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外套・鼻 (岩波文庫)
 
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外套・鼻 (岩波文庫) (文庫)

ゴーゴリ (著), 平井 肇 (翻訳)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

ある日、鼻が顔から抜け出してひとり歩きを始めた…写実主義的筆致で描かれる奇妙きてれつなナンセンス譚『鼻』。運命と人に辱められる一人の貧しき下級官吏への限りなき憐憫の情に満ちた『外套』。ゴーゴリ(1809‐1852)の名翻訳者として知られる平井肇(1896‐1946)の訳文は、ゴーゴリの魅力を伝えてやまない。

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5つ星のうち 4.0 ペテルブルクの街を舞台にした下級役人の悲喜劇, 2004/5/28
By 風(kaze) - レビューをすべて見る
(TOP 1000 REVIEWER)   
ゴーゴリの『外套』を初めて読んだのは小学生の頃、確か小学館の
「少年少女世界の名作文学」シリーズの中で。
アカーキイ・アカーキエウィッチという冴えない人物が、ようやく手に入れた
新しい外套を必死に探す姿と、闇の中に取り残されたようなラストが印象的
だったと、そんな記憶が残っています。

今回久しぶりに読んでみて、よくもこれだけ冴えない登場人物たちしか
いないものだなと、妙なところに感心しました。かっこいい、あるいは
こうありたいものだと思わせてくれる人間が、ひとりとして小説の中に
出てこなかった。主人公のアカーキイ・アカーキエウィッチを筆頭に、
すべての人間が灰色めいた陰気な印象を帯びています。

寒さ厳しいペテルブルクの街がまた、どんよりした灰色の背景として
塗り込められています。
そんな中で唯一、キラキラと光り輝いていたのが、アカーキイ・
アカーキエウィッチの新調した外套でした。もちろんこれは、
アカーキイ・アカーキエウィッチにとって光り輝いていたということで

あって、他人は彼の外套のことなど、すぐに関心を失ってしまうのですが。

警察官がどうしようもなく無能で役立たずだったというのも印象に残ります。
作者によって徹底的に虚仮にされているとしか思えない阿呆ぶり。
当時のロシアの官憲から睨まれなかったものかね>ゴーゴリはと、
ふと気になったくらい。

「おまえら、フロスト警部の爪の垢でも煎じて飲め。仕事しろ。」と
言いたくなりました。

もうひとつの作品の「鼻」。
そのコミカルで無鉄砲なおかしさといったら、理屈抜きに愉快、愉快。
八等官コワリョーフの鼻が、ある日突然、彼の顔から失踪する。
そしてあろうことか、うろんな紳士の「鼻氏」として、鼻をなくした

コワリョーフの前に現れ、彼を鼻にも引っかけず右往左往するというお話。
実に奇妙奇天烈、人を食ったストーリー。
あまりの珍無類、おかしな話に、思わずくすくす笑ってしまいました。

訳は、平井肇。戦前の翻訳だが、今読んでもさほど古さを感じません。
読みやすい訳文です。
ただ、ページ数が増えても、文字を大きくして、行間を広くとって

活字を組んでくれたら、さらに読みやすくなるのにと思いました。

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12 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 元祖おたく文学, 2006/2/1
何度読んでも飽きない一冊、というのは誰しも何冊かあるでしょう。
私にはこの本がまさにそれです。中学生時代以来何度読んだか分かりません。
子供のころは「鼻」の方が好きでしたが、深みという点ではやはり「外套」でしょうか。

「外套」の主人公アカーキイ・アカーキエヴィッチは、今風に言えば「書写おたく」である。彼は栄誉や金銭など世間的な幸福には一切無関心。しかし自分の興味を追求し仕事でも活かし成果を上げている、自分なりの幸福を実現した人物といえる。この外見はただのさえないおっさんの隠れた魅力を、ゴーゴリはユーモア小説の手法でちゃかしながらも親しみを持って丁寧に描く。
そこに大問題が振ってわいた。外套の新調という、彼にとってはただ面倒なだけの問題だ。しかしその日から彼の中で何かが変わり始める。いままで関心のなかった生活が、新しい外套と同じくなにかきらきらと妖しい魅力を持ったものに見え始める。経験したことのない気分の高揚。そして「おたく」を脱出し新しい外套と共に新しい生活に踏み込もうとしたその時、悲劇が起こる。
ゴーゴリは週刊誌のゴシップ記事的な体裁で読者を笑わせながら、この風変わりな主人公の小宇宙とその運命に引き込んでいく。

矛盾した要素をひとつに纏め上げたアクロバット的な「外套」と異なり、「鼻」はストレートに笑い楽しめるナンセンス小説である。
主人公コワリョーフは、「外套」の主人公とは対照的な俗っぽい人物だ。おそらく毎朝鏡でヒゲの具合のチェックは欠かさないだろう。彼の鼻は彼より堂々としてそのうえ官位さえ高い。この強烈な皮肉。ゴーゴリの筆は隅々まで神経が行き渡りセンスが良い。

平井肇の訳は文体がやや古いが、それがかえって滑稽さを良い具合に強調していておすすめ。
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6 人中、5人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 客体化され象徴化された9等官, 2007/1/5
私は、以前は「外套」を、近代文学の一つの金字塔とみなしていました。
理由は、まさに外套こそが近代文学の出発点たる作品であるからです。
ドストエフスキーは「我々は皆、外套の中から出てきた」と言ったとされています。
(しかし、これは、外套の次元を既に超えているというニュアンスもあるようです)

しかしながら、外套の主人公、アカーキイ・アカーキエヴィッチは、作者の冷徹な
目によって見られ、客体化された存在です。たぶんに象徴化されているので、彼は
至ってシンプルな人間でもあります。彼の全ての生きる力は、外套の存在そのものに
依っているかのようです。・・・本当のアカーキイ・アカーキエヴィッチ
がいかなる人物だったかは、このような客体化された文学形態では示し得ないはず
です。アカーキイ・アカーキエヴィッチに対するゴーゴリの洞察は素晴らしいですが、
それでも、アカーキイ・アカーキエヴィッチはその一生をかけた何らかの反論を、
ゴーゴリに対して行い得るはずです。とすれば、ゴーゴリが書いたのは、アカーキイ・
アカーキエヴィッチという人物そのものではなく、「貧しい9等官」として象徴化され
たアカーキイ・アカーキエヴィッチであるはずです。
まさに、この点にこそ、ドストエフスキー処女作「貧しい人々」と、「外套」の差異が
あるのです。ドストエフスキーはマカール・ジェーブシキンそのものを書こうとしました。

どちらに優位性があるとか、そういうはなしではありませんが、芸術形態として私は
「外套」よりも「貧しい人々」の方を推奨したいと思います。
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