『知的生産』がタイトルに付く書籍としては,かなり異色かつ斬新な雑誌です.
内容はと言うと,『脱』と付いていますが否定ではなく,『知的生産の技術』を俯瞰してエッセンスを考察する所から始まり,方法論,エピソード,道具,今すぐ使える便利なtips,随筆等の話が散りばめられています.
一見まとまりがなくて雑多な印象を受けるかもしれませんが,執筆陣の専門分野の広さや層の厚さがうまく作用しており,テーマを中心としてバランスが崩れない程度に話題が発散しています.話題の多様性を持たせることで,内容の予定調和的な金太郎飴化が防がれています.カテゴリ的には,どちらかと言うと読み物に近いかな.
たとえば喫茶店で知人との打ち合わせ中にメニューにないウインナコーヒーを頼んだところ,マスターの洒落っ気で こんがり焼かれたウインナーと珈琲が出てくるくだりがあって笑っていたら,その後『FDI』という実に素晴らしい方法論がズバッと出てくる.このテンポの良さとギャップは読んでいてとても愉快.読み物として軽い気持ちで読めるけど,実に深いし身にもなる.
知的生産の技術業界(?)から少し離れたところから見ていると,『知的生産の…』というと,難しい顔をして高尚な議論を戦わせる一見さんお断りの会員制サロンに見えて近づき難い雰囲気のイメージを持っていたのですが,この雑誌は違います.むしろ普通の,『知的生産?なにそれ』的な人でも楽しめるし,ごくありふれた身近な所で活用すると役立つ話が充実した/して行く雑誌かなと思います.その一方で,『知的生産の技術』に対し,雑誌のタイトルでもある『カーソル=今』を知り,近い未来を見通したい人に対しても,欲しい情報が手に入る雑誌と言えるでしょう.
次号以降にも期待しています.
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