出版社 中央公論新社 黒田剛史, 2002/07/26
勝負はすでについている
Q 文部科学省が推進する「トップ三〇大学」で「勝ち組」に残るのはどこの大学か?
Q 国立大学の再編統合で飛躍するのはどこの大学か?
Q 独立行政法人化の中で、生き残るのはどこか?
世間ではこうしたことが大きな話題になっています。そして各大学は本年度に大きな勝負をかけています。
しかし、本書をご覧になればおわかりのように、実は勝負はすでについているのです。
本書は、あまたある大学改革論とは異なり、十年前に始まっていた大改革に着目しました。一九九一年の東大法学部に始まる「部局化」方式での大学院重点化と、同じく九一年の「大学設置基準の大綱化(規制緩和)」以降の教養部解体にともなう改革です。この十年間の教官・事務方・文部省の動きを、当事者へのインタビューをもとにして徹底検証した結果、大学間の「自己変革能力」の格差が明らかとなったのです。
さて、この「自己変革能力」とは何でしょうか? それを追求するために本書が特に注目したのは、蓮実重彦氏ら東大「傍流」教官が起こした“教養学部(駒場)革命”です。この革命とは、全国の教養部が規制緩和の中で一斉解体する一方で、東大の教養学部だけが唯一生き残ったドラマを指します。また、この“革命”は二冊のベストセラー(柴田元幸・佐藤良明編『ユニヴァース・オブ・イングリッシュ』、小林康夫・船曳健夫編『知の技法』)を生み出しましたが、それが可能だった背景には、やはり駒場の自己変革能力の高さが潜んでいたのです。
この「自己変革能力」の格差こそが、本書が提示する大学ランキングの評価基準です。本書をご覧になれば、今後の大学改革をどう読み解いていけばいいのかという「枠組み」を得ることができるはずです。
本書は、著者が五年の歳月をかけた取材の集大成です。ぜひご覧ください。
【目次】
I 悲しき「トップ30大学」――甘ったれ坊やと過保護ママ
II そして東大の教養学部だけが生き残った〈ケーススタディー1〉
III あのベストセラーを生んだ大学改革に学べ〈ケーススタディー2〉
IV 誰が教養部をつぶしたのか
V 遠山プランの楽しみ方
【著者略歴】
中井浩一(なかい・こういち)氏 国語専門塾「鶏鳴学園」代表。1954年杤ڬ生まれ。開成中学・高校を経て京都大学文学部卒業。一般企業勤務後、大手予備校講師を経て、1995~97年ドイツ留学。ドイツの国語教育、作文教育を研究。著書に『高校が生まれかわる』『論争・学力崩壊』(編著)。
文部科学省が定める「トップ30大学」はどこか―本書は大学院重点化・教養部解体など、この10年の大学改革を徹底検証。独自の評価基準を提案し、大学が生き残るための絶対条件を問う。