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カスタマーレビュー

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2009年9月8日
久しぶりに「面白すぎる本に出会った」という感想を持たせてくれる本に出会った、というのが読後の正直な感想です。

私は哲学や論理学については素人ですが、この本はそのような素人であっても、グイグイと引き込まれていく、非常な読みやすさを持っています。なぜそうなのか考えてみると、以下のような特徴があると思いました。

1) 分からない人の存在を前提に書いている
 とかく専門書に頻出しがちな横文字や専門用語の説明無しの使用は、この本では皆無と言えます。なぜなら、架空のシンポジウムを文字おこしした本として書かれており、素人の会社員や運動選手などといった、普通の人が「分かりません!」とすぐに突っ込みを入れ、「では分かりやすくご説明しましょう」と、すぐに説明が続くからです。それでも、「分かりやすくと言いつつ、実際には分からない」ということが他の本では多いのですが、この本に限ってはそのような心配は無用です。

2) 問題の提示の仕方が生活に密着した題材として出されるため常に現実感がある
 とかく哲学というものは、素人から見ると、およそ生活とはかけ離れた絵空事、という風に感じがちです。それは、問題設定が自分の生活の領域とかけ離れているからだと思います。この本はそうではなく、常に「私たち一般人の現実」を議論の出発点にしています。そのため、哲学や論理学とは、実は自分の生活に非常に大きな位置を占めているのだ、ということが良く分かるようになっています。生活に役立つ本、人生を豊かにさせてくれる本。著者はおそらくそう言うことを目指して書いたのではないかということが、読んでいて良く伝わってくるのです。

他にも色々、良い所はあるのですが、私にとってはこの二点だけでも、読むに値すると思います。ぜひお読み下さい。おすすめします!
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「理性の最後の一歩は、理性を超える事物が無限にあるということを認めること」(パスカル)

ここまで面白い本だとは思わなかった。時々頭をフル回転させながら読んだ。本書では以下の3つの限界という視点から、理性の限界に迫っている。
・選択の限界(社会科学の限界):アロウの不可能性原理
・科学の限界(自然科学の限界):ハイゼンベルクの不確定性原理
・知識の限界(形式科学の限界):ゲーデルの不完全性定理

著者は論理学と哲学の専門家。難解なテーマを、実に楽しく、そして興味深く解説することに成功している。ポイントのひとつは架空の対話形式になっている点だろう。会社員、大学生A、科学者、運動選手、カント主義者、映像評論家、国際政治学者他、著者自身も「何人登場させたか自分でも覚えていない」という多彩な人物たちの、ある意味で適当な登場加減が結果的にいい味を出している。知的な刺激を存分に楽しむことができた。
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2010年5月1日
全体の構成は他の方が書いているので、「知識の限界」についてだけ。
著者がぬきうちテストのパラドックスと不完全性定理を本書以前に書いたものに、
ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)(99年8月)と
パラドックス!(共著、2000年7月)があります。
後者は本書とほぼ同じ構成です。

それはともかく、相互言及のパラドックスでの解決はやっぱり納得できません。
月から金までの間にぬきうちテストをするとして、テストをしないまま木曜日が
過ぎたら、普通はこの時点で「ぬきうち」が不可能になると考えるでしょう。
一方で、逆算で考えていくと月曜日でも「ぬきうち」にならないと言われると、
納得できる人はあまりいないと思います。

しかし、相互言及のパラドックスでの解決は、月曜日の時点で「ぬきうち」ではない
と言える一方で、金曜日には「ぬきうち」にならないと考えている生徒には金曜日
に「ぬきうち」が成り立つことが前提になります。私はこの前提に納得がいきません。
私はぬきうちテストの言明は、「100mを8秒台で走る」と言うのと同じ不可能な
言明であり、ある時点でその不可能が判明するに過ぎないのではないかとも考えて
います。

私がなぜこのような評を書いたのかというと、さわりだけを書いたこの本に納得しすぎ
ている評があまりにも多いことに違和感があったからです。
自分で納得するまで考えてみれば、この本では物足りないと感じるはずです。
それがこの本の狙いであり、末尾に参考文献を多く載せた理由ではないかと思います。
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2008年9月26日
最初に、この本は日本人が書くものとしては、
異例に多くの哲学的、科学的な分野に関連しており、
かつ私がこれまでに読んだ本の中で
最も素晴らしく平易でわかりやすいプレゼンテーションをしている点で最高である。

