「音」と「音楽」の はざまに揺れるアルバムだ。
「音楽」とは「音を楽しむ」という意味であるとしたら このアルバムこそがそうかもしれない。聴いているものが 音楽というべきなのか それとも音というべきなのか。絶えず それを考えながら聴いた。これは稀有な体験である。本作の 大半の曲に関して それの楽譜すら想像出来ない。もしかしたら 楽譜には 坂本が書いた「絵」だけあるのではないか。
そんな気がした。
考えて見ると 「音」を楽しむのが僕らだ。風鈴、鹿おどし、花火等 音を愛でる文化をそもそも持っている。これは日本だけではあるまい。例えばロシアの映画「惑星ソラリス」でも宇宙船の通風口に紙で作ったすだれを掛けて 音を楽しむという忘れ難い場面もある。また 雨の音への愛着も 日本以外でもあるような気がする。
そんな「音」への愛着に対して「音楽」から迫ったのが 本作ではあるまいか。
このアルバムから聞こえてくる「音」は 妙に懐かしく 安らぎを覚えるものがあった。
坂本が 掬いあげてきた「音」の中には 自分の原点に迫るものがあるのではないだろうか?
そんなことを絶えず考えながら聴いた一枚である。繰り返すが 僕にとって稀有な体験となった。