まず、インターネットの環境をWWW、Eメール、ディスカッション・フォーラム、チャット、MUD(Multiuser Dungeon)などの7つに分類して、そこで個人の印象がどのように形成され、操作されるかを検証している。さらに「役割演技」や「アイデンティティー実験」などの行動に着目し、その心理を分析している。
次に検証されている「集団力学」や「攻撃性」では、人格をがらりと変えてしまうネット空間の力というものに驚かされる。個人をグループに過度に同調させたり、すぐに激昂して理性を失わせるといった行動の背景には、ネット空間の匿名性や社会的制約のなさ、アクセスの遅延からくるフラストレーションなどの心理が働いているという。
対人関係の構築や他者の支援といった肯定的側面もあげているが、「オンライン行動」そのもののマイナス面(時間泥棒、孤独感や抑うつ状態を招く)が強く、心理学から見たネット空間は、総じて不健全なものになっているという。
インターネットが新しい可能性の場である、という指摘はよく聞かれるが、人間行動への影響を本格的に論じたものは少ない。その点で、既存の学問の視点からネット空間の問題を平易に解き明かした本書の意義は大きい。(棚上 勉)
(日経パソコン 2001/10/15 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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