著者は1、論理的なゲーデルの不完全性について造詣が深く、
著名な論理学者であるスマリヤンの翻訳も手がけている。
しかし、2、本書では社会科学的な民主主義の決定不可能性、
さらに3、量子力学的な不確定性、ならびに科学理論の相対主義、
などについても筆をすすめ、3部が一体となって素晴らしい入門書となっているのだ。

社会科学では、アローによる不可能性定理が有名だが、
これは一言でいえば、
「民主主義における決定方法では、推移律その他の
常識的に望ましいと思われる性質のすべてを満たせない」ほどのものだ。
これは「決め方の原理」などの有名な本も参照にすればわかりやすいかもしれない。
ついで、現代社会科学の基礎である、ゲーム理論とナッシュ均衡が説明される。

量子力学では、物体の位置と運動量を完全に知ることはできないという
ハイゼンベルクの不確定性が有名だが、そういった古典解釈を超えて、
量子力学の意味する相補性から生じる情報伝達のEPR矛盾、
さらには多世界解釈が説明される。
同時に科学という試みのもつ客観性についても、ポパーからクーン、
ファイヤーアーベントへと続く論争が解説される。

ゲーデルの不完全性定理については、よく知られた形では、
「この文章は間違っている」というような自己言及を許すような形式システム、
(これは数学体系を含めて、実質的にほとんどすべての論理体系のこと)では、
決定不能な命題が存在することを意味している。
これももっと詳しくは類書を読めばいいのだろうが、それをチャイティンの定理など
もっと新しい発見とともに論理学の限界として提示している点が新しい。

しかし、この本の素晴らしさは、これらの人間理性の限界がそれぞれ独立しているのではなく、
まさに量子的な「絡み合った状態」にあることを、興味深く示唆している点だろう。

特に、ナッシュ均衡の持つ合理性、つまり、相手の行動の予見を無限に繰り返すという
人間の信念の体系における無矛盾性と
タルスキー、スマリヤン的な、論理体系の持つ不可避的な矛盾性などとの関係を
論じている点は素晴らしい。
これはもう、単なる啓もう書ではなく、学問書に昇華し得る指摘であると思う。

私は科学的な知識というのは、今後も無限に進歩し続けると信じる素朴科学主義者だが、
理性的な企ての持つ根本的な矛盾を考えさせられる点で、
また、できれば私自身がいつか書いてみたいと思っていたという意味で、
すべての人にお勧めできる出色の書籍だ。
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VINEメンバー2010年12月13日
同じ講談社現代新書の『ゲーデルの哲学』を読んで、とっても難しかったんだけど、もっとこの人の本を読みたいと思って、こちらの本も読んでみた。

内容は前作『ゲーデルの哲学』と続いていて、やはり、そちらから読んだ方が、内容は理解しやすいかもしれないが、読んでなくても、読みやすいと思う。

というのも、この本の体裁が、理性の限界とは何かということを、さまざまな立場の架空の人物を登場させて、シンポジウムを開催し、論理的なディベートを行わせるというもので、その登場人物の口を借りて、難しい概念や引っ掛かりそうなところ、疑問に思うようなところを説明してくれるからだ。

私自身は、決してこの本の内容を理解できたとは、口が裂けても言うつもりはないけれど、第1章の「選択の限界」では民主主義における多数決の問題、第2章 「科学の限界」では科学と宗教の問題、そして第3章 「知識の限界」では、論理的な思考の限界を越えようとする人間の知恵といった問題をさまざまな立場から、筋道の通った議論を通じて、理解しやすいように工夫されていて、分からないなりにも楽しく読むことができた。

たまには、こういう頭を使う本を読むのもいいね。
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震災を踏まえて本書を読んだ。

 今回の震災で最も良く使われる言葉に「想定」がある。「想定外だった」という言い訳があり、「想定内であるべきだった」という反論だが、両者に共通している事は「想定」自体は基本的には可能であるという点だ。

