「仮設住宅を一軒一軒訪問し、住人の話を聴く」。
文字にすればたったこれだけの支援活動が、どれほど困難なことか想像に難くない。
本書は2011年より岩手県・宮城県で始められた「仮設住宅居宅訪問活動」5年間の歩みを記録したものだ。
筆者と現地団体の活動は今なお続いている。
「死にたいほどの苦悩を少しでも和らげること」「チームで継続して関わること」。
目的を明確にしたこの活動は「相手の気持ちを聞いて、受け取る」という目に見えない、しかし意義ある支援を信念を持って継続してきた。
前例のないこの活動は模索の連続であったに違いないし、支援者個々人の戸惑いや失敗、大きな落胆もあったと思う。
どうして筆者は、そのドアをノックし続けることができたのか。
底知れない強さとモチベーションはどこから来るのか。
その秘密が知りたくて本書を手に取った。
しかし本書には、ボランティアの苦労話はほとんど登場しない。
主眼は一貫して話し手に置かれている。
読者の目に映るのは、その場におだやかに寄り添う筆者の姿だ。
僧侶でも研究者でもなく、ひとりの人間として丁寧にそこに在ろうとする筆者は、一人ひとりと向き合い、隠された言葉と、その言葉の向こう側にあるものへ静かな眼差しを向ける。
透明感のある姿勢は筆者自身の思いがそっと添えられる、本書の文章スタイルからもうかがえる。
語られるエピソードはどれも重く悲しいものであるのに、読み終えた後に不思議と穏やかさが胸に残るのは、きっとそれが筆者によってあたたかく受け取られた言葉、つまり「ひとりぼっちにされなかった言葉」であるからだろう。
筆者の背景にある「ひとりぼっち」「孤独さ」支援に対する動機を、ますます知りたくなった。
Kindle 端末は必要ありません。無料 Kindle アプリのいずれかをダウンロードすると、スマートフォン、タブレットPCで Kindle 本をお読みいただけます。
無料アプリを入手するには、Eメールアドレスを入力してください。
