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カスタマーレビュー

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時代劇のきちんと書ける方。
美しく抑制された筆力に、この方の余裕を感じます。
余裕から生まれる人を見つめるまなざしのやさしさ。
青山文平さんの描く男性は、そして、特に女性は、小説の中で素晴らしく生きています。
余計なものを足さない。青山さんの端正な文章も大きな魅力です。
上質のヘミングウェイの文体を彷彿とさせる、と申し上げたら的外れでしょうか?

超・五つ星です。
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2015年8月21日
一読して、非常にうまい書き手であると思いました。
簡潔な文で、すいすいと読ませ、江戸情緒を感じさせてくれます。
真偽はわかりませんが、江戸時代のことがらについて、リアリティを持って折りこまれています。

では、なぜ星が5つではなく、4つかと言うと、個人的な好みの問題になります。
本書の短編のいくつかで、女の強さ、しぶとさ、嫌な面が描かれています。
著者にしてみれば、
「どうだ、現実に、こんな女、いるだろう?」
ということなのかもしれません。
でも、私個人としては、現実の世界で、女の嫌な面を見ているからこそ、小説のなかでは、ファンタジーの女を読みたい、と思うのです。
それは理想化された、男にとって都合のよい女でしかないのかもしれませんが……。

なにはともあれ、時代小説のファンならば、一度読んでみて損のない本であることは確かです。
個人的な好みで言えば、最後からふたつめの「逢対」がお勧めです。
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2015年12月29日
非常に読みやすい短編集です。簡潔で気持ちよく読み進められました。
内容は恋い焦がれた女を妻にした男が裏切られ(?)、その様が友人の視点から描かれる話や様々な別れを繰り返した中年男と独身男の女性にまつわる話などの短編集といった趣。

様々な女性が現れるのですが、それぞれの行動にスポットはあてられず、それが逆に男性から見た女性の行動の不可解さや理解しがたさといった畏れを浮き彫りにしていると感じました。
女性の事情や事件の経緯はほとんど説明されないため、女性読者からは納得できない部分があるかもしれません。
総じて男から見た女性への不安や不可解さ、そして男の妙な達観と寂しさが表現されているような気がしました。
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2016年4月11日
一読、ユーモア時代小説の名手登場と感じました。
『つまをめとらば』は、幼馴染でともに隠居暮らしの武士ふたりが、それぞれに女性で苦労してきたことが、苦々しく、かつ噴きだすしかない滑稽さで描かれる。書き出しから結びまで、滑稽譚の語調も色調もいっさいないのに、可笑しくてしょうがない。
なるほどなあ、小説というのは、なんという豊かな表現形式なんだろうと感じ入ります。
『ひと夏』は一転して、若くてやる気満々の若い侍が主人公。天領の中に「飛び地」で自藩の領地があり、その支配を仰せ付けられたが…という一編。こちらも、解けない難問のような江戸時代の藩組織のありかた、武士も百姓も姑息でという人間のしがらみを描いて、笑いの生じようのない設定なのに、なんとも可笑しい。
主人公が奥山念流の目録という剣の名手で、あざやかにその手並みを発揮するという時代小説の王道場面もあります。
煮詰まってしまった文化・文政(1800年代前半、幕末期)のころの武家社会。身動きの取れない武家を尻目に町人文化は花ひらく。武家であれ町人であれ、女性のほうがはるかに緩やかに世の中を渡っている。
なんだか、煮詰まってしまった今の日本で元気なのは女性だけ、といった風潮と重ねて読んでしまいました。
ユーモアに満ちた時代小説の登場に、乾杯。
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2016年1月4日
良い本です。直木賞をとって欲しい。先の「鬼はもとより」では藩の財政を立て直す武士の厳しい世界でしたが、今回は江戸時代の武士と女房(または女)との凛とした関係が感じられます。太平の世となれば武士は合戦での死はありませんが、生きる目標が必要です。短い人生を生き抜くには、女にも覚悟があります。今の時代にはない夫婦の間合いが良いですね。六編の短編はどれも味があってお勧めです。たぶん若い人には向かないですが、人生を闘ってきたシニアには何か共感いただけるのでは。『つゆかせぎ』の女性の母性にには感服しました。
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2016年3月14日
この時代を見たら、今が見える。
青山先生の言った言葉です。
さすがに、読んでみてから、私もこう思いました。
自分の頭で考えて、読んでみてください。
各々、違った考えが浮かぶのではないでしょうか?
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2016年5月6日
読後感のすっきりした娯楽小説。ちょっと疲れた時、心の栄養に最適。
下級武士や生活の細かな説明は、リアリティの肉付けなっていて江戸時代しかありえないよねという物語に引き込まれる。
江戸時代考証に詳しい杉浦日向子は、「下級武士の妻にはなりたくない」とインタビューで言っていたと記憶するが、畑を耕すことから家事一切をこなさなくてはいけない妻、武士が職業として成り立たないながらたくさんの夫がいた時代。