「想定外」という意味は「ある一定の与件」の元での「想定」というものが有り、その与件を超えたから問題が起きたという事だ。従い与件自体が間違っていたからしょうがないというロジックになる。与件の不備に関しては国の基準の不備という流れになっていく。

 一方「想定内であるべきだ」という論理は、その与件自体が本来想定可能でありながら、それを怠った為に災害が起こったというものだ。

 この二つの議論は不毛ながらも 噛み合っているように見えるのは両者が「人間は想定しうる」という点では一致している点にある。

 それに対して本書は「そもそも人間の想定力には限界がある」という問題提起をしているように読んだ。本書で展開される様々な不可能性・不確定性・不完全性を読んでいる内に、今の原発事故を巡る議論に違和感を覚えた。「人間には想定など不可能だ」という前提に立ったとしたら、与件云々といった有る意味では矮小された議論ではなく、「原子力を平和利用する能力が人間にあるのか」という方向性の議論がもう少し大きくなされるべきではないか。

 一方、「想定には限界がある」という議論が無力感に向かうことも本書の真意ではないだろう。

本書に登場する歴史上の人は限りない能力と情熱で「能力に限界がある」ということに挑んできた人たちだ。彼らには「限界があること」は見えていても、「限界地点」に関しては、出来るだけ遠くにそれを置こうとしてきているように読めた。

 では、それを震災に引きつけてどう読めば良いのか。

 作者は260−261頁で「感受性」を訴えている。何かに驚きや感動を覚える事の大切さを説いている。これは、そのまま今回の原子力関係者に投げることが出来る強い言葉だ。彼らが無表情で繰り返す「想定」という言葉の中から「欠けている感受性」が見えて来ていないだろうか。「想定できないもの」が外部からやってくるという感受性を忘れてはいなかったろうか。

 以上が読後感だ。著者が意図した読み方と全く違うと僕は思う。しかし、今置かれた環境下で読んだことでそうなったということだ。優れた書物には各々の時代に応じて様々な読まれ方がある。難しい一冊ではあったが、大変勉強になった。
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2011年12月25日
限界という言葉の前に、著者の高橋昌一郎氏は「永遠に超えられない」の修飾語を置いている。人類の現在の到達点ではなく時間座標に独立な障壁の意味である。本書は選択、科学、知識の限界の例として、アローの不可能性定理、ハイゼンベルクの不確定性原理、クルト・ゲーデルの不完全性定理を挙げる。

ハイゼンベルクの不確定性原理は量子力学を習った人なら知らない人はいないだろう。教養課程向けの(つまり通俗科学書を除いて一番易しい)量子力学の教科書にも必ず載っている。それが科学の限界と言われれば首を傾げる人は多いのでないだろうか。小生もそうである。それで物理の理論が暗礁に乗り上げた訳ではない。実験が続けられないことも全くない。座標と運動量の不確定性の積、あるいは時間とエネルギーの不確定性の積がある定数の程度より小さくならないというのがこの原理であるが、限界どころか間接遷移型の発光ダイオードはまさにその恩恵である。ベクトル量である運動量はごまかしがきかないが、この原理のお蔭で反応の前後の収支が合わなくても良いのである。

ゲーデルの不完全性定理は何故か理科系よりも文科系の学生に有名である。ある程度の算術が行える系が無矛盾ならその中に真偽を証明できない命題が存在する。当然すべての命題が証明不可能な訳ではない。限界というより「ここに落とし穴がある」という注意である。それに気付いたことは数学の進歩である。研究が止まった訳ではない。従って限界ではない。

アローの名は本書で初めて知った。しかし定理の説明はない。コンドルセの逆理やボルダの順位点の話が中心である。理科系の読者には自明で新鮮味が少ないだろう。ナッシュも取り上げるが人物像ばかりで肝心の均衡の説明がない。本書はフォン・ノイマンとモルゲンシュテルンの著書を参考文献に挙げている。数学に相当自信のある人が余暇にゲーム理論の発達史という興味から取り組むべき本である。著者の高橋昌一郎氏は読んだ上で参考文献に挙げているのだろうか。

