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16 人中、16人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
再見, 2005/12/11
煙るような汽船のシーンに始まり、テーブルの花、新聞に至る細部まで完璧に同調したヴィスコンティの映像世界と、マーラーの音楽が見るものを天上へと誘う。目と耳への最高の贈り物であるこの映画は、また比類なき残酷な映画でもある。老作曲家の顔から黒々と流れる染料の醜さと、少年の露を含んだ薔薇の花のような美しさを完膚無きまでに対比するヴィスコンティとは、なんと情け容赦のない芸術家であろうか。少年と作曲家の間に交わされる視線の意味と無意味。作曲家にとって今までの人生のすべてよりも重かろうその視線が、少年にとっては何の意味ももたない空虚さ。作曲家の死に至る精神の苦闘などわかろうはずもなく浜辺に立つ少年の姿は、己の美と若さを誇示するようにすらみえる。しかし、その美貌で一世一代の大役を射止めたアンドルセンももはや50に手が届く頃。時間のむごさと、その公平さをかみしめた20数年振りの再見。
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26 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
字幕一つにも配慮を・・・・, 2004/8/30
By カスタマー
既に市販のVHSビデオ、テレビ録画を持っていますが、待ち望んでいたDVD版が発売されたので購入しました。映画自体は紛れもない名作として差し支えないと思います。映画のストーリーから同性愛映画だとみなされる向きも多いようですが、そうではないと思います。美は芸術家の努力によって作り出されるものと信じてきた老作曲家が自然に生まれ出でた美の化身とも言うべきタジオに抗うことも出来ずに惹かれていく過程が映像でつづられています(アッシェンバッハが惹かれる対象が異性である美少女だったら単なる性愛の対象ということになるでしょうが、同性の美少年ということでタジオの性別も超越した「美」に惹きつけられているということがよりはっきり見て取れると思います)。 ただ、今回のDVD化で、これまでは字幕に出てこなかったタジオやその周りの人々の会話が出てくるのはどうかと思いました。 この映画の魅力はタジオのセリフが一切ないことにあったと思うのです。アッシェンバッハにとってタジオが触れることのかなわない遠い存在であること、その距離感が、タジオのセリフがなく、その外見以外にどんな少年なのか判断する手がかりが与えられないことによって観衆の我々にも伝わってくるのですから。これまでに他で既にこの作品を見ている人にとっては興味深いものでしょうが、初めて観るという方にはできることならタジオのセリフ字幕のないものを先に観ていただきたいと思います。
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知られざるもうひとつの原作, 2006/3/26
映画評論家を含めて、ほとんどの方がご存じないようなので、書かせていただきます。この映画の原作は、実はトーマス・マンの短編『ヴェニスに死す』だけではありません。同じトーマス・マンの長編『ファウスト博士』を読まないと、実はこの映画を十分に理解することはできないのです。この長編ファウスト博士の主人公は音楽家エイドリアン・レーヴェルキューンであり、芸術のために「悪魔との契約」を結びます。この契約は、娼婦ヘタエラ・エスメラルダからの梅毒の感染というかたちで実現します。結果としてレーヴェルキューンは12音音楽(シェーンベルクの音楽をモデルにしている)の創造にたどり着きます。ここまで書けば、気がつく方も多いと思います。娼婦の館を訪れるエピソード。12音音楽をめぐる音楽談義。そして何より、ヴェニスに主人公を運ぶ客船の名前がエスメラルダ号です。ちなみにトーマス・マンはレーヴェルキューンの生涯をニーチェを題材にして構築しています。梅毒、娼婦のエピソードはそこから採られています。ユダヤ人であったマーラーの音楽を使いながら、ドイツ精神の悲劇を描いた『ファウスト博士』を映画の中に描き込んだビスコンティの作家精神をこの映画から読み取るのも楽しみのひとつとなるでしょう。ぜひもうひとつの原作にも手を伸ばしてみてください。
