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11 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 長い間、不当な扱いを受けてきた傑作。, 2008/5/6
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: 神の小さな土地 [DVD] (DVD)
『ウインチェスター銃73』、『エル・シド』、『最前線』とともに名匠アンソニー・マン監督本人が最も会心の出来ばえであるとした作品がこの『神の小さな土地』(公開時の邦題『真昼の欲情』)です。戦争映画の傑作として名だたる『最前線』はもちろんのこと、欲に駆られたアメリカ南部の農夫一家が織り成す喜悲劇である本編が日本でDVD化されたことに驚き、また感謝しています。

シドニー・ハーモンとフィリップ・ヨーダンといったアメリカ映画界の重鎮が設立した独立プロダクション、セキュリティプロによって製作された本編は、アンソニー・マンが“西部劇アクションの名手”というステレオタイプから脱し、存分にその作家性を開花させた作品です。それはほかでもない、物語の背景に広がる美しいランドスケープとその中に配置された登場人物、およびその他の事物とがドラマティックに一体化することによって成立する独自の映像感覚に顕著に表れています。祖先が埋葬した金の財宝を掘り出そうと土埃にまみれた欲丸出しの農夫、ふびんにもたらいまわしにされる“神の小さな土地”を表す鉄の十字架、愛し合うことの許されぬかつての恋人たちの熱帯夜の密会、閉鎖された工場を見つめる住民の不安、家族がみな再び心一つになろうと懸命な葛藤劇を繰り広げる舞台にあたかも見立てられたかのような“我が家”のバルコニーなど、一つ一つのシーンのロケーション造形の映画的力強さ、素晴らしさ。名カメラマン、アーネスト・ハラーがモンタージュとワンシーン・ワンショットのテクニックを駆使して力強くかつ甘美なモノクロ画面を連続して繰り出し、映画音楽の名手エルマー・バーンスタインによる情感溢れる音楽もその美しい映像に深い奥行きを与えています。

このフィルムの運命同様、今まで悲しいまでに過小評価されてきた名優ロバート・ライアンもマン監督がそうしたかのように“ニューロティックなタフガイ”というお仕着せのステレオタイプを脱し、ユーモアと哀愁とがただよう一世一代の名演を見せています。間違いなく本編は彼にとっても『十字砲火』、『罠』、『危険な場所で』、『熱い夜の疼き』、『最前線』、『拳銃の報酬』、『ワイルドバンチ』、『氷人来る』などと並ぶ代表作の一つであると言えます。また、これが映画デビュー作となった後のTVドラマのスター、ティナ・ルイーズの初々しくも官能的な存在感と『最前線』でも一筋縄ではいかないキャラクターを熱演したアルド・レイの苦悩に満ちた演技も実に印象的です。

笑い声と魂の衝突音が響きあうアメリカ南部の大地の上でアンソニー・マン監督のもう一つの作家的こだわりである「家族とは、そして人とは何か」というテーマが赤裸々に問われていく過程も秀逸です。まさにこれは原作者アースキン・コールドウェルがつむいだスキャンダラスな人間ドラマのアンソニー・マン的解釈の極致。主人公タイ・タイの「愛し合うこととは分かり合い、許しあうことだ」という叫びがいつまでも胸に残ります。

笑いのうちにあってもそこはかとない詩情を有し、欲望を前面に押し出していても決して愛情を忘れることなく、粗暴であるにも関わらず忘れがたい品格を湛えたフィルム『神の小さな土地』。そんな独特のスタイリッシュさからアンソニー・マン監督が類希なる芸術家であったことが今更ながら伝わってきます。公開当時、『ヴァラエティー』誌、『フィルムズ・アンド・フィルミング』誌、『ニューヨークタイムズ』紙などをはじめとした数々のメディアに絶賛された作品。特に『ニューヨークタイムズ』の名評論家ボズウェル・クロージャーは本編を1958年におけるベスト10作品の一つに選出しています。加えて、アンソニー・マン研究のオーソリティーである映画史家ジャニーン・ベイシンガーもこの作品を「芸術性と娯楽性とを両立させることに成功した好例」と称えながら『最前線』と並ぶマン監督最高峰のフィルムの一つに位置づけています。それにも関わらず長いあいだその一見特異な題材と、「コメディなのだか、深刻なドラマなのだかはっきりしない」というまったくもって了見の狭い批評のせいで不幸にして時代の裏側に隠されてしまい、現在でも決して十分に再評価がなされているとはいいがたい傑作を今にして楽しめる幸せを味わいたいものです。笑いの内に、悲劇が象徴されているところこそがこの作品の味わい深い芸術性なのだから。
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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 知られざる名匠・アンソニー・マン、再評価へ!, 2011/9/10
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Bo-he-mian (神奈川県) - レビューをすべて見る
(トップ100レビュアー)   
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
レビュー対象商品: 神の小さな土地 [DVD] (DVD)
プア・ホワイトたちのしたたかな生き様よ。掘って、掘って、掘りまくれ!