いづれも一人称で描いているため、相手の心は説明されない。どの夫も思慮深く、妻には理由があり聡明である。
武士の規律のある人生観が、現代の日本人の在り方に繋がっているという歴史認識が、このところ散見されるが確かにそうなのかも。
一人語りによって、他人とは解りあえないという人生の前提と、それでもいささかでも理解でき寄り添えるという希望がある。

「逢対」の最後にはぐっときた。こんな思いをしたいものだ。
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2016年4月25日
六篇の短編の内、「ひともうらやむ」「つゆかせぎ」「つまをめとらば」の三篇は、「男」が「女たち」を理解できず、その逞しさに圧倒されている感じです。
これらの作品の語り手は男たちですが、物語の主人公は「男」の目を通した「女たち」です。
そこには、「男」の思いもよらぬ行動で「男」を戸惑わせる「女たち」がいます。
まるで、「女たち」はすべてを見通して、「男」を掌で弄んでいるようです。
でも、そこには「女たち」の優しさがあり、「男」への思いに溢れています。
そのために、「男」は「女たち」の思い通りに動かされている。そんな感じです。
時代は、江戸の文化文政の時代で、圧倒的に「男」の時代なのですが、実は「女たち」が操っていた時代なのかも知れません。
それは、同時に今の時代の男と女の関係を写し取っている様です。
その「現代性」にこそ、この本の魅力がある様に思います。
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2016年4月24日
タイトルと表紙の絵から一人の武士の婚姻前後の物語かと思ったがそうではなく、「ひともうらやむ」から始まる6つの短編集であった。しかし、どの物語も情緒にあふれ、登場人物や背景の描写も細やかで細部までよく練られており、冒頭から作品の世界に引き込まれた。武家の世も今と変わらぬ男女の人生の葛藤があったのだと想像させた。1冊6編とも緩みが無く、大きな余韻が残った。最後の「つまをめとらば」の編を開くときには、それまでの次が読みたいと言う思いから、読み終えたくない、もう少し長くこの世界を味わいたいという思いに変わっていった。読み終えて更にその思いが強くなった。私の中で大切な一冊となった。
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2016年2月28日
深い。実に奥深い。
忠義な男たちの弱さに必要なのは、ふつうに生きる妻の強さ。
人生経験豊かな著者にしか表現できない世界だ。
時代小説の新旗手が贈る傑作武家小説集。
揺れる男心は、現代の男の心にも響く。

明治の歌人与謝野鉄幹作「人を恋うる歌」
を引き合いに出しているのだろうか?
「男は理想と情熱を持って生きなさい」という応援歌詞。

その中で、16節ある詩の始めの1節。
『妻を めとらば 才たけて みめ美わしく情けある』

「嫁にするならば、賢くて見た目が美しくて優しい心根のある女性がよい」
という意味。

果たして、現実はどうか?
表題作を含む六篇の短編集の時代小説。
「ひともうらやむ」「つゆかせぎ」「乳付」「ひと夏」
「逢対」「つまをめとらば」

見た目云々、賢さ云々。
惚れてしまった夫側の奮闘ぶりが、のんびりした流れで進み、
微笑ましく、一気読みさせてしまう。

主人公たちは、いずれも太平の江戸時代のさ中にいる下級武士たち。
忠義に生きる彼らであるが、お役目が無い。
慎ましく生きる彼らの平凡な生活。
そんな生活の中にあって、人それぞれの思いがあり、
その中心となる夫と妻の関係も、人それぞれである。

けれど、主人公たちは、男らしさの中に健気に感じる面があり、
対して、男から見た、ふつうに生きる女たちの妻としての強さを感じる。

美味しくもない味噌を買ってしまう男どもの馬鹿さ加減も愛嬌。
忠義な男ゆえに、嫉妬、疑心という毒を持ち合わせる。
それらが生きる糧にもなる。

忠義過ぎる友にお役目を譲り、身分が違う女と生きていこうとした男の潔さ。
「つまをめとると」男のほうこそ、ぞっこんなのだ。

第154回直木賞受賞作
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