著者は、「老齢期」を過ぎて、「超・老齢期」の只中にあるという。「超・老齢期」とは、大まかに言えば、高度資本主義社会の達成によって生じた、人類史にかつてないライフステージのことだ。この未曾有の、しかし優れて個的な生活環境に立ち向かって、「老い」や「死」、「家族」や「教育」の問題はどう考えればよいのか。著者は自分の体験と実感をもとに、過去の思索に適宜言及しながら、「一人の老人」としてこの問題を解いていく。「老人は慢性的な鬱病」「死は自分におこる事件ではない」といった個々の述懐には、検討すべき示唆が豊富に含まれているといってよい。
しかし、本書の一番の魅力は、むしろ包み隠さずに語られる著者の人間的な「地金」の方にあるのではなかろうか。論理に拘泥せずに続く語りの裏に、文学者・吉本隆明の驚くほど率直な声が響くからである。個人的な実感を伴った、ある意味で反時代的なこの平明さは、著者が吉本であるだけに、かえって貴重だと思う。我々の時代が餓えているのは、冷たい正しさだけでもなく、身勝手な実感だけでもない、両者のアマルガムを実現する人間的な実質に対してこそなのだから。(今野哲男)
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