日本では、ディーゼル車に「大気汚染の元凶」というイメージが定着した。
ところが、欧州は状況が180度異なる。燃費に優れ、二酸化炭素(CO2)排出削減につながる環境配慮型の自動車というイメージが強い。フランスでは自動車販売台数の6割がディーゼル車だ。
本書は、ディーゼル車のイメージの開きが、日本と欧州でなぜここまで大きくなったかを糸口に、ディーゼル車が本来備える長所を浮き彫りにしている。
共著者の3人は、ディーゼルエンジンの研究者、海外のレース参加もあるモータージャーナリスト、地域循環や分散型のエネルギー活用に関心を持つ研究者と多彩だ。それぞれの専門性と個性がうまくかみ合い、過去、現在、そして将来まで見渡したディーゼルエンジンの位置づけを多面的に記述している。
日本では、70年代から光化学スモッグの原因物質となる窒素酸化物(NOx)削減を重視した規制が進んだ。NOxの排出量と相反する関係にある粒子状物質(PM)の排出量を厳しく規制してこなかった。規制のバランスを欠いていたことが、ディーゼル車の欠点を看過し、増幅させることにつながってしまった。
本書は、ディーゼル車がこうした汚名を払拭して攻めに打って出る時を迎えたと指摘する。NOxとPMを同時に削減できる排出ガス処理装置が登場し、その前提となる低硫黄軽油の供給が進み始めた。さらに、燃焼条件をち密に制御して排出ガスをさらに浄化できる高圧の燃料噴射装置が採用され始めた。ガソリン車に匹敵する優れた排出ガス浄化技術を手に入れたという。
ディーゼルの課題だった排出ガス問題をクリアできれば、長所が際立ってくる。ディーゼル車の燃費のよさは、運輸部門のCO2削減が迫られる今こそ重要だ。
さらに、ガソリン車に比べ、ディーゼル車は燃料の性状に幅を持たせやすい。燃料電池車用の水素供給ステーションで水素発生源に用いるDME(ジメチルエーテル)などもディーゼル燃料として活用できる。水素社会に段階的に転換するために、燃料電池車とディーゼル車を両輪で普及させるべきと提案する。
燃料電池車などの将来技術に着目するだけでなく、足元の技術を見直して現実的な環境対策を探る重要さを再認識させられる一冊でもある。
(日経エコロジー 2004/07/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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