「鬼畜」の家:わが子を殺す親たち (日本語) 単行本 – 2016/8/18
石井 光太
(著)
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本の長さ272ページ
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言語日本語
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出版社新潮社
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発売日2016/8/18
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寸法18.8 x 12.8 x 2.5 cm
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ISBN-104103054565
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ISBN-13978-4103054566
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商品の説明
メディア掲載レビューほか
「親子愛」という粉飾が家族を追い詰める
虐待に関する書籍は九〇年代後半から数多く出版されているが、その価値は加害・被害の二分法からどれだけ自由であるかによって決まる。殺した親を「鬼畜」扱いし特殊化・周縁化すれば、ふつうの家族や親子の価値は保護され脅かされることはないからだ。厚木市幼児餓死事件などを扱った本書は、そんな予定調和的構造を裏切っていく。
加害者である親が子どもを殺そうと思っていたわけではないこと、出産直後には親子の絆やハッピーな家族像を夢見ていたことなどを丹念なインタビューから描き出す。さらに彼ら彼女たちの悲惨な生育歴を足を運んで聞き出すことで、著者は加害・被害の複層化に成功している。
あまりの悲惨さに驚かれるかもしれないが、本書で描かれた三つの事件は日本の児童虐待における氷山の一角に過ぎないことを知ってほしい。殺された子どもの背後には、表面化しないまま病死や事故死とされ闇に葬られた多くの被虐待児が存在するはずだ。幸運にも第三者に発見され、いくつかの偶然が重なって殺されることを免れて成長した子どもたちの数を加えれば、相似形の家族・親子は膨大な数にのぼるだろう。
「鬼畜」と呼ぶしかない親に育てられ、かろうじて生き延びて成長した人たちの語る言葉を、評者はカウンセラーとして二十年以上にわたり聞いてきた。戦場からの帰還兵同様に、単純に「殺されなくてよかったね」と言うことが憚られるほど、彼ら彼女たちはさまざまな後遺症や深い影響に中高年になるまで苦しめられる。それだけではない、親子の絆を称揚し、どんな親でもやっぱり血がつながっているから最後は許すべきだという日本社会に深く根を張った常識によって、そのひとたちはずっと苦しめられることになる。本書を読めば、親子愛という粉飾がどれほど家族を閉鎖的にし、結果的に子どもを殺すことにつながるかが手に取るようにわかる。
幸せを夢見ながら瞬く間に坂を転げ落ちるように破局に至る親たちの姿から、一九九〇年のバブル崩壊から二十五年を経た貧困化の進行が、このような脆くてあっけない、まるで底が抜けたような児童虐待を生み出したのではないかと思わされる。貧困は「言葉」の貧困を生み、理由や考えを語れない底辺層を厚くする。本書には著者のインタビューで初めて事件について考え言語化できたのではないかと思わせる親たちが登場するが、じっくり言語化を促し加害者を丹念に描き切ることにノンフィクションの意味を見るのは評者だけではないだろう。
評者:信田 さよ子
(週刊文春 2016.10.10掲載)内容(「BOOK」データベースより)
著者について
1977(昭和52)年、東京生まれ。国内外を舞台にしたノンフィクションを中心に、
児童書、小説など幅広く執筆活動を行っている。
主な著書に『物乞う仏陀』『神の棄てた裸体』『絶対貧困』『レンタルチャイルド』
『地を這う祈り』『遺体』『浮浪児1945─』、児童書に『ぼくたちはなぜ、学校へ行くのか。』
『幸せとまずしさの教室』『きみが世界を変えるなら(シリーズ)』、
小説に『蛍の森』、その他、責任編集『ノンフィクション新世紀』などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
