何篇かの短編で編まれているが、まだ表題作しか読んでいない。
「あの映画の原作」としての興味だけで読んだ。
結果、多少、いや相当に甘く考えていた、と言わねばなるまい。
わたしにとって、自らの世界観を激しく揺さぶられる傑作SFだった。個人的には、文明邂逅物として、あの古典的名作「ソラリス」を超える読書体験だった。
揺さぶられるのは「それら(来訪者)」の世界観を主人公が受け入れていく過程を、読み進むうちに体感させられるからだ(理系の知識がなくてもOK)。
「それら」は、時間という概念を超えた文明だから、次第に四次元世界にいるような新たな感覚に飲み込まれていく。それだけの迫真の説得力がある。
だから「こんな文明が有ったら面白い」では終われない。
読み始めは章立てされていないのがかなり苦痛だったが、その意図にも気付かされるし、唐突に挟みこまれるフラッシュバック的描写にも確かな計算がある。
物語の最後部の美しい文章を引く。
「わたしの意識は、時の外側で燃える半世紀の長さの燠となる。そして、ありとあらゆるできごとをーーそのひらめきを得ているあいだはーー同時に知覚する。」
この文章が少しでも心に引っかかった方は、ぜひご一読を。
最後にこのSFが、ロマンスあふれる恋愛小説、そして育児アルアルとしても語られているのは驚きである。
追記ー令和と改まって「バビロンの塔」を読む。
この小編は、著者が聖書の有名なバベルの塔が、「(当時の世界観そのままで)完成したら」という
ひとつのアイディアから膨らませたのだと思う。
はじめの具象的で静謐な描写は、まるで細密なリトグラフのようで、荘厳ながらも親しみやすい絵本のよう。
そしてしだいに、生活感のあるカラフルな油彩へと変わる。
それが終盤は、唐突に躍動感あふれるスペクタクル映画となるのだ。
個人的にはそこで終わって欲しかったのだが、いかにもSFな説明でまとめてしまうのが残念。
勿論、心理描写も冴えているが、終始、ビジュアル・イメージの豊かな作品だった。
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あなたの人生の物語 Kindle版
【映画「メッセージ」原作】地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく……ネビュラ賞を受賞した感動の表題作をはじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語--ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。
- 言語日本語
- 出版社早川書房
- 発売日2012/8/25
- ファイルサイズ1836 KB
商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
地球を訪れたエイリアンとのコンタクトを担当した言語学者ルイーズは、まったく異なる言語を理解するにつれ、驚くべき運命にまきこまれていく…ネビュラ賞を受賞した感動の表題作はじめ、天使の降臨とともにもたらされる災厄と奇跡を描くヒューゴー賞受賞作「地獄とは神の不在なり」、天まで届く塔を建設する驚天動地の物語―ネビュラ賞を受賞したデビュー作「バビロンの塔」ほか、本邦初訳を含む八篇を収録する傑作集。 --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
チャン,テッド
1967年、ニューヨーク州ポート・ジェファーソン生まれ。ブラウン大学でコンピュータ・サイエンスを専攻し、1989年に卒業。現在はワシントン州シアトル近郊で、フリーランスのテクニカル・ライターをつとめながら創作活動を続けている。大学卒業の年に、有名なSF創作講座クラリオン・ワークショップに参加し、翌年に発表したデビュー作「バビロンの塔」がネビュラ賞を受賞した。以後、発表する作品はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞などを受賞、英米ではもちろんのこと、日本でも高い評価を受けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
1967年、ニューヨーク州ポート・ジェファーソン生まれ。ブラウン大学でコンピュータ・サイエンスを専攻し、1989年に卒業。現在はワシントン州シアトル近郊で、フリーランスのテクニカル・ライターをつとめながら創作活動を続けている。大学卒業の年に、有名なSF創作講座クラリオン・ワークショップに参加し、翌年に発表したデビュー作「バビロンの塔」がネビュラ賞を受賞した。以後、発表する作品はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞などを受賞、英米ではもちろんのこと、日本でも高い評価を受けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
著者について
1967年、ニューヨーク州ポート・ジェファーソン生まれ。ブラウン大学でコンピュータ・サイエンスを専攻し、1989年に卒業。現在はワシントン州シアトル近郊で、フリーランスのテクニカル・ライターをつとめながら創作活動を続けている。大学卒業の年に、有名なSF創作講座クラリオン・ワークショップに参加し、翌年に発表したデビュー作「バビロンの塔」がネビュラ賞を受賞した。以後、発表する作品はヒューゴー賞、ネビュラ賞、ローカス賞などを受賞、英米ではもちろんのこと、日本でも高い評価を受けている。
