坂口恭平『けものになること』は、夢の世界の探究であった『現実宿り』の姉妹作のような小説です。
ちがいはどこにあるかというと、まずドゥルーズの『千のプラトー』10章をドゥルーズとなって書くという哲学的なフレーム、設定の縛りがあることで、ドゥルーズ=ガタリ的な用語や、言い回しを多用しながら、コピーライティングを行うわけです。しかし、わたし、われわれが変身してゆくプロセスの記述は、『現実宿り』同様の坂口恭平そのものの文章です。それらによってとらえようとするのは、現実とは異なる知覚による生成変化の世界です。自由にふるまえばふるまうほどに、フロイト的な家族の三角形ではなく、ガタリ的な分子的無意識の世界へと入ってゆくので、単に名前を借りるだけでなく、生産される言語もまたドゥルーズ=ガタリを裏切ることはないでしょう。
第二の違いは、オリジナルな夢と想像の世界であった『現実宿り』とは異なり、他の作品の力を次から次へと援用することです。ドゥルーズと坂口恭平がともに好むカフカや、プルースト、アルトーやケルアック、バロウズといった作家の読解、批評と、そこからの飛躍的創造が多くの部分を占めています。もちろん、ドゥルーズが知らないような南方熊楠、宮武外骨、宮沢賢治といった固有名詞も援用され、混然一体となって『けものになること』のテキストを形作ってゆくのです。『けものになること』は、リゾーム的に、他の作家たちの作品や伝記への言及、批評、創作という接ぎ木によってつくられていることが大きな特徴です。
第三の違いは、この本の読み方自体がすでに本の中で示されていることです。一種の読む麻薬としての書物がそれです。道に迷いそうになった時には、それらが地図として役立ちます。つい連想しがちなシュルレアリスムの自動筆記に対しても否定的な態度を語り手はとっています。
『けものになること』は、きわめてリズミカルで、明確な意図を持って練り上げられた批評的散文詩のようなもので、スムーズに読み進めることができます。めくるめくようなイメージの連続は、むしろ絵画的であり、論理で理解しきることが困難な、常識外れの世界ですが、ファンタジーの世界と考えて、『鳥獣戯画』的にビジュアルに、あるいは音楽的に楽しむのが正解です。
けものになること
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けものになること 単行本 – 2017/2/25
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ドゥルーズになった「おれ」は『千のプラトー』第10章を書き始めた。狂気と錯乱が渦巻きながら23世紀の哲学をうみだす空前の実験。『現実宿り』を更新する異才の大傑作。
----- 「おれはドゥルーズだ」
ドゥルーズ&ガタリ『千のプラトー』の第10章を
ドゥルーズに憑依した坂口恭平が書き換える、
暴挙、あるいは冒涜
それはまだ誰も見たことがなかった。名付けられなかった。
まぎれもなく「哲学」であり、これぞ「文学」
この言葉の激流は何だ?音楽?ダンス?それも空き缶の中で。あらゆる文献?部屋の中には虎までいた! 稲妻?切り落とした自分の中指?焼きもせずそれを食べた。白と黒の中の極彩色?ガタリの持っていた小さな杖?病原菌そのもの。いや、これは小説だ。信じがたいことにここには言葉しか使われていない! 言葉がすべてをやっている。これは小説の奇跡だ。
――保坂和志
スーと入ってきて自然が育ったと思ったらやかましくなって、大きくなりすぎてしまって「ウゥゥー!!!!」ポロリって感じの本でした。P
――PUNPEE(DJ、ラッパー、トラックメイカー)
おれはドゥルーズだ、で始まる『けものになること』。前作『現実宿り』に引き続いて俺はベケットを感じる。そこにアルトーまでおりてきたような。これらの死者を受け止める力は凄まじい。つまりニーチェへの道。
――いとうせいこう(2017/2/17twitterより)
ドゥルーズなど読んだことがなくても大丈夫、いやドゥルーズへの予備知識は余計かもしれません。霊感に満ちたイメージの爆発的な噴出とともに語られるのはまぎれもなく「哲学」であり、同時にまだ誰も見たことのない文学です。ドゥルーズの予備知識はいらないという前言と矛盾するかもしれませんが、ここにはドゥルーズ=ガタリの全てと未來があります。だからこの小説を読んで誰よりもよろこんだのがドゥルーズであり、ガタリであることは間違いありません。そのドゥルーズとガタリもこの小説の登場人物でもあるのですが、どこで出てくるかは読んでのお楽しみ。
――河出書房新社 ドゥルーズ著作 担当編集
【著者プロフィール】
1978年、熊本県生まれ。作家、建築家、音楽家、画家。2001年、早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年、路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』を刊行。2008年、それを元にした『TOKYO 0円ハウス 0円生活』で文筆家デビュー。2011年、東日本大震災がきっかけとなり「新政府内閣総理大臣」に就任。その体験を元にした『独立国家のつくりかた』を刊行し、大きな話題を呼ぶ。2014年『徘徊タクシー』で三島由紀夫賞候補、『幻年時代』で第35回熊日出版文化賞、2016年『家族の哲学』で第57回熊日文学賞を受賞。著書に『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』『現実宿り』など。
----- 「おれはドゥルーズだ」
ドゥルーズ&ガタリ『千のプラトー』の第10章を
ドゥルーズに憑依した坂口恭平が書き換える、
暴挙、あるいは冒涜
それはまだ誰も見たことがなかった。名付けられなかった。
