本書は、iPhoneという魅力ある携帯端末の登場を受け、その魅力を述べるとともに、これを日本で利用するに当たって多くの障壁があることを示すことを通じて、垂直統合型の日本の携帯電話ビジネスの問題点を上手くあぶりだしている。
iPhoneについて書かれた書物は既に何冊か存在する(例えば林信行「iPhoneショック」)が、本書がこれらに比べて良いと思われるのは、通信事業者やメーカのサイドから企業経営や戦略等を論じるよりも、ユーザの視点をメインに、iPhoneの可能性とオープン化の利便性、そしてそこから日本の携帯電話ビジネスモデルの弱点を明らかにしていることである。すなわち、日本企業の採用してきた垂直統合型モデルに一定の理解を示しつつも、時代の流れは日本以外で採用されているオープン化(iPhoneはその下での利用を基本としている)であり、ユーザの視点からもオープン戦略が求められる旨述べている(なお、最終節の表題が「日本的垂直統合モデルの長所を生かせ」となっているが、中身を読むと垂直統合モデルからオープン化への方向を求める内容である)。顧客が求める商品・サービスの提供が重要となっている現在、本書のようにユーザからの視点から論ずることは、iPhone、そして携帯電話ビジネスを語るにおいて、より相応しいアプローチであろう。
日本でのiPhoneの可能性について、新聞等ではiPhone登場時に通信方式の相違だけを障壁として指摘する浅薄な記事も見られたが、本書はそれにとどまらずに様々な障壁を挙げている。その他、日本では海外と異なりメーカーよりも通信事業者が強い、垂直統合モデルをとっている、日本メーカーは海外で弱い等、業界に多少でも詳しい人によく知られた内容も多く書かれており、内容的に物足りない部分がないとは言えないが、そうでない一般ユーザにも比較的分かりやすく携帯電話ビジネスのモデルが説明がされており、読んでおいてよい本に属すると思う。