実話怪談集では、採話者の語りを再現することが大事だと思う。
冗長部分があったり主語述語がはっきりしていなかったりしても、話し手の存在が直接伝わってくる方を優先すべきなのだ。たとえ、それが採話者の語りと異なっていたとしても。
文章力や構成力にも関係することだが、読みながら自分が実際に怪異の聞き取りをしているかのように感じさせることはこの種の書き物ではある意味絶対条件だと思われる。
今回、奇しくも稲川氏ライブ、木原氏、中山氏の最新本とほぼ同時に読んだが、中山氏の再現性は高く、稲川氏の物はいつものように誤植で興ざめし(これは編集側の問題だが)、木原氏の物は取材者が前面に出すぎていた。
久田氏の初となるソロデビュー作であるこの本は絶対条件をクリアしているだけではなく、本の構成の上でも新しい領域を見せている。超−1で圧倒的な力量を見せた筆力は本物なのだと確信させてくれると同時に、今後が非常に楽しみである。
久田氏は実話怪談集の世界では新人なのだ。と言うより、物書きの世界でも新人なのだ。
これから氏の文章で夏も冬も楽しませてくれることに、実話怪談ファンとして純粋にワクワクしている。
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