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レビュー対象商品: 富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか (単行本)
プロモーションの模範のような本である。高岡氏の如才ない商魂には賛嘆の他ない。だが残念ながら、質の高さと情報の凝縮度においては、ロバート・フランク『ザ・ニューリッチ』に遠く及ばない。こちらはリッチスタン(富裕層の帝国)の陰影も浮き彫りにしており、富裕層の資産が大きな市場リスクに晒されていること、マージン・ローンの逆レバレッジ効果、回転売買で美術作品の値を吊り上げるHFマネジャーの存在、富裕層の子供が薬物中毒に陥る確率が高いこと、巨額の資産は必ずしも人を幸福にしないこと、等々が語られている。ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態 凄まじい意欲で事業に取り組む或る超富裕層は、「カネは自白剤であり、人間の本質を明らかにする」と語っている。今後のYUCASEEメンバーの言動に注目、かつ期待したい。日本の富裕層の実力次第で、この社会には新しい地平が拓かれる筈だ。既にアメリカでは、使い尽くせない資産を持つ超富裕層が、環境・教育・福祉といった長期的な取り組みの必要な分野のソリューションへ邁進しつつある。日本の富裕層がシンガポールへの脱出をちらつかせ政府を恫喝するばかりでないことを望む。 ポール・ファッセルは著作『Class(階級)』で富裕層と貧困層が瓜二つで似ていることを指摘しているが、日本もまた同様であることを確認して興味深く思った。前者は自分たちへの嫉視を攻撃して減税を要求し、後者は富裕層の税率を高めて自分たちの取り分を増やそうとする。まさにそっくりである。単純に自らの属する階層の利害を守ろうとするだけでは、この社会を二つに割る分離主義に陥る他なかろう。 今後の日本社会は富裕層の言動如何で決まる。他者への猜疑に満ちて自らの資産をどこまでも守ろうとする富裕層の国になるか、高い使命を掲げてどこまでも日本社会の希望となるか(故小倉昌男氏のように)、まだまだYUCASEEの社会貢献は「12歳の少年レベル」であるが(最低でもあしなが育英会とPlanを寄付先に加えるべきだろう)、今後の発展を期待してやまない。尚、PJの野口社長は、本気で社会貢献を行うには500億円程は必要と語っているそうである。 あしなが運動と玉井義臣―歴史社会学的考察 高岡氏の目的はアメリカナイズにあると思われるが、日本の誇る研究者イチロー・カワチ教授は「経済的格差の拡大は、治安を悪化させ、平均寿命を縮める」との調査結果を発表している。我々の歩むべき道を他国に求めることはできないのである。 不平等が健康を損なう 最後になるが、真にYUCASEEから利益を得るのは「富裕層向けのサービス事業を構想している富裕層」であり、一般大衆ではない。 追記:バラク・オバマ大統領は、当選直後の歴史的な演説で「Main street が苦しんでいる時に Wallstreet が繁栄するなどということがあってはならない」と語っている。また、ノーベル経済学賞を受賞したスティグリッツ教授も「トリックルダウン理論は有効ではない」と明言している。おのれに不都合なことは口にしない著者の思想は、既に時代から遅れている。 |
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