノミスト、ジョセフ・E・スティグリッツによる著書。
ルーズヴェルト研究所というのが何とも感慨深いものがあります。
フランクリン・D・ルーズヴェルト、ニューディール政策でおなじみの大統領です。
1930年代、ポピュリズムの申し子ヒューイ・ロングと争った人でもあります。
折しもサンダースやトランプといったポピュリストが台頭する時期にこの肩書きの著者が政策提言をする。
何とも興味深い。
内容としては拡大するアメリカの所得格差を緩和し、中流層を厚くし、経済を活性化させようとするものです。
貧困層を救済し中間層に近づけることが経済発展にもつながるという点が要になっています。
また、アメリカの上位層への優遇は、従来トリクルダウン理論で正当化されていたが、そんな効果はなかったことを指摘しています。
また金融セクターが自己規制できていないことを指摘し、政府による適切な規制が必要であることが示されています。
経済は何もない空間に存在するのではなく、様々な思惑を持った人々が織りなす社会に存在している。
そこではルールの存在、あるいは不在が何らかの形で経済に影響をもたらす。
なので適切なルールが不可欠で、それによってバランスのとれた健全で持続的な経済が可能となる、といったことを感じました。
またルーズヴェルトの時代を超えて女性、人種に対する差別的扱いにも取り組むところに現代性も感じました。
翻訳のせいか少し読みにくくはありますが、クールな頭と暖かい心をもった経済学者らしい、素晴らしい内容でした。
ルーズヴェルト研究所というのが何とも感慨深いものがあります。
フランクリン・D・ルーズヴェルト、ニューディール政策でおなじみの大統領です。
1930年代、ポピュリズムの申し子ヒューイ・ロングと争った人でもあります。
折しもサンダースやトランプといったポピュリストが台頭する時期にこの肩書きの著者が政策提言をする。
何とも興味深い。
内容としては拡大するアメリカの所得格差を緩和し、中流層を厚くし、経済を活性化させようとするものです。
貧困層を救済し中間層に近づけることが経済発展にもつながるという点が要になっています。
また、アメリカの上位層への優遇は、従来トリクルダウン理論で正当化されていたが、そんな効果はなかったことを指摘しています。
また金融セクターが自己規制できていないことを指摘し、政府による適切な規制が必要であることが示されています。
経済は何もない空間に存在するのではなく、様々な思惑を持った人々が織りなす社会に存在している。
そこではルールの存在、あるいは不在が何らかの形で経済に影響をもたらす。
なので適切なルールが不可欠で、それによってバランスのとれた健全で持続的な経済が可能となる、といったことを感じました。
またルーズヴェルトの時代を超えて女性、人種に対する差別的扱いにも取り組むところに現代性も感じました。
翻訳のせいか少し読みにくくはありますが、クールな頭と暖かい心をもった経済学者らしい、素晴らしい内容でした。