孫子正解シリーズの入門篇的読み物として纏められている一問一答シリーズも早五回目となり、今回は今まで以上に現代日本が抱えている問題に焦点を当てた回答構成になっている。読み物とは言っても、読み手側にもそれなりの知恵が要求される内容なので、興味を持たれた方には第一回からの購読をオススメする。
内容を簡約すると、偏差値偏向教育の弊害・集団的自衛権思想の危険性・原子力安全神話の楽観論等の政治・教育・思想的問題や、個々人が平素から抱く多種多様な日常的疑問に対し、孫子の大局的視点から明快に回答されている。今回の特徴を挙げるとすれば、多くの回答の根底になっている「マインドコントロールからの脱却」と「健全なる懐疑的精神の発揮」である。
どちらの問題も日本人の民族的欠陥とも呼べるモノで、孫子の言を当て嵌めれば前者が「彼を知り己を知れば〜」、後者が「善後策」となるであろう。偏向報道・バラエティ・ドラマ・スポーツ等の例の出すまでも無く、この世は四六時中マインドコントロールに覆われており、その問題の本質は当の本人がその状態に在る事に気付いていない所にある。これは人間心理を利用して勧誘対象者を一定の結論に誘導する技術の為、強制的手法を用いる洗脳よりも危険に映る。ここから脱却する為には先ずその事に「気付く」のが重要で、更に既存の価値観を全て疑ってかかる、つまり「健全なる懐疑的精神」が必要と説かれている。
とりわけ我々の日常に対する概念は、毎日繰り返される取り立てて特別な出来事のない生活を指す為、言わば居心地の良いぬるま湯に浸かりっ放しの状態であり、人生観・死生観等の人間の本質・根源的問題から目を反らしがちである。つまり自他共に日常性マインドコントロールから脱却する為には「人生=戦いの連続」と自己意識改革し、目的・志しを明確にし、自覚的能動性を持って具体的実践行動をし続ける事が肝要となる。著者はそこにこそ孫子兵法を学ぶ意義があると喝破されている。
広がるばかりの経済格差や安定とは程遠い雇用問題、拡大する老人医療費や年金問題、それに反比例するかの様な選挙投票率の低下、若者の政治離れ・・・etc、現代日本が抱える問題は多く、未来へ向けて極めて憂慮する事態と言える。筆者は国民主権の民主主義国家において、リーダー論や国家安全保障における基本的見識の心得は、国民個々人が最低限有すべき責務と断ずる。そこに無知・無関心であるのは国民個々人の幸福実現の希望を自ら放棄する行為に等しいとも。この悲観的現状は、武士道教育から偏差値優先教育に傾倒した日本の成れの果てと言えるかも知れない。
日常的に形容し難い不安を有しては居るが自己の人間的成長を求め、未来の日本を担うべき若者にこそ読んで頂きたい稀有な名著である。
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【孫子 一問一答】シリーズ 第五回 Kindle版
古来、有名な孫子を学び活用しようとしても、結局、一知半解に終始し、心ならずも消化不良を来たしてしまうのは、誰しもが経験されたことではないでしょうか?
