舞台はバブル崩壊後の1993年~1995年の大阪である。主人公は甲坂礼司という24歳の男で、あいりん地区のドヤ街で日雇いの仕事をしながら生活している。そこへ二谷結子という女が絡んでくる。甲坂礼司 が、その女の亭主に頼まれて、その女の自伝のような小説を書くことになる。
・・・ コメディではないものの現実味のある話ではなく、しかも全体にスラプスティックな雰囲気なのである。非常にバカバカしいストーリーとしか言いようがないのだが、「風に舞いあがるビニールシート」のこと思えば、何か意図するものがあるのはないかと、深読みをするような気分で読んでしまう。しかし・・・
要素の一つに あいりん地区をカジノ街にするという計画が出て来る。1995年の1月にプレス発表が行われるということになる。それが18日なのだ。主人公周辺の人間は計画に反対で、1月17日に行動を起こすという。こういう日付が出て来ると、読者が阪神・淡路大震災との絡みを考えるのは余りに当然だろう。ところが・・・
主人公の甲坂礼司 は軽度のディスレクシア(識字障碍)なのだが、ワープロを使って小説を書く。障碍が軽度だから小説が書けるというのはまだいいとして、ディスレクシアのせいで主人公がドヤ街にまで堕ちて来たのに、その障碍やプロセスの描き方が余りにいい加減だ。
何がテーマなのか、何が言いたいのか解らず読んでいたのだが、直木賞作家がこんな浅いものを書くとも思えず、巻末の解説に深い意味が書いてあるだろうと期待していたが・・・ 解説がなかった・・・
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