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本格小説〈上〉 (新潮文庫)
 
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本格小説〈上〉 (新潮文庫) (文庫)

水村 美苗 (著)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

ニューヨークで、運転手から実力で大金持ちとなった伝説の男・東太郎の過去を、祐介は偶然知ることとなる。伯父の継子として大陸から引き上げてきた太郎の、隣家の恵まれた娘・よう子への思慕。その幼い恋が、その後何十年にもわたって、没落していくある一族を呪縛していくとは。まだ優雅な階級社会が残っていた昭和の軽井沢を舞台に、陰翳豊かに展開する、大ロマンの行方は。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

水村 美苗
東京生れ。12歳で渡米。イェール大学仏文学専攻。同大学院博士課程修了。プリンストン、ミシガン、スタンフォード大学で日本近代文学を教える。著書に『続明暗』(芸術選奨新人賞)、『私小説from left to right』(野間文芸新人賞)、『手紙、栞を添えて』、『本格小説』(読売文学賞)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

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5つ星のうち 5.0 小説を堪能するということ, 2006/1/20
戦後、アメリカに渡って財をなした伝説の男、東太郎の数十年にも及ぶ悲恋の物語。一口に言ってしまえばこうなりますが、作者の知的なたくらみに満ちた、それでいてとびきり読みやすく、味わい深い稀有な小説。「堪能した」という言葉がぴったりの読後感です。

核になるのは太郎の物語ですが、そこに行き着くまでに、アメリカに渡ったばかりの太郎を知る美苗の話、のちに美苗の知らない太郎の歴史を運んでくる祐介の話、祐介が軽井沢で、核となる物語の語り手である冨美子、そして太郎本人と出会う話、と、まどろっこしくも扉が一枚一枚開かれるような過程があり、古い時代の日本の物語へと読者をゆっくりゆっくり運んでくれます。
核となる物語は夢中で読め、戦後の貧しさと富める人々の生活、その没落といった未知の世界がありありと浮かび上がって来ます。そして終盤には物語がくるりと転回するような瞬間が用意されており、また1ページ目から別の視点で読み返さざるを得なくなる・・・・そういう小説です。

先日の新聞である人が作者を「小説の女神」と称していましたが、その名にふさわしい書き手。時代ごとに、場所ごとに、そこに生きる人々の息遣いが聞こえてくるような文章を書き分ける才。さりげないのにこれ以外ないという各章のタイトル。魅了されました。
冬の夜長に、静かに静かにそして熱く読んでいただきたい物語です。
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14 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 理性と感性, 2006/1/3
理性と感性のどちらも満足させる素晴らしい小説です。

確かにこの小説は一種のメタフィクションです。これがメタフィクションとして構想されていