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NYの地下鉄は怖い、との先入意識を持たせる契機となった作品,
2012/3/25
レビュー対象商品: ある戦慄 [DVD] (DVD)
60年代後半から70年代、アメリカン・ニューシネマの台頭から隆盛期に掛けて多くの気鋭のフィルム・メイカーたちがデビューしたが、それらの中には70年代が終わり、ニューシネマの終焉と共にその使命を終えたのかの如く、いつの間にか姿を消してしまった人たちが居た。
67年、今作で脚光を浴びたラリー・ピアースもそのひとりと呼んでいい。
映画監督ピアースを思う時、個人的には、ちょっと強引だけど、ジョセフ・サージェントと対で考えてしまう事が多い。
それは、どちらもTV出身で人気シリーズを手掛けた後映画界に入り、この時代に数少ないが忘れられない作品たちを世に送り出した後、惜しまれながら再びTVの世界をメイン・フィールドの場に移してしまった経歴が似ているから、だけではなく、やはり、どちらもNYの地下鉄の車両で湧き起こる戦慄のサスペンス、即ち、ピアースは今作、サージェントは「サブウェイ・パニック」を撮っているからだ。
町山智浩の「トラウマ映画館」で注目されている今作は、ピアースの長編第2作目に当たる67年に製作公開された。
サスペンス映画としても楽しめるが、時に、アーサー・ペンの「俺たちに明日はない」がセンセーショナルな話題を集めていた頃で、ふたりの凶悪な酔っぱらいと深夜の地下鉄内で偶然乗り合わせた乗客たちの恐怖と不安をネオドキュメンタリー・タッチで緊密に描いた今作は、当時のアメリカの恥部である大都市に蠢く得体の知れない暴力性を冷徹に見据えた先駆的作品として、ニュー・シネマ台頭期の傑作と位置づける見方が一般的だ。
今作は2部構成となっており、前半はふたりのならず者の蛮行と、各乗客たちがそれぞれに電車に乗り込んで行く様をカットバックで描き、後半は、文字通りの戦慄のサスペンス劇と転化する。
レビュアーのみでじゃ氏も御指摘の様に、まるで舞台劇を観ているかのような密室の中での人間ドラマが見応え十分だが、脇役に至るまで有名無名の俳優陣が巧く、作品の質を上げている。
日常的に誰もが遭遇し得る恐怖を描いたと言う点では、スピルバーグの「激突!」に匹敵すると思えるが、恐らく、NYの地下鉄は怖いとの先入意識を持たせる契機となった今作、今観ると、モノクロ・スタンダードな画質がよりひりひりとした緊迫感を与えるのではないかと思う。
ピアースは、処女作「わかれ道」で白人女性が黒人男性との結婚から受ける凄まじい人種差別をテーマに扱い(マーティン・リットの傑作「ボクサー」の10年近くも前に!)、この後、ユダヤ人男女の性と愛の断絶についての作品「さよならコロンバス」を撮った。
世俗的には、「パニック・イン・スタジアム」のアクション監督とのイメージもあるようだが、実は、社会派監督としての硬派な出自を持つ人なのである。
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