1977(昭和52)年、東京生まれ。国内外を舞台にしたノンフィクションを中心に、児童書、小説など幅広く執筆活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
登録情報
- 出版社 : 新潮社 (2016/8/18)
- 発売日 : 2016/8/18
- 言語 : 日本語
- 単行本 : 272ページ
- ISBN-10 : 4103054565
- ISBN-13 : 978-4103054566
- 寸法 : 18.8 x 12.8 x 2.5 cm
- Amazon 売れ筋ランキング: - 244,670位本 (の売れ筋ランキングを見る本)
- カスタマーレビュー:
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カスタマーレビュー
上位レビュー、対象国: 日本
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アンナ・カレーニナの冒頭の一節を思い出したけれどこの本を読み私はこれは真逆だと確信した。
どの事件の被告人である親もその親や取り巻く環境がこれほど似かよってるのは偶然ではないだろう。
貧困、虐待、無教育、無援助。
負の連鎖はどこから始まりどこで終わるのか。
下田の事件のエピソードを読んでいる時は同情のあまり途中で読むのが辛く胸が苦しくなったほど。
廻りで知っていた人は絶対にいたはずなのだ 。なぜ誰一人保健所でも警察にでも相談しなかったのか。
他の事件もインタビューに答えている関係者がいたのだから同様だ。
この本を読むまではタイトル通り我が子を虐待死させる親は鬼畜でサイコパスだと思っていた。
けれど違った。彼らはあまりにも無知で愛を知らない子供なんだと。
子を虐待し殺してしまう親を非難しているだけでは何も解決しない。
愛情の反対語は無関心。
私達は無関心になっては駄目だ。
もっとお節介な社会になっていいと強く思う。
以前、「反省させると犯罪者になります」という本を読んだが、凄惨な事件を起こしてしまう(起こさざるを得ない)人物は、それまでの人生の中で虐げられ、一人で耐え続けた結果そうなってしまったのだ とあった。
報道においては、犯罪を犯した(犯してしまった)事実だけをピックアップして知らせるのではなく、「そうせざるを得ない苦しみ、負の連鎖があること」を解明し報道することで、人々に「断罪」ではなく「理解・支援」の意識を持って社会問題を見ていく視点を与えることが大切ではないだろうか。一個人の所業として捉えるのではなく、社会の仕組みの中でどう支援していくかを考えていくことが、今後の社会の中で重要であると思う。
本書で取り上げられた三件で犠牲になられた方には、心よりお悔やみ申し上げます。
命を授かる重みを教えるべきだし、性に対する相談窓口を高校生に配布するより、各自治体や国が「特別養子縁組」についてもっと交付するべきだし、窓口を広げるとともに、そこに支援する事によって、赤ちゃんは救われる。
少子化問題の別枠の解決法になる。
DV家庭で育ったら、DVをする親になるとか、
ネグレクトで育てばネグレクトの親に育つとか、
そういう負の連鎖を断ち切れる「特別養子縁組」という救済があるのに。
産むと働けない、お金がない、女性は救われるべきだし、
生まれてくる命には何の罪も無い。
血のつながりが全てじゃないと思う。育った環境が人間を作る。解決策があるのに、知らない、知られない。
たくさんの人に読んでもらいたい。
特に、妻が出て行って子供と二人暮らしになった男性が、電気ガス水道を止められたまま生活していたことや、出て行った妻の携帯代を月に五、六万も払っていたことなどは、本当に驚きでした。夫の母親が統合失調症であることが、夫の人格形成に大きな影響を与えているということで、納得がいきましたが、とにかくまったく想像の範囲を超えた事実にショックを受けるばかりでした。
この本を拝読し、両親の生育環境の複雑さ、幼稚さ、精神の未熟さを知ることができました。
この本を数多くの人が手に取り、自分の周囲にあることであると認識し、皆で対策を考えられたらなと思います。
もっと多くの人がこの本を手に取り、問題意識を持ってもらえたらいいなと思いました。
ただ、ほかのレビュアーも書いていますが、作者はどうやって加害者の親の心情をここまで詳細に記述できたんだろうと考えると、やはり想像で書いているのではないかなと思うので、忠実に再現しているかというと推察の域を出ないのではないかなと思いました。