高校生の娘を捜す私立探偵、小説家を見つめる妻の視線、年上の女性に抱く淡い恋心、友をおもう少年の友情…。誰にでも、いちばんだいじな人がいる。『夜の果てまで』で注目の著者初の短篇集。幻のデビュー作「糠星」を含む6篇収録。
抜粋
エレベーターのドアが開いた。数人の客に混じって、ふたりが乗りこ
んでいく。女の子が正面に向きなおり、そのとき一瞬、目が合ったよう
な気がした。声をかけて人違いだったら、貝沢を二度と尾行できなくな
る。でも、もしほんとうに自分の娘だったら……。
十三歳からの三年間は想像していた以上に大きいかもしれない。十六
歳になった娘の顔を見分けられる自身が急になくなった。
(「あなたのことが、いちばんだいじ」より)
著者について
盛田隆二(もりた・りゅうじ)小説家。1954年生まれ。90年『ストリー
ト・チルドレン』で野間文芸新人賞候補、92年『サウダージ』で三島由
紀夫賞候補。04年2月に文庫化された『夜の果てまで』が25万部のベス
トセラーとなり、注目を集める。他の著書に『ニッポンの狩猟期』『リ
セット』『ラスト・ワルツ』『おいしい水』『散る。アウト』などがあ
る。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
盛田/隆二
小説家。1954年生まれ。90年『ストリート・チルドレン』で野間文芸新人賞候補、92年『サウダージ』で三島由紀夫賞候補。04年2月に文庫化された『夜の果てまで』が25万部のベストセラーとなり、注目を集める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)