刻一刻と展開される生の在り様に対して,スケールの大きな論考が展開される。
そして、現実とは固定される事象ではなく、文化や歴史の文脈に沿った既定性がある一方、相当に流動性があることも提示する。
文体は確かに平易であるが、内容はそれほど易しくないというのが率直な感想である。
おそらく、正確に著者の意図を理解するには、深い考察とそれに貫かれた地道な実践を経る必要があるだろう。
レビューを読むと、概ね易しく説かれているとの評価だが、何をどう理解したのかの論及に乏しく、本当にわかっているかどうかは眉唾だ。
本書を読んで雲をつかむような気持になったとしても、初学者が気にすることはないと思う。
動かしがたい現実を世に提示するのは、第一に言説であるが、その言説自体に定められたルールがあり、歴史的、文化的な制約がある。
結局、言葉で共有される現実とは、かなりバイアスがかかったものであり、ありのままの現実を捉えるには力量不足かもしれない。
例えば「この時代」に「日本人」の「男性」として「私」が見舞われる数々の悩みも、言ってみれば社会的に構成された一つの受け止め方でしかない。
「苦悩している」という言説自体が、限定的な要素に支えられているわけだ。
とすれば、どこかに可変的な要素を突き止めることができるはずで、固定的な意味や解釈からの解放へと導くことを可能にするかもしれない。
また、現実を確実に変容させる力として機能しうるはずである。
内容的には非常に重厚な論考になっているので、それこそ著者との対話を望むのであれば、精読と思索の繰り返しは不可欠であると思われる。
あなたへの社会構成主義 (日本語) 単行本 – 2004/11/10
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本の長さ378ページ
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言語日本語
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出版社ナカニシヤ出版
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発売日2004/11/10
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寸法21 x 14.8 x 2.5 cm
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ISBN-104888489157
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ISBN-13978-4888489157
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
心とは?自己とは?事実とは?より豊かな未来につながる“対話”のために、ガーゲンが今、世界の「常識」を問い直す。新たな“対話”の可能性を拓く実践的・社会構成主義入門。
著者について
●著者 ケネス・J. ガーゲン
1957年イエール大学心理学部を卒業、1962年デューク大学心理学部で博士号を取得。
ハーバード大学助教授を経て、1967年よりペンシルバニア州スワースモア大学心理学部の助教授、1971年より同教授。
かつて、生粋の実験社会心理学者として、「社会的交換」や「自己」の研究に携わっていたが、
次第に実験研究に批判的な立場へ移行し、社会構成主義の第一人者として数多くの著作を発表。
近年は、批判よりも社会構成主義にもとづく実践を重視し、妻のメアリー・ガーゲンと共に、
幅広い活動に意欲的に取り組んでいる。 ●翻訳
1957年イエール大学心理学部を卒業、1962年デューク大学心理学部で博士号を取得。
ハーバード大学助教授を経て、1967年よりペンシルバニア州スワースモア大学心理学部の助教授、1971年より同教授。
かつて、生粋の実験社会心理学者として、「社会的交換」や「自己」の研究に携わっていたが、
次第に実験研究に批判的な立場へ移行し、社会構成主義の第一人者として数多くの著作を発表。
近年は、批判よりも社会構成主義にもとづく実践を重視し、妻のメアリー・ガーゲンと共に、
幅広い活動に意欲的に取り組んでいる。 ●翻訳
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
東村/知子
2000年京都大学総合人間学部卒。2002年京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程を経て現在、同大学院人間・環境学研究科博士後期課程にて研鑽中。専攻は社会心理学、グループ・ダイナミックス(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
2000年京都大学総合人間学部卒。2002年京都大学大学院人間・環境学研究科修士課程を経て現在、同大学院人間・環境学研究科博士後期課程にて研鑽中。専攻は社会心理学、グループ・ダイナミックス(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
出版社より

ケネス・J・ガーゲン(Kenneth J. Gergen)
1957年イェール大学心理学部を卒業、1962年デューク大学心理学部で博士号を取得。ハーバード大学助教授を経て、1967年よりペンシルバニア州スワースモア大学心理学部の助教授、1971年より同教授。2006年に退職。現在、同大学名誉教授。