たとえば「孫子は難解であり、何度読んでも疑念が生じてくる」「個々の金言名句には深く感銘を受けるものの、各篇とのつながりが不明確で、全体を通しての体系に一貫した理解が得られない」「軍事だけに止まらず、政治・経済・外交・思想・法令・教育など幅広く多岐に亘って包括する内容は、一体何を主張したいのか釈然としない」などであります。
実は、そのような孫子に関わる様々なご質問がこれまでに、孫子塾のサイト「孫子に学ぶ脳力開発と情勢判断の方法」に三百件余り寄せられております。そのような個別具体的なご質問に対し、とりわけその趣旨に即しての明快な答えを提示し、かつ肩の凝らない読み物として整理しまとめたものが、第五弾としての【孫子 一問一答】シリーズ 第五回です。
この【孫子 一問一答】シリーズは、孫子兵法独習用テキストとして御好評を頂いております【孫子正解】シリーズ(第一回~九回まで既刊)と表裏一体の関係にあり、言わばその入門篇的なものです。併せてお読み頂ければ幸甚です。
【孫子 一問一答】シリーズ 第五回 目次
◆「存亡」の章
一、孫子は「先知の兵法」とも称されますが、「詭道」との関係を教えてください。
二、いわゆる「記憶力の良さ」は脳力開発において「害あって、益なし」とされています。なぜでしょうか。
三、孫子は、いわゆる集団的自衛権についてどのように論じているのでしょうか。
〇「制権」の章
四、孫子の理論体系(全体構造)と体系図について教えてください。
五、いわゆる「三十六計逃げるが勝ち」と孫子兵法とは関係があるのでしょうか。
六、健全なる懐疑的精神を発揮して、大局的見地から専門家を領導するのがリーダーの役割である。
■「詭道」の章
七、いわゆるマインドコントロールをいかに脱するか、その考え方を教えてください。
八、納得すればガラリと意見を変えることは、戦略的に見て正しい行動なのでしょうか。
九、いわゆる「鵜(う)の真似(まね)する烏(からす)」と、戦略・戦術との関係を教えてください。
◇「兵家」の章
十、「戦術なき戦略は空論」と「戦略なき戦術は無意味」の意味を教えてください。
十一、孫子の深い意味を理解するにはどうすれば良いのでしょうか。
十二、いわゆる「ヤル気」が無くなることを未然に防ぐ何か良い方法を教えてください。
●「廟算」の章
十三、戦争が繰り返され止むことが無いのはなぜでしょうか。
十四、先生は孫子をどこで、どのようにして勉強したのでしょうか。
十五、いわゆる将の五危(必死・必生・忿速・廉潔・愛民)についてお尋ねします。
たとえば「孫子は難解であり、何度読んでも疑念が生じてくる」「個々の金言名句には深く感銘を受けるものの、各篇とのつながりが不明確で、全体を通しての体系に一貫した理解が得られない」「軍事だけに止まらず、政治・経済・外交・思想・法令・教育など幅広く多岐に亘って包括する内容は、一体何を主張したいのか釈然としない」などであります。
実は、そのような孫子に関わる様々なご質問がこれまでに、孫子塾のサイト「孫子に学ぶ脳力開発と情勢判断の方法」に三百件余り寄せられております。そのような個別具体的なご質問に対し、とりわけその趣旨に即しての明快な答えを提示し、かつ肩の凝らない読み物として整理しまとめたものが、第五弾としての【孫子 一問一答】シリーズ 第五回です。
この【孫子 一問一答】シリーズは、孫子兵法独習用テキストとして御好評を頂いております【孫子正解】シリーズ(第一回~九回まで既刊)と表裏一体の関係にあり、言わばその入門篇的なものです。併せてお読み頂ければ幸甚です。
【孫子 一問一答】シリーズ 第五回 目次
◆「存亡」の章
一、孫子は「先知の兵法」とも称されますが、「詭道」との関係を教えてください。
二、いわゆる「記憶力の良さ」は脳力開発において「害あって、益なし」とされています。なぜでしょうか。
三、孫子は、いわゆる集団的自衛権についてどのように論じているのでしょうか。
〇「制権」の章
四、孫子の理論体系(全体構造)と体系図について教えてください。
五、いわゆる「三十六計逃げるが勝ち」と孫子兵法とは関係があるのでしょうか。
六、健全なる懐疑的精神を発揮して、大局的見地から専門家を領導するのがリーダーの役割である。
■「詭道」の章
七、いわゆるマインドコントロールをいかに脱するか、その考え方を教えてください。
八、納得すればガラリと意見を変えることは、戦略的に見て正しい行動なのでしょうか。
九、いわゆる「鵜(う)の真似(まね)する烏(からす)」と、戦略・戦術との関係を教えてください。
◇「兵家」の章
十、「戦術なき戦略は空論」と「戦略なき戦術は無意味」の意味を教えてください。
十一、孫子の深い意味を理解するにはどうすれば良いのでしょうか。
十二、いわゆる「ヤル気」が無くなることを未然に防ぐ何か良い方法を教えてください。
