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5つ星のうち 4.0
ペテルブルクの街を舞台にした下級役人の悲喜劇, 2004/5/28
ゴーゴリの『外套』を初めて読んだのは小学生の頃、確か小学館の 「少年少女世界の名作文学」シリーズの中で。 アカーキイ・アカーキエウィッチという冴えない人物が、ようやく手に入れた 新しい外套を必死に探す姿と、闇の中に取り残されたようなラストが印象的 だったと、そんな記憶が残っています。今回久しぶりに読んでみて、よくもこれだけ冴えない登場人物たちしか いないものだなと、妙なところに感心しました。かっこいい、あるいは こうありたいものだと思わせてくれる人間が、ひとりとして小説の中に 出てこなかった。主人公のアカーキイ・アカーキエウィッチを筆頭に、 すべての人間が灰色めいた陰気な印象を帯びています。 寒さ厳しいペテルブルクの街がまた、どんよりした灰色の背景として 塗り込められています。 そんな中で唯一、キラキラと光り輝いていたのが、アカーキイ・ アカーキエウィッチの新調した外套でした。もちろんこれは、 アカーキイ・アカーキエウィッチにとって光り輝いていたということで あって、他人は彼の外套のことなど、すぐに関心を失ってしまうのですが。 警察官がどうしようもなく無能で役立たずだったというのも印象に残ります。 作者によって徹底的に虚仮にされているとしか思えない阿呆ぶり。 当時のロシアの官憲から睨まれなかったものかね>ゴーゴリはと、 ふと気になったくらい。 「おまえら、フロスト警部の爪の垢でも煎じて飲め。仕事しろ。」と 言いたくなりました。 もうひとつの作品の「鼻」。 そのコミカルで無鉄砲なおかしさといったら、理屈抜きに愉快、愉快。 八等官コワリョーフの鼻が、ある日突然、彼の顔から失踪する。 そしてあろうことか、うろんな紳士の「鼻氏」として、鼻をなくした コワリョーフの前に現れ、彼を鼻にも引っかけず右往左往するというお話。 実に奇妙奇天烈、人を食ったストーリー。 あまりの珍無類、おかしな話に、思わずくすくす笑ってしまいました。 訳は、平井肇。戦前の翻訳だが、今読んでもさほど古さを感じません。 読みやすい訳文です。 ただ、ページ数が増えても、文字を大きくして、行間を広くとって 活字を組んでくれたら、さらに読みやすくなるのにと思いました。
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