社会構成主義の第一人者として数多くの著作を発表。多くの研究者や実践家と対話を重ね、社会構成主義の理論と実践を結集して社会に変化をもたらすために活動を続けている。
邦訳に、『関係からはじまる』『あなたへの社会構成主義』『社会構成主義の理論と実践』『もう一つの社会心理学』(以上、ナカニシヤ出版)、『現実はいつも対話から生まれる』『ダイアローグ・マネジメント』(以上、Discover21)、他。
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関係からはじまる―社会構成主義がひらく人間観 | あなたへの社会構成主義 | 社会構成主義の理論と実践 | |
「社会構成主義の第一人者」ガーゲンが、独自の関係論から世界を徹底的に記述しなおし、切り開くあらたな知の地平! | やさしい文章で、ガーゲンとの対話の世界へといざなう。 「常識」をくつがえす社会構成主義への格好の入門書。ガーゲンの思想に初めてふれる、入門に最適! | 社会構成主義アプローチについての大著を、満を持して邦訳。 理論と実践を学術的に解説したハードな内容にもかかわらず、読者からの反響多数。 | |
ケネス・J・ガーゲン著/鮫島輝美・東村知子 訳 | ケネス・J・ガーゲン 著/東村知子 訳 | ケネス・J・ガーゲン 著/永田素彦・深尾 誠 訳 | |
発行年月 | 2020年9月 | 2004年11月 | 2004年5月 |
体裁 | A5判 上製 512頁 | A5判 上製 378頁 | A5判 上製 462頁 |
原タイトル | Relational Being: Beyond Self and Community | An Invitation to Social Construction | Realities and Relationships: Soundings in Social Construction |
登録情報
- 出版社 : ナカニシヤ出版 (2004/11/10)
- 発売日 : 2004/11/10
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 378ページ
- ISBN-10 : 4888489157
- ISBN-13 : 978-4888489157
- 寸法 : 21 x 14.8 x 2.5 cm
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2019年12月15日に日本でレビュー済み
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2004年11月初版
「社会」という言葉がもたらす語彙の誤差は幅があり過ぎるのか?と思わされるほど。
社会教育学、教育社会学、社会構成主義、社会学、社会科などなど、「社会」という記号に振り回されているのかもしれない。
この本をよみ終えたとき、新たな風が吹く!?
「社会」という言葉がもたらす語彙の誤差は幅があり過ぎるのか?と思わされるほど。
社会教育学、教育社会学、社会構成主義、社会学、社会科などなど、「社会」という記号に振り回されているのかもしれない。
この本をよみ終えたとき、新たな風が吹く!?
2011年12月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「対話」の力とは何か。
「社会構成主義」についてWilipediaから引用すると、
(1)人間の組織の構造は物質的な力ではなくむしろ共有された理念によって主に決定される
(2)合目的な主体のアイデンティティと利益は、自然によって与えられるのではなくむしろこれら共有された理念によって構築される。
という理論(基本主張)と提示されている。
優しい表現に変えるなら、帯にある「<関係性>=<対話>」という図式で表現される通り。
対話により関係性が深まり、自己が確立する。関係性の中に自己がある。
そのための対話。
しかし、「対話」とは何か?
「関係性」とは何か?「心」とは何か?「事実」とは何か?
一つ一つのコンテンツの「常識」を問い直すことで、本当の「対話」が見えてくる。
人材育成や教育関係者に読み継がれてきた本なのですが、
近年は大学生ですら、読み込む力が不足しており、
この社会構成主義の入門書である名著が読めないという話しを聞く。
訳本ではあるが、平易な言葉で書かれているし、丁寧に訳されて筆を進めている。
ゆっくりと考えながら読み進めて欲しい。
速読するような本でもないし、決して読めない本でもない。
人材育成や教育に関わっている者、組織やグループの運営や、
ワールドカフェなどのファシリテーターならば必読書である。
高い本だが、一生の宝となります。
「社会構成主義」についてWilipediaから引用すると、
(1)人間の組織の構造は物質的な力ではなくむしろ共有された理念によって主に決定される
(2)合目的な主体のアイデンティティと利益は、自然によって与えられるのではなくむしろこれら共有された理念によって構築される。
という理論(基本主張)と提示されている。
優しい表現に変えるなら、帯にある「<関係性>=<対話>」という図式で表現される通り。
対話により関係性が深まり、自己が確立する。関係性の中に自己がある。
そのための対話。
しかし、「対話」とは何か?