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狂気と滅びの美学, 2006/8/20
これはすごい映画。美少年映画としては、身分があるおとなの男性が美少年に狂って破滅するという、森茉莉の小説のような世界が展開しているが、それだけではない。美が天からの授かりものなのか、自分の努力によって作り出すものなのか…なかなか結論を出しにくいところだ。しかし主人公の教授はひとりの少年との出会いによって、自分の努力して作り出してきた芸術をすべて否定されてしまう。少年は、努力なしに、美そのものとして存在したからだ。そして彼の美に教授は狂ったように執着し、ついには破滅してしまう。美そのものである少年と、少年の関心を得ようと醜く足掻く老教授。美醜を完璧に対比させ、ところどころに生老病死を喚起させる人やモノを挟むことで、誰しも滅びからは逃れられないこと、そして、それを知っているが故に芸術としての美を追い求めていく…そんなメッセージも読み取れてしまいそうな気がする。
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極限の孤独, 2006/9/20
マーチン・スコセッチや黒澤のように若い時、感性豊かな名作を創っておきながら、名声を手に入れ、年を取るにつれて酷い作品ばかりになる映画監督は多いが、このルキノ・ビスコンティ監督は全くの逆のケースで、人生の晩年になればなるほど凄みを増してくる。
これは彼が同性愛者としての苦しみがあったことにつきると思う。
人生の晩年に至るまで、満たされない孤独に心が支配されていたのだ。
この飢えた感情がなければ、いくら貴族出身とはいえ、これほどまでの名作は生み出せなかったと思う。
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ビスコンティの描く、情念の世界, 2004/2/26
ビスコンディ監督の恥美の世界が全編に漂う傑作だと思います。ベニスというある独特の地の中で、ポーランドから来た一家に出会い、そこでタジオという絶世の美少年に心を奪われる作曲家、アッシェンバッハ。陶酔しながらも、それでもその心の異常さに気付き、いったんは地を離れようとするもそれも叶わず、最後まで少年の虜となり、コレラに犯されそこで死すという、なんとも哀れとも言える話をひたすら美しく、そして人間の滑稽さも交えて描くこの作品は見るたびに残酷にも思えるのですが、それが又この映画の限りなき輝きになっている気がします。タジオ演じるアンドレセンの美はむろん絶品ですが、見る度にダーク・ボガートの演技に見惚れてしまう。すでに老いも見える彼が化粧までほどこして、タジオを追う哀れさ。彼の演じる主人公の一挙一動の演技そのものが芯となって、ますます画面のタジオに自分も魅せられてしまう。極めつけ、あのラストを見るにつけつくづくボガートは凄い役者だなと思わずにいられない。VHSビデオと、また昔テレビで放映した吹替え録画したのも所有しているが、DVD発売で大変に楽しみであります。
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名作です, 2008/5/11
この映画は恋の美しさを映した詩情豊かな名作中年男と美男子との恋物語 でも最後まで話た
りしない見つめ合ってるだけ そこが良い愛の尊さ男は恋を知り己の無力さ、未熟さを思い知る
実は僕も同じ経験をしたことがあるんですもの凄く好きな娘がいたけど結局話もしないまま
終わってしまった だからこの映画は僕にとって苦くも美しい想い出を蘇らせてくれる映画でもあります。
ラストの海のシーンの美しさ 息絶える男彼はベニスに死んだんじゃない恋に死んだんだ
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私はパゾリーニ派なのですが、この作品は好きです。, 2004/11/4
美少年ビョルン・アンドレセンの柳腰の彼にうっとり吐息をはきながら、化粧をして死んでゆく惨めな男の死に様を、世界のいったい他の誰がここまで気合を入れてとれるのでしょうか?徹底的に陰部を含む「肉体の真実」を追究したパゾリーニ監督をしても無理でしょう。肉体では説明がつかない作品なのです。最初は、荘厳な城塞や屋敷、貴族の生活や美しい衣装のおかげである意味、作品を難解にしてしまった印象でした。が、何度か観るうちに神経質なまでの、ビスコンティの男の嫉妬と愛憎がきちんと表現されていることにきずくはず、、
