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5 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 文章というアート, 2005/3/6
レビュー対象商品: 小説集 夏の花 (岩波文庫) (文庫)
 文才というものは、一朝一夕で身につくものではないが、勤勉な者ならあるいは、文才と呼ぶ力の、幾らかは身につくのかも知れない。それでもなお、天才と呼ばれる者は厳然としているわけで、そのセンスには、個人の強烈な体験や、先天的なものが見え隠れしている。
 原爆の文学と呼ばれ続けたこの作品は、他の作家では見ることのできない、異常な緊張を伴う文章で書かれている。表現力が人に見せる世界とはいかなるものか。あなたに備わっている常識が、一行一行破壊されていく感覚は、日常では得られないもの。わずかに残る人の理性が、それを更に強烈なものに変える。壊れかかった精神の行く先は、あなたの目と感性で追ってください。
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5つ星のうち 5.0 詩人が背負った重い運命, 2012/3/8
レビュー対象商品: 小説集 夏の花 (岩波文庫) (文庫)
原爆体験を綴った作品ということでおどろおどろしいものという先入観があったが、文章がことのほか詩的なので驚いた。

言葉の用法が的確で揺るぎがなく、全く振れがない。ジグソーパズルの全てのピースがパチンとはまった感じで、一枚の地獄絵が出来上がっているような完成度である。

原民喜氏が詩人であったということが作品に抑制された詩的なリズムを与え、読者を作品世界に引き込んでいく求心力を与えているのであろう。一字たりとも無駄な言葉がない。緊密に結びついた言葉で書かれた作品群である。

『夏の花』
まさに原爆投下時の様子と厠にいて助かった作者の悪夢の記録。

『廃墟から』
被爆後の作者と周辺の人々の描写。

『壊滅の序曲』
8月6日以前の作者の実家の縫製工場の戦時下の話。広島は危険だと騒ぎながら疎開しなかったところにあの悲劇が降りかかる。

『小さな村』
広島から20キロ離れた農村での生活。

『昔の店』
幸福だった少年時代の記憶と迫り来る戦争への不安。少年時代に竣工した物産陳列館(原爆ドーム)の記述が興味をそそる。

『氷花』
東京に転出して母校に教職を求めたり文学に活路を見出そうと模索する作者の苦悩。

わずか200頁の本だが、重く心に響く、20世紀の偉大な記録である。
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5つ星のうち 5.0 透明な記憶, 2013/3/17
レビュー対象商品: 小説集 夏の花 (岩波文庫) (文庫)
 広島被爆の惨状を書きつつも、余計な建て前とかは入れずに、冷たい目で描写に徹しているため、ものすごくきれいな、澄み切った文学作品になっているように思える。
 人の生が汚いところがあれば、死もまた往々にして汚い。
 もしきれいな死がかつてあったならそれは伝説のようになるだろう。もちろん広島や長崎の死がきれいなわけがない。ただ作者はそれを願って、言うなれば浄化された記憶を作りたかったのかもしれない。あるいは作者は全然そんなことは願わず、われわれの通俗的な意識がそれを生み出しているのかもしれない。
 人間の死生観はいろんな場合において千変万化するのである。そのたんびに後悔するしかないのかもと思ったりした。
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小説集 夏の花 (岩波文庫)
小説集 夏の花 (岩波文庫) 作成者 原 民喜 (文庫 - 1988/6/16)
¥ 630
在庫あり
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