●「廟算」の章
十三、戦争が繰り返され止むことが無いのはなぜでしょうか。
十四、先生は孫子をどこで、どのようにして勉強したのでしょうか。
十五、いわゆる将の五危(必死・必生・忿速・廉潔・愛民)についてお尋ねします。
- 言語日本語
- 発売日2015/4/27
- ファイルサイズ865 KB
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登録情報
- ASIN : B00WTECU6M
- 発売日 : 2015/4/27
- 言語 : 日本語
- ファイルサイズ : 865 KB
- Text-to-Speech(テキスト読み上げ機能) : 有効
- X-Ray : 有効にされていません
- Word Wise : 有効にされていません
- 本の長さ : 145ページ
- Amazon 売れ筋ランキング: - 344,144位Kindleストア (の売れ筋ランキングを見るKindleストア)
- - 556位ビジネスの意思決定
- - 629位リーダーシップ (Kindleストア)
- カスタマーレビュー:
著者について
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・山梨県出身
・拓殖大学政経学部卒(拓空会OB)
・元ラジオ日本・報道部放送記者、報道番組制作、都庁鍛冶橋記者クラブ他
・宝飾品販売会社経営
・(財)中小企業経営者災害補償事業団 教育学院副学院長
・現在、一般社団法人 孫子塾の塾長として「孫子に学ぶ脳力開発と情勢判断の方法」オンライン通信講座、「孫子兵法」通学ゼミ講座を主宰し、関連書籍の執筆活動を行うと共に、付属機関である日本空手武道会 拓心観道場の主席師範として「古伝空手・琉球古武術」の指導と普及に当る。
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カスタマーレビュー
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トップレビュー
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2015年5月15日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
「孫子正解」の筆者による「孫子一問一答」も今回で5冊目になる。
いま大学進学において哲学科に進む学生が増え、また巷では哲学カフェなるものが盛んに開催されているようである。
いままで日本人が信じていた終身雇用は崩壊し、雇用環境は不安定となり、その一方で年金、医療費などがどんどん削減されていく。
集団的自衛権や社会保障費削減など、安倍政権の暴走は止まるところを知らず、誰の目にも国民にとって過酷な未来が待ち受けていることが明らかであるにもかかわらず、多くの国民が我関せずとばかりに、お笑いやバラエティー、スポーツや芸能といったどうでもよいことに呆け、大切極まりない選挙に有権者の半分が参加しない。一方においては、人の上に立ち、人の模範となるべき政治家、官僚、役人、はては教師などの教職者に至るまで不祥事のオンパレード。
まさにいまの日本は目を覆いたくなる惨状であり、麻のごとく乱れているこの社会において、自分はどう生きていけばよいのか・・・そんな根源的な問いに対する答えを求めている若者が多くいることの表れが、この哲学・思想ブームではないかと思う。。
あまたある哲学・思想のなかで、そんな悩みを持った人たちに最も適しているのが、この孫子兵法ではないだろうか。なぜならば、この孫子兵法は頭の中で思索ばかりを広げていく哲学とは違い、肉体を持った生き物としての人間の原理原則を、この世のなかを成り立たせている弁証法(対立矛盾)が一番先鋭化する戦争というものに特化して説いている、いわば実践的な思想書であるからである。そしてこの筆者がシリーズで出版している「孫子正解」と「孫子一問一答」は、孫子兵法を学ぼうとする人にとって、まさに最適かつ最高の指導書だと思う。
今回の「孫子一問一答 5」も、読者からの質問に、孫子兵法を通して答えるという形式でまとめられている。
「記憶力の良さは脳力開発にとって百害あって一利なし」、「マインドコントロールをいかに脱したらよいか」といった個人に関わる問題については、いまの「知識」偏重による頭でっかちの人間になることの害と、最後は思想とそれに伴う実践・行動によって培われた人間力こそが物を言うということを分かりやすく説いている。
また一方において、「孫子は、いわゆる集団的自衛権についてどう論じているか」といった公に関する質問に対しては、孫子兵法を通して大局的見地から見たときに、いかに「集団的自衛権」が利に合わないことであるかを、誰にでも分かるように説いている。