まぎれもなく「哲学」であり、これぞ「文学」
この言葉の激流は何だ?音楽?ダンス?それも空き缶の中で。あらゆる文献?部屋の中には虎までいた! 稲妻?切り落とした自分の中指?焼きもせずそれを食べた。白と黒の中の極彩色?ガタリの持っていた小さな杖?病原菌そのもの。いや、これは小説だ。信じがたいことにここには言葉しか使われていない! 言葉がすべてをやっている。これは小説の奇跡だ。
――保坂和志
スーと入ってきて自然が育ったと思ったらやかましくなって、大きくなりすぎてしまって「ウゥゥー!!!!」ポロリって感じの本でした。P
――PUNPEE(DJ、ラッパー、トラックメイカー)
おれはドゥルーズだ、で始まる『けものになること』。前作『現実宿り』に引き続いて俺はベケットを感じる。そこにアルトーまでおりてきたような。これらの死者を受け止める力は凄まじい。つまりニーチェへの道。
――いとうせいこう(2017/2/17twitterより)
ドゥルーズなど読んだことがなくても大丈夫、いやドゥルーズへの予備知識は余計かもしれません。霊感に満ちたイメージの爆発的な噴出とともに語られるのはまぎれもなく「哲学」であり、同時にまだ誰も見たことのない文学です。ドゥルーズの予備知識はいらないという前言と矛盾するかもしれませんが、ここにはドゥルーズ=ガタリの全てと未來があります。だからこの小説を読んで誰よりもよろこんだのがドゥルーズであり、ガタリであることは間違いありません。そのドゥルーズとガタリもこの小説の登場人物でもあるのですが、どこで出てくるかは読んでのお楽しみ。
――河出書房新社 ドゥルーズ著作 担当編集
【著者プロフィール】
1978年、熊本県生まれ。作家、建築家、音楽家、画家。2001年、早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年、路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』を刊行。2008年、それを元にした『TOKYO 0円ハウス 0円生活』で文筆家デビュー。2011年、東日本大震災がきっかけとなり「新政府内閣総理大臣」に就任。その体験を元にした『独立国家のつくりかた』を刊行し、大きな話題を呼ぶ。2014年『徘徊タクシー』で三島由紀夫賞候補、『幻年時代』で第35回熊日出版文化賞、2016年『家族の哲学』で第57回熊日文学賞を受賞。著書に『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』『現実宿り』など。
- 本の長さ224ページ
- 言語日本語
- 出版社河出書房新社
- 発売日2017/2/25
- 寸法13.5 x 2.2 x 19.5 cm
- ISBN-104309025471
- ISBN-13978-4309025476
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
死にたいと思う。死にたいと願う。おれはドゥルーズだ。病と命を絶対肯定する純粋劇薬小説。
著者について
1978年、熊本県生まれ。建築家/作家。著書に『TOKYO 0円ハウス 0円生活』『独立国家のつくりかた』『徘徊タクシー』『幻年時代』など。16年『家族の哲学』で熊日文学賞を受賞。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
坂口/恭平
1978年、熊本県生まれ。作家、建築家、音楽家、画家。2001年、早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年、路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』を刊行。2008年、それを元にした『TOKYO 0円ハウス 0円生活』で文筆家デビュー。2011年、東日本大震災がきっかけとなり「新政府内閣総理大臣」に就任。2014年『幻年時代』で第35回熊日出版文化賞、2016年『家族の哲学』で第57回熊日文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
1978年、熊本県生まれ。作家、建築家、音楽家、画家。2001年、早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年、路上生活者の住居を収めた写真集『0円ハウス』を刊行。2008年、それを元にした『TOKYO 0円ハウス 0円生活』で文筆家デビュー。2011年、東日本大震災がきっかけとなり「新政府内閣総理大臣」に就任。2014年『幻年時代』で第35回熊日出版文化賞、2016年『家族の哲学』で第57回熊日文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 河出書房新社 (2017/2/25)
- 発売日 : 2017/2/25
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 224ページ
- ISBN-10 : 4309025471
- ISBN-13 : 978-4309025476
- 寸法 : 13.5 x 2.2 x 19.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 100,810位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- - 3,410位日本文学
- カスタマーレビュー:
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