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ようやく正しいサイズでのソフト化に期待します, 2004/3/3
横長のスコープサイズを生かした撮影のすばらしさにとにかく引き込まれます。これを最初に劇場で見たときは中学2年の頃でしたが、ボキャブラリーが不足していたとはいえ、そのあまりの素晴らしさに正に表現する言葉すら失ったことを覚えています。衝撃的な芸術作品に出会ったときに表現する言葉も失うというのは、芸術というのは情念を感覚的に表現するという行為であるがゆえ、言葉という別の表現形態に移し替える行為の時点で、その芸術そのものが持つ情念のカオスが失われてしまうからなのだ、ということがその後、経験を積んでわかってくるようになりました。そういう意味でこの映画は正に少子にとっては正真正銘の純粋芸術映画ともいうべき作品で、芸術映画鑑賞の原点でもあります。だからこういう映画に対しては、なるべく解説を避けたほうがいいと思うし、評価はそれぞれの人の心の中にそっとしまっておいた方がいいのではないかと思ったりしていますが、優れた芸術であるがゆえに、少しでも多くの人に共有してもらいたい、という希望はあります。未見の方は、出来うるならば、大画面の劇場で、しかも少しでもプリントの状態がよいものでの鑑賞をお薦めしたいのですが、現在ではそれも難しいと思われますので、今回の高画質なDVD化、しかも国内で初めてのオリジナルスコープサイズでのソフト化は本当に大歓迎です。
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恋こそ命。, 2008/4/13
大学時代に何度となく観たお気に入りの映画の一つです。ビスコンティの映画の中では一番好きです。音楽家のマーラーを題材にしていると思われている方も多いのではないかと思いますが、原作者のトーマス・マンで、彼の自伝です。彼自身がベニスで上流ポーランド人家族に出会い、そのポーランド人家族は気味の悪い?オヤジ(トーマス・マン)に気づいていたそうですが、そこは上流階級の品、トーマスが死ぬまで公言しなかったようです。(結局暴露したんじゃん、と思いますけど。)それを正真正銘の貴族出のビスコンティが豪華絢爛かつ退廃たる映像美で映画化した訳です。(笑)さて、映画の方ですが、老齢で高名なアッシェンバッハ先生はドイツからベニスにバカンスに訪れ、そこで美少年タッジオに出会い、恋をしてしまう訳です。で、、コレラがはやり始めて、感染の危険を顧みず、罹っても尚、老いを隠すために化粧をしてストーカー一歩手前のような感じで、追い求める姿が、ある意味、美しくもあり、醜く、気持ち悪くもあり、とても痛い感じです。今まで正常に生活をし、家族も持ち、金も名誉も自分のものにした老人が、最後に同性の少年に恋をして、死も恐れず、それにのめり込んでいく。恋は盲目というように、恐らく、恋だけはなんともコントロール不可能な厄介な生きる証なのですね。(アランレネ監督の「二十四時間の情事(ヒロシマモナムール)」もそうでしたが、恋こそが命の炎が燃える唯一の存在であると。。。)そして、夏が終わる頃、アッシェンバッハ先生が最後に見たものは、、一度も言葉を交わすことのなかった少年の神々しいまでの美しい姿だったのです。映画に使われたマーラーの交響曲第5番の第4楽章アダージェットは、愛の歌で、映像美と相まって、ゆったりと、その心の美しさを際立たせてくれています。きっと、幸せな死だったのでしょうね。恋して死ねるなんて、なんて贅沢なのでしょう。そして美とは何かと、、人には創れないのではないかと、考えさせられます。美少年タッジオ役ビョルン・ヨーハン・アンドレセンは、ヨーロッパ全土でビスコンティがオーディションをして選ばれたそうで、その美しさは、アッシェンバッハの気持ちが分かる程です。ちなみに、その美少年はこの映画撮影後、映画には興味がないということで学校に戻っています。今更ながら言うのもなんですけど、傑作です。
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