ダン・タイ・ソンは1958年ハノイ生まれ。母親はハノイ音楽院ピアノ科の主任教授、父親は詩人。ベトナム戦争下に少年時代を過ごした後、モスクワ音楽院へ留学。1980年にショパン・コンクールで優勝した。本書の前半は、ここまでを、ほぼ時間をさかのぼるかたちでつづっている。戦火を避けての疎開中、ピアノがないので紙の鍵盤で練習したという逸話は、彼の育った場所と時代をひとことで教えてくれる。モスクワ音楽院では、欧米以外からの留学生が地元のエリート組から無視されていたという話も印象的だ。ダン・タイ・ソンはその中から、不屈の闘志で実力を磨いていった。
後半は、教師や友人のピアニスト、尊敬する音楽家についての思い出などが語られる。また、ショパンの音楽やルバートについての考え方などが話題となり、彼の音楽性にふれる部分が多くなる。といっても、難しい音楽論などではなく、あくまで一般読者向けの内容だ。(松本泰樹)
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