内容は、バフェットとともに全米長者番付に名を連ねた初代と、運用実績ではピーター・リンチと肩を並べた2代目デービスの話を中心に描かれている。お金持ちに共通する倹約精神と、時代の先を見通す鋭い視点、そして戦後の日本に赴いたほどの研究熱心な姿勢…。読めば読むほど、並外れた親子の才覚、そして行動力が浮き彫りになってくる。
市場が右肩上がりの時にバイ・アンド・ホールドで財を成した数多くの投資家の本と違い、興味深いのは、デービス家が1929年の大暴落も含め、数多くの苦境を乗り越えて財を成したという事実である。読者は、彼らが保険株や復興期の日本株、そしてバフェットやピーター・リンチも投資していた超優良企業に次々と投資していた事実にきっと驚くことだろう。
モルガン・スタンレーのバイロン・R・ウィーンが推薦の辞で述べているように、本書には物語とハウツー、2冊分の価値がある。伝説のファンドマネジャー、ピーター・リンチによる序文も、本書の優れた内容に花を添えている。(土井英司)
デービス一族の物語は、いわば過去半世紀にわたるウォール街の物語である。ジョ ン・ロスチャイルドは圧倒的な筆力によって、成功を収めながら世に知られていない アメリカ屈指の投資家一族の活躍とともに、その舞台となったウォール街の変わりゆ く顔をそれぞれの時代背景の中に見事に描いた。
デービス家三代――第一世代シェルビー・カロム・デービス、息子シェルビー、孫 のクリスとアンドリュー――が読者をウォール街の峡谷にいざなう。投資への情熱を 持ち続ける彼らは、「妥当価格の成長株」という投資哲学を貫き、常に市場平均を上 回る運用成績を残した。
シェルビー・カロム・デービスはイリノイ州ペオリアの中流家庭に生まれ、金融よ り歴史に興味を持っていた。そんな彼の人生が大きく変わったのは、38歳のときだっ た。1947年、彼はニューヨーク州保険局の要職を辞め、妻の持参金5万ドルを元手に 投資の世界に飛び込む。1940年代末はダウが180ドル辺りをうろつき、保険株にはだれ も見向きもしない時期だったが、デービスは自分が一番よく知っている業界に狙いを 定め、保険株のありふれたポートフォリオから王朝を築いた。
証明された戦略と倹約精神を武器に、デービスは1950年代の戦後の上げ相場から 1980年代の華々しい相場を経て莫大な富を蓄積した。彼は将来の世代に自分の経験を 伝えたが、9億ドル近い信託財産は保守的な目的のために残し、子孫には自力で王朝 を維持するよう仕向けた。
息子のシェルビー・デービスは株高に沸いた1960年代にウォール街に挑んだ。彼は 小さな投資会社を始め、誕生したばかりのニューヨーク・ベンチャー・ファンドの経 営権を握った。同ファンドは彼が運用を担当してから28年のうち、22回も市場平均を 上回る成績を残している。インフレが高進した1970年代の市場を航海するのは至難の 業だったが、シェルビーは無傷で切り抜けた。孫のアンドリューとクリスは1990年代 を通じてデービス王朝のかじを取り、新世紀になっても最前線で活躍している。彼ら はデービス家の洗練された投資戦略を駆使してウォール街に挑み、一族の名を冠した 転換社債や不動産などのファンドを運用している。
市場は変化するかもしれないが、投資の極意は変わらない。デービス家は、「複利 装置」――投資金を何倍にもしてくれる可能性がある会社――に対する信念と、長期 投資は生涯続くとの考えに基づき、2回の長い上げ相場、2回の大幅な下げ相場、7 回の緩やかな下げ相場、1回の大暴落、25回の調整を乗り越えてきた。
本書でジョン・ロスチャイルドは、デービス家、彼らの投資哲学、そしてウォール 街を歴史的かつ文学的な語り口で紹介している。情報量の多さもさることながら、読 み物としても面白く、人物描写の妙につい引き込まれてしまう。アメリカで最も成功 した投資家一族とともにウォール街を旅する一生一度のこの機会を生かし、王朝がど のようにして築かれたかじっくり見てほしい。
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