著者は生物学から地理学、鳥類学、人類生態学まで、広範な領域で研究を続けている。ピュリッツァー賞を獲得した前作『銃・病原菌・鉄』では、これらの知識・知見を統合し、文明の発展には生態系や地形の特徴などの環境要因が大きく影響したことを指摘した。本書では、文明崩壊のメカニズムを説き明かす。
世界には、過去、大いに繁栄しながら、その後崩壊してしまった社会の遺跡があちこちに残っている。例えば、イースター島、マヤ、北米アナサジ、ノルウェー領グリーンランドなど。著者は実際にこれらの地に赴き、栄華を極めたかつての社会に思いを馳はせながら、なぜ崩壊したのか、その過程を探り、いずれも、同様の道筋をたどっていると指摘する。
ルワンダや中国が物語るもの
社会が繁栄すると人口が増える。人口が増えると、農作物の無理な増産やエネルギー消費量の拡大などで環境に過大な負荷が生じる。その結果、食糧・エネルギー不足となり、多すぎる人間が少なすぎる資源を巡って争うなど、共同体内部の衝突が激化する。飢餓・戦争・病気によって人口は減少し、社会は崩壊する――こういう具合だ。
著者は崩壊の潜在的要因として、環境被害、気候変動、近隣の敵対集団、友好的な取引相手、環境問題に対する社会の対応という5つの枠組みを設定。崩壊した社会、または存続した社会に当てはめて、検証していく。崩壊を免れた社会の事例として、徳川幕府による「上から下」への統制で、持続可能な林業を作り上げた江戸時代の日本も登場する。
著者のこうした考察は、現代社会への警鐘として帰結する。第三世界の惨事の地・ルワンダ、急速に先進国の仲間入りを果たそうとする中国、最も脆弱ぜいじゃくな環境を抱えるオーストラリアなどの事例を紹介する。今日のグローバル社会では、1つの社会の争乱は別の社会の災厄となることを指摘。我々は歴史を教訓に崩壊を回避し、乗り越えられるのかと問う。
(日経エコロジー 2006/04/01 Copyright©2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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