これら以外にも、戦略と戦術の関係や孫子兵法の理論体系などを簡潔かつ明快な文書で説いており、目から鱗となること請け合いである。
迷える現代人にお勧めの書籍である。
いま大学進学において哲学科に進む学生が増え、また巷では哲学カフェなるものが盛んに開催されているようである。
いままで日本人が信じていた終身雇用は崩壊し、雇用環境は不安定となり、その一方で年金、医療費などがどんどん削減されていく。
集団的自衛権や社会保障費削減など、安倍政権の暴走は止まるところを知らず、誰の目にも国民にとって過酷な未来が待ち受けていることが明らかであるにもかかわらず、多くの国民が我関せずとばかりに、お笑いやバラエティー、スポーツや芸能といったどうでもよいことに呆け、大切極まりない選挙に有権者の半分が参加しない。一方においては、人の上に立ち、人の模範となるべき政治家、官僚、役人、はては教師などの教職者に至るまで不祥事のオンパレード。
まさにいまの日本は目を覆いたくなる惨状であり、麻のごとく乱れているこの社会において、自分はどう生きていけばよいのか・・・そんな根源的な問いに対する答えを求めている若者が多くいることの表れが、この哲学・思想ブームではないかと思う。。
あまたある哲学・思想のなかで、そんな悩みを持った人たちに最も適しているのが、この孫子兵法ではないだろうか。なぜならば、この孫子兵法は頭の中で思索ばかりを広げていく哲学とは違い、肉体を持った生き物としての人間の原理原則を、この世のなかを成り立たせている弁証法(対立矛盾)が一番先鋭化する戦争というものに特化して説いている、いわば実践的な思想書であるからである。そしてこの筆者がシリーズで出版している「孫子正解」と「孫子一問一答」は、孫子兵法を学ぼうとする人にとって、まさに最適かつ最高の指導書だと思う。
今回の「孫子一問一答 5」も、読者からの質問に、孫子兵法を通して答えるという形式でまとめられている。
「記憶力の良さは脳力開発にとって百害あって一利なし」、「マインドコントロールをいかに脱したらよいか」といった個人に関わる問題については、いまの「知識」偏重による頭でっかちの人間になることの害と、最後は思想とそれに伴う実践・行動によって培われた人間力こそが物を言うということを分かりやすく説いている。
また一方において、「孫子は、いわゆる集団的自衛権についてどう論じているか」といった公に関する質問に対しては、孫子兵法を通して大局的見地から見たときに、いかに「集団的自衛権」が利に合わないことであるかを、誰にでも分かるように説いている。
これら以外にも、戦略と戦術の関係や孫子兵法の理論体系などを簡潔かつ明快な文書で説いており、目から鱗となること請け合いである。
迷える現代人にお勧めの書籍である。
2015年5月19日に日本でレビュー済み
Amazonで購入
先日あるバラエティー番組で某落語家が件の県会議員に投票してしまったことを告白し悔んでいた。
還暦を過ぎ世間的には見識を備えているとされる人物でも、リーダーとは何なのかという本質をつかめていないようだ。
消去法で投票したそうだが、単純に彼を責めることはできない現代日本のかかえる潜在的な問題がある。
本シリーズで著者が警鐘を鳴らし続けている所以である。
本シリーズは本質的には一貫して「真のリーダーとは何か」を論じている。
リーダー不在が叫ばれて久しい。しかし、本来自分が理想と思っているリーダー像は自分自身の頭の中にしかなく、誰あろう自分自身がその理想のリーダー像たるべく、人格完成に努めることが大切なはずである。
そのような姿勢を獲得してはじめて、孫子は我々の良き参謀役となり、自己に甘い人間の恣意に惑わされない原理原則をそこから得られる。
本シリーズを読まれて腑に落ちられた方で、孫子正解シリーズがまだの方は今後そちらも読まれることをお勧めする。
還暦を過ぎ世間的には見識を備えているとされる人物でも、リーダーとは何なのかという本質をつかめていないようだ。
消去法で投票したそうだが、単純に彼を責めることはできない現代日本のかかえる潜在的な問題がある。
本シリーズで著者が警鐘を鳴らし続けている所以である。
本シリーズは本質的には一貫して「真のリーダーとは何か」を論じている。
リーダー不在が叫ばれて久しい。しかし、本来自分が理想と思っているリーダー像は自分自身の頭の中にしかなく、誰あろう自分自身がその理想のリーダー像たるべく、人格完成に努めることが大切なはずである。
そのような姿勢を獲得してはじめて、孫子は我々の良き参謀役となり、自己に甘い人間の恣意に惑わされない原理原則をそこから得られる。
本シリーズを読まれて腑に落ちられた方で、孫子正解シリーズがまだの方は今後そちらも読まれることをお勧めする。