2000年前後に多くのネットベンチャーが登場したが、現在それらの多くは当初のネット企業とは言い難い。
本業よりも株式市場で目立っていたり、事業より経営者のほうが有名だったり、コングロマリット化して本当は金融事業で稼いでいたり。
変化の激しいネット業界で、若いネット企業が当初のネット企業のまま成長することは稀だが、「はてな」は数少ない「変わらない実直なネット企業」といえる。
それは本書に詳しい通り、近藤社長のパーソナリティに依存するところが大きい。常に思考がオープンでシンプルであること、社員が楽しく働ける環境づくりを重視していること、個人として有名になりたい/メディアで評価されたいという虚栄心がないこと、経営の根幹を技術に置いていること。なにより、ユーザーや社員など多くの人の意見を聞く忍耐強さを持ち、そこから最適解を導くべきだという強固な信念があること。ギラギラしたネットベンチャーの雄たちと雰囲気は大きく異なる(ヒルズにオフィスを構えるのも興味がないという)。背景にある、はてなは「ものづくり企業」であるという製造業的な自負が本書でも目を引く。タクシー会社と自動車メーカーをまとめて「交通産業」と呼ぶのが乱暴なのと同じで、インターネット企業の中にも、ものをつくる会社と作られたものを利用するサービス業があり、一括りにはできない。そして自分たちはあくまで「ものづくりの会社」だと。「へんな会社」というより、そこからホンダやソニーが生まれたような古き良き「町工場」のようだ。
製造業のM&Aが難しい背景には、技術開発マネジメントの難しさがあり、日本の大手ネット企業が資金力が豊富なのに技術力に劣るといわれる現状は、まさに製造業から学ばずにM&Aに興じたことにも一因がある。そのことを著者はメディアや資本市場の狂騒からは一歩引いた場所で、ユーザーと真摯に対話し、冷静に見つめてきた数少ない経営者だ。
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