いまの世の中、戦争それ自体を「善し」と言いきる人は殆どいません。さはさりながら、この21世紀の今日ですら戦争がなくなっていないということも、残念ながら冷厳な事実です。国家は何ゆえに武力を行使し、人はまた何ゆえに戦うのか。古くて新しくて重くて難しい問題です。
本書は、古代ローマから今日に至るまで、戦争という営みに対する人間の捉え方を、法・宗教・思想という3つの観点から分析し、右の問題に対する考察の糸口を提供しようとするものです。キケロ、グロティウス、カール・シュミット、ハーバーマスなど、古今の思想家・法学者の思索を概観しつつ、戦争に対する時代的な見つめ方が変容していく様子が、平易に、かつ多角的に語られていきます。
NATOによるコソボ空爆等を契機に、欧州中世の「正戦」的思想の復活傾向が指摘されるなか、本書は、これからの人の世の安寧を考えていく上で、たいへん示唆に富んだものを含んでいると思います。
複数の著者による論文集の体裁をとっていますが、しっかりとした縦糸を通す工夫がなされており、こうした点でも好感の持てる一冊です。
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