アメリカ南部のジョージア州。貧しい農家の主、タイ・タイ(ロバート・ライアン)の農場は、巨大なアリジゴクが暴れまわったみたいに穴だらけ。彼は、祖父が埋めたと信じ込んでいる金を15年もの間、農業なんかそっちのけで堀り起こそうと躍起になっているのだ。次男のバック(「ハワイ5−0」のジャック・ロード!)の妻グリゼルダ(ティナ・ルイーズ)は、タイ・タイも舅自慢の美人嫁。しかし、グリゼルダは、長女のロザムンド(ヘレン・ウェストコット)の夫ウィル(アルド・レイ)とかつて恋人だった仲。実際ウィルは今もグリゼルダの事を愛していて、バックは、妻とウィルの仲をつねに疑っている。そして長男のジム(ランス・フラー)は金持ちに婿入りし一人裕福な暮らしぶり。何かと金の無心を求めてくる父を疎ましく思う一方、やっぱりグリゼルダに惹かれている。
「家族の絆」を何より大切に考える一方で、金の欲に取りつかれてしまっている家長。グリゼルダを巡る男たちの愛憎劇。町工場を閉鎖され、仕事を失った人々の葛藤など、「白人の貧困層」にスポットを当てつつも、たくましく、したたかに生きる南部人たちを活写した、エネルギッシュな人間ドラマだ。

1000万部を売ったアースキン・コールドウェルのベストセラーを映画化。貧困層を描いた映画というのは、とかく悲劇的なドラマになりがちだが、この映画は登場人物たちはとても人間臭く、一筋縄ではいかないキャラクターばかり。観ていて痛快なぐらいだ。
一家の長、タイ・タイを演じるロバート・ライアンがとにかく最高。真面目で寡黙なイメージを一掃するような熱演!実年齢よりもずっと老けた役ながら、欲と愛に忠実なキャラクターを活き活きと演じるさまは、もう彼の最高の演技ではないかと思ってしまう。「金を感知する能力がある」と信じられている(迷信です)アルビノ(白子)の若者を誘拐してきて、ダウジングをさせるシーンは爆笑もの。不思議にも、アルビノ君も「あっ、何か感じる!」とか言っちゃって走り回り、彼の後を一家がてんやわんやで農場中を追いかけまわすシーンはほとんどドタバタコメディー。
男好きの次女・ジル(フェイ・スペイン)にぞっこんの、小太りのアイスクリーム売りのプルート(バディ・ハケット)の愛嬌たっぷりのキャラクターも好感度抜群だ。ドロドロの愛憎劇も、このキャラクターのユーモラスな存在で楽しく中和してくれる。

皮肉と風刺を交えながらも、生のパワーに満ち溢れた見事な人間ドラマを演出したのは、『ウィンチェスター銃'73』『ララミーから来た男』など硬派な西部劇で知られる、アンソニー・マン。公開は1958年。そのエネルギッシュな演出に目を見張る。とにかくワンカット、ワンカットの構図のとり方、メリハリの利いたカット割り、本当に'50年代の映画だろうかと思ってしまうほど素晴らしい。南部の自然の風景を見事に捉えたロングショット。絶妙な人物配置のミドルショット。そして広角レンズで捉えた人物のクローズアップ(!)この時代に、顔のアップを広角レンズで狙うなどという撮り方をしている監督は他にオースン・ウェルズくらいではないだろうか・・・。セルジオ・レオーネは'50年代のアメリカ映画から多大な影響を受けているが、クローズ・アップを広角で撮るというアイディアは、実はアンソニー・マンの影響かもしれない。またひとつ、レオーネのルーツとなる監督を発見してしまった!
撮影は、『風と共に去りぬ』のアーネスト・ハラー。見事なカメラワークは、彼の功績も大きいはず。そして脚本のフィリップ・ヨーダンは、赤狩りで仕事を干された脚本家に自分の名前を貸して仕事を回していて、そういう役割を「フロント」と呼ぶという。この映画も、事実上はベン・マドウという脚本家の手になるらしい。
たった一つ、残念な事があるとすれば、パッケージに使われている写真のシーンがいつ出てくるか、楽しみにしながら観ていたのだが、そんなシーンは無かった(泣)。イメージカットって事なの?実は日本公開時のタイトルは『真昼の欲情』。こんな写真にそんなタイトルつけられたら、そりゃあ色々期待して・・・ウォッホン!しかし、それでもこの映画の素晴らしさは微塵も損なわれない、と言っておこう。

この時代、ハリウッドはとにかく信じられないほど保守的だった。現在の我々には理解できないようなささいな事が「不適切」とされて削除されたりしていたという。本DVDに収録されているのは、実は公開された事のない「検閲前」バージョン。特典で、公開時のラストシーンと見比べることができる。その「ちょっとした違い」でも、それが結構重要なのでは?と筆者は思う。まさにファンが待ち望んだ素晴らしいソフトである。
さあ、『神の小さな土地』を皮切りに、アンソニー・マン再評価の旅に出発だ!
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神の小さな土地 [DVD]
神の小さな土地 [DVD] 作成者 アンソニー・マン (DVD - 2006)
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