本書は”no one understands quantum mechanics”というFeynmanの言葉を引用しているが、それは現時点での哲学的理解の意味である。量子力学は使えてもその意味を人類はまだ知らない。しかしニュートン力学を哲学的に理解している人も一人もいないのだ。ニュートンの力学は日常的に観測する事実に合致する。それと理解とは違う。哲学者は重力の根源を何故問題にしないのか不思議である。量子力学も何故そうなるのか分からなくとも使えはする。科学者はどちらも問題にしない。今分かる必要がないからだ。科学の発展を待つしかない。人生は有限だ。解けない問題に取り組むのは悲劇である。

高橋昌一郎氏は「おわりに」で「相対論と量子力学の解説については心配な面もあったので」第二章を松田卓也氏に読んでもらったと記している。松田氏と言えば相対性理論は間違っている等の通俗科学書を本気で批判していた稀有な科学者である。物理学会誌に批判記事を寄稿していたのを覚えている。しかしそれにしては物理や数学のおかしな記述が何箇所かあった。英文を誤訳したような表現もあった。松田氏は徹底的に直しては高橋昌一郎氏のオリジナリティが失われると考えたのだろうか。

相対論を哲学者が議論するのは良いがまずは相対論を理解してほしい。ある物理学者の言葉である。名は伏せるが某大学の教授を経験した方である。哲学は諸学の王と西洋で言われた。アリストテレスの時代は数学も天文学も生物学も哲学の領域であった。科学者が哲学者を兼ねていたのはデカルトやパスカルの頃までだろうか。アメリカの記号論の創始者のパースを加えても良いかもしれない。しかしアラン・ソーカルの事件を引くまでもなく何時の間にか科学を理解しない者が科学の哲学を語るようになってしまった。本書を読んで感じたのは哲学の限界である。数学や物理の成果を知るだけなら一般向けの解説書でも可能である。しかしその成果の意味を知るには専門書から学ばなくてはならない。その学問の哲学的解釈を目指すなら尚更である。

本書は文科系の学者が数学や自然科学の本質を理解しないまま解説書の結論だけを誤解して読者に提示したという印象である。
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2016年3月9日
司会者の挨拶から始まって、学者~学生から会社員~運動選手など、一般の方々を含めた幅広い層の相互理解を目的とした討論会・・・というスタイルをとっています。
本文は「選択の限界」「科学の限界」「知識の限界」に分かれ、各章にて様々な実験や実例を取り上げており、抽象的な理論ではなく具体的にイメージがわいてくるような構成でディベートが進んでいきます。
各章とも、安っぽい新書なら内容を水増ししてそれぞれ一冊の本になりそうなくらい、しっかりとした内容です。
自分のような理系だと「不確定性」と見た途端に「=ハイゼンベルグ」しか思い浮かびませんが、通して教科書的な数学を使った記述は一切無く、各種科学実験や心理学的実験の結果考察においても表やデータを使わずにこれだけ話を進められるというのは、はっきり言って目からウロコが落ちるようでした。
今まで哲学に親しんでこなかった方に是非おすすめしたい一冊です。
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2015年7月4日
 「『アロウの不可能性定理』と『ハイゼンベルクの不確定性原理』と『ゲーデルの不完全性定理』をまとめて『理性の限界』を探究(p.264)」しようとする書。順に「選択の限界」「科学の限界」「知識の限界」と題された3章で、それぞれ社会科学・自然科学・形式科学(論理学・数学など)の多岐に及ぶ話題が提供されているが、学生・研究者・社会人らの集うシンポジウムでの会話の形で叙述されており、すらすら読める。「読者に知的刺激を味わっていただく (p.264)」という著者の目的は達せられていると思う。
 第1・2章に比べて、第3章が手強いのは著者の専門領域だからか私の理解力の問題か。
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ものはどう考えればいいか、その筋道に誤謬はないか、見落としはないか。
次に挙げる項目が知りたい人は読んだほうが良い。

・囚人のジレンマ
・コンドルセのパラドックス
・ボルダのパラドックス
・アロウの不確実性定理
・パウロスの全員当選モデル
・ミニマックス理論
・ナッシュ均衡
・シュレーディンガーの猫
・抜き打ちテストのパラドックス

ところで、本書によれば、
完全民主主義が不可能であることは、すでに数学的に証明されている。そうである。
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