30人の「○○系男子」の描き方が載ってる本。好きなイラストレーターさんの絵が載ってると聞いてGET。こういう本にありがちな「単なる男子並べました図鑑」ではなく、最初にきちんと基本の男性の描き方を描いてるところは好評価。
ただ、……悪くないんだけど、視点と分類が非オタ的でフェチが薄いんだな。
こういう技法書は、基本オタクのフェチツボにはまる男性分類が載ってるもんだと思うんだけど……。この本の男性分類はどっちかっていうと「ネタ的に作られた流行男子をサラっとなぞったらそれで十分な、フェチの薄い一般人センス」なのだ。「草食系男子」「肉食系男子」「ロールキャベツ系男子」「メロン男子」「ユニコーン系男子」なんてテーマで熱心にイラスト描いてるオタクの話はあまり聞かないぞ。「戦闘狂ツンデレ男子」とか「糸目系腹黒男子」とか「人情系コメディリリーフ男子」とか「死亡フラグ系兄貴分男子」とか「オールバック前髪パラリ系インテリ男子」とかなら熱心にイラスト描いてるオタク山ほどいるけどな。そういうの載ってないんだよな。
まあ、「犬系男子」とか「オカン系男子」とかの分類はアリなんだけど。たとえばオカン系男子なら「水仕事の後にエプロンで手をぬぐうときのっ！でっかい手でエプロン生地をワシッてする手つきが！！最強に萌えなんだよおおおウ！！オカンの小さな手とオカン男子のでっかい手では開き方と関節のディテールが全然違って、そこに母性だけじゃなく力強さも感じさせるオカン男子の神髄が現れるんだよッ！」とかそういうフェチがあるはずじゃござんせんか。残念ながらそういうフェチが前面に出たイラストが少なかった。
そういう萌えポイントを「ここではこれこれこういうレイヤーを使って、あえてこれぐらいのサイズに設定した筆でランダムにシミを描くことで、男性が塗れた手で厚手の布地をつかんだ時の独特のニュアンスを……」「あえて濃い青で腕に浮き出た血管を描き込むことで、いざという時には男らしさを発揮するオカン男子の力強さを……」と丁寧解説してくれるならもっといい本になった。要はイラストレーターさんのフェチと、そのフェチ表現を支える「具体的な」技法解説をもっと見せてほしかった。
この本で描いてらっしゃるイラストレーターさんのうち1名は別の場所で「佐○急便男子」を描いておられ、それが非常にカッコいいのだ。あの下手をすると単に汗臭いだけの印象になりがちな横じまのシャツ姿を、男らしさと繊細さの共存する作品に仕上げた技法をぜひともこの本でも教えてほしかった。本当どうやったらあのラガーメンシャツに男らしさと繊細さを両方詰め込むことができるんだ。ポイントは塗りか!?色選びか!?ポージングか!?
しかしこうして振り返ると、やはり「刀剣ポーズイラスト真剣講座」は良書だった。あの技法書は和装系男子をカッコよく見せるための嘘パースと、地面をわしっとつかむかのごとき足指表現に半端ないフェチを感じたぜ……。
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