「関係性」とは何か?「心」とは何か?「事実」とは何か?
一つ一つのコンテンツの「常識」を問い直すことで、本当の「対話」が見えてくる。
人材育成や教育関係者に読み継がれてきた本なのですが、
近年は大学生ですら、読み込む力が不足しており、
この社会構成主義の入門書である名著が読めないという話しを聞く。
訳本ではあるが、平易な言葉で書かれているし、丁寧に訳されて筆を進めている。
ゆっくりと考えながら読み進めて欲しい。
速読するような本でもないし、決して読めない本でもない。
人材育成や教育に関わっている者、組織やグループの運営や、
ワールドカフェなどのファシリテーターならば必読書である。
高い本だが、一生の宝となります。
2013年5月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
この本はガーゲンら構成主義の主張を簡単にまとめた初心者用の本であるといえる。ガーゲンの他の著書は非常に難解であるが、この本は大学生ならば読解できるのではないだろうか。これまでの主観的世界と客観的世界とを区分する二元論はある意味では、自らが自分で行動しているという根拠でもあろう。その根底が揺らいでいる今、私たちは多くの伝統的な観念を再検討し、新たな知的な理解を築いていかねばならないだろう。賛否はあるし、この本自体がすでに伝統的な観念に支配されているという矛盾はあるものの、一定の示唆を与えてくれるという点で読むべき本として提案したい。
2005年3月2日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
社会構成主義って何?という疑問をもつマジメな読者にはきちんと答えてくれるおすすめ本です。社会構成主義が好きか嫌いかわからんという方はまず第7章を読んで、興味を持ったら初めから読まれたらよいでしょう。これはダメとか、イヤだとか思われたらマーケットプレイスにすかさず出品するというのがGOODです(笑)。
一応は社会構成主義を知っている人にとっては格好のリファレンスブックになると思います。厚さに驚くことはありません。社会構成主義「業界」人なら数時間で読了できます。
一応は社会構成主義を知っている人にとっては格好のリファレンスブックになると思います。厚さに驚くことはありません。社会構成主義「業界」人なら数時間で読了できます。
2010年5月8日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
広範かつ深い内容を取り扱いながら、
丁寧な語り口で平易に読み手に伝えてくれ、
しかも読んでいるうちにとても癒されます。
ガーゲンという人は非常に力のある研究者なのだと感じます。
この本を読むと、
自分が一個の独立した存在ではなく、
他者との係わりによって初めて意味を持ち、
他者との係わり方によって意味が変わっていくということがとてもよく分かります。
この考え方を活かせば、
「あいつは失敗ばかりしてダメな奴だ」
と捉えるのではなく、
「あいつに失敗させる原因はなんだろう」
と、他者との温かい関係を築くことが可能になります。
そして、人・人たちは、他者との交わりによっていつでもいくらでも良くなっていけるんだ、
そんな希望を感じることができます。
自分自身の在り方、組織の在り方、経営戦略の在り方etc...
様々なものの見方、在り方、そして生き方の変わる一冊です。
丁寧な語り口で平易に読み手に伝えてくれ、
しかも読んでいるうちにとても癒されます。
ガーゲンという人は非常に力のある研究者なのだと感じます。
この本を読むと、
自分が一個の独立した存在ではなく、
他者との係わりによって初めて意味を持ち、
他者との係わり方によって意味が変わっていくということがとてもよく分かります。
この考え方を活かせば、
「あいつは失敗ばかりしてダメな奴だ」
と捉えるのではなく、
「あいつに失敗させる原因はなんだろう」
と、他者との温かい関係を築くことが可能になります。
そして、人・人たちは、他者との交わりによっていつでもいくらでも良くなっていけるんだ、
そんな希望を感じることができます。
自分自身の在り方、組織の在り方、経営戦略の在り方etc...
様々なものの見方、在り方、そして生き方の変わる一冊です。