大反響を呼んだというこのドキュメントのおもしろさの一端は、山田の個性にあろう。工場診断の初日、山田は工場側の応接や案内の段取りを尻目に製品の出荷場に直行。製品の出荷数を把握していない責任者を厳しく問いつめ、さらに生産ラインの逆をたどり、仕掛かり品のムダを次々と指摘していく。「台風」と形容される山田の診断の様子が、鮮やかに描かれている。
けっきょく工場はコンベアーを撤去し、全工程を1人で担う「一人屋台生産方式」を導入。生産性の大幅アップや工員の意欲向上などを実現させている。山田が目指したのは、作りすぎの在庫をもたない経営。その手法の真髄やこれまでの工場改革の実績などは、第2部で自身の筆によりまとめられている。
ドキュメントの根底にあるのは、海外への工場移転、地域の雇用悪化、モノづくりの現場の意欲低下など、製造業や日本経済全体が直面する問題である。取材者である著者はそれらのテーマを丹念に掘り下げていて、単なる番組の再録ではない読みごたえのある1冊にしている。何よりも、人件費の安い中国に真っ向から挑み、今後の日本のモノづくりのあり方まで提示する山田の思想は圧巻である。(棚上 勉)
例えば、著者の一人、山田氏は、三洋電機の子会社、鳥取三洋電機にコンサルタントとして乗り込み、ベルトコンベヤーを無理やり撤去し、従来の生産ラインをズタズタにするという荒療治を施した。従業員は戸惑い、反発もしたが、次第に新しいやり方の長所を認め、やがて劇的に生産性を向上させていった。
このように、従来のものづくりの常識を打ち破り、工場を生き返らせたケースを数多く紹介しているので、メーカーの経営者なら一読の価値があるはずだ。
(ノンフィクション作家 野口均)
(日経ベンチャー 2002/02/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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