本書の表題作「あなたの人生の物語」は、「メッセージ」のタイトルで映画化された。 --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
本書の表題作「あなたの人生の物語」は、「メッセージ」のタイトルで映画化された。 --このテキストは、paperback_bunko版に関連付けられています。
登録情報
- ASIN : B00O2O7JEA
- 出版社 : 早川書房 (2012/8/25)
- 発売日 : 2012/8/25
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 1836 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 422ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 6,592位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- カスタマーレビュー:
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8のSF作品収録。小説として純粋に巧みに書かれており、宗教的・既得観念的なモチーフの作品でも、情感が響きやすい作品となっているけれど、読みやすいかと言われると、人を選ぶかなというのが正直な感想。SF好きな人にとっては堪らない世界観なのかもしれないけれど。
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上位レビュー、対象国: 日本
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2019年3月25日に日本でレビュー済み
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56人のお客様がこれが役に立ったと考えています
役に立った
2020年3月10日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
映画がおもしろかったので、原作を読んでみました。
SFは古典から最近のものまで大好きなジャンルなのですが、
これは・・びっくりするほどおもしろくないですね!!
短編集なのですが、その作品も一体どこがポイントなのかさっぱり理解できませんでした。
アイディアは秀逸で素晴らしいと思いましたが・・
他のレビュワーの方がおっしゃってるように、もしや翻訳がズレてるせいなんじゃないでしょうか・・?
美味しい素材から出した出汁の出がらしを飲まされているような、スーパードライ感がたまらなく苦痛でした。
SFは古典から最近のものまで大好きなジャンルなのですが、
これは・・びっくりするほどおもしろくないですね!!
短編集なのですが、その作品も一体どこがポイントなのかさっぱり理解できませんでした。
アイディアは秀逸で素晴らしいと思いましたが・・
他のレビュワーの方がおっしゃってるように、もしや翻訳がズレてるせいなんじゃないでしょうか・・?
美味しい素材から出した出汁の出がらしを飲まされているような、スーパードライ感がたまらなく苦痛でした。
2019年1月11日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
再読中なので、軽く。
一度では掴みきれす、ボリューム感のあるSF小説という印象です。他の方の言うように、読み手を選ぶ本なのでしょう、何作品かは、未だに全然わかりませんが…
このレベルの読み応えの本に、あと何度出会うことがあるか、という感想を持ちました。
ネットや辞書で語彙を調べながら、二周目に入りましたが、苦にならず読めているので、この評価にしています。
きっと数年後に、誰かが解釈し直した本が、販売されそうな気がしています。
その前に、この本の読み応えを感じられて良かったなぁ、と思います。
何度か読み返したい短編?集です。
一度では掴みきれす、ボリューム感のあるSF小説という印象です。他の方の言うように、読み手を選ぶ本なのでしょう、何作品かは、未だに全然わかりませんが…
このレベルの読み応えの本に、あと何度出会うことがあるか、という感想を持ちました。
ネットや辞書で語彙を調べながら、二周目に入りましたが、苦にならず読めているので、この評価にしています。
きっと数年後に、誰かが解釈し直した本が、販売されそうな気がしています。
その前に、この本の読み応えを感じられて良かったなぁ、と思います。
何度か読み返したい短編?集です。
2017年10月13日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
複数の物語が描かれるこの作品ですが,どの物語も私が想像したことも無い世界が描かれており,
読後はひたすら感心するばかりでした.
ひとつ気になることを挙げるならば,登場人物の感情を読み取りにくく,
ロボットのように感じるところです.
読後はひたすら感心するばかりでした.
ひとつ気になることを挙げるならば,登場人物の感情を読み取りにくく,
ロボットのように感じるところです.