<あいだ>とは、精神現象学的自己が、生命的基盤に支えられながら、時間を存えてゆくときの、
行為的原理である、と著者は考えているようです。あらゆる行為の出発点として、絶対無を念じる西田禅や、
自己と行為の<あいだ>に横たわっている和辻的風土論をいち早くみずからの行為論に摂り入れ、
哲学的な存在論・認識論を超越せんとする臨床学的試みの書であろうかと思います。
哲学的には、存在論・認識論と行為論が分離せず、一体をなしてゆくための方途を探ったものであり、
その際に死の観念や間主観性(inter-subjectivity)という捉え方は半ば必須のように思われます。
というのも、仮に哲学的に(あるいは神学的に)超越論的絶対者を措定してしまうと、人間として行為できなくなる、
というアポリアがあるので、そこはより汎神論的に<カミ>を希薄化して分散させ、独自の分有概念を用いて、
それを自己自身に摂り込み、人間として行為できるようにした書物である、と思います。
時間概念はむしろその際の相対的・客観的尺度になりうるもの、即ち行為する人間を映す鏡のようなものでしょうか。
そうした地平において、著者のいう自己と行為は哲学的に結ばれるかもしれず、
集団的な結合原理もまた、いわば「投げ上げ」から「連携」へと向かうのだと推察されます。
著者はかような視点から、精神医学の彼方に臨床学的現象学(clinical phenomenology)を看取し、
研究を重ねてきたという経緯もあるので、もともとフロイトらの精神分析学やフッサールらの現象学に対して、
等距離を保ちながら、独自の行為原理としての<あいだ>の探究となったのだ、と思います。
そのようなモチーフをお持ちの方には、本書はよい処方箋になるかもしれません。
あいだ (ちくま学芸文庫) 文庫 – 2005/9/1
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商品の説明
内容(「BOOK」データベースより)
自己が生命の根拠に支えられて世界と出会う行為的原理である「あいだ」。その構造を、ゲシュタルトクライス理論に拠りつつ、ノエマ・ノエシスの円環的関係を西田哲学の「行為的直観」と関連づけて、多面的に解き明かす。自己が主体として生きるということは、生命一般の根拠の「おのずから」の動きにかかわると同時に、間主体的な世界を維持することではないか。ユクスキュル、ブーバー、レヴィナスらへの言及を通じて自他の関係を考察し、ダブル・バインド仮説の可能性を改めて問う。独自の学問的地平を切り拓いた著者の世界をわかりやすく示す。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
木村/敏
1931年、旧朝鮮生まれ。1955年、京都大学医学部卒業。京都大学名誉教授、河合文化教育研究所主任研究員。専攻、精神病理学。1981年に第3回シーボルト賞、1985年に第1回エグネール賞、2003年に第15回和辻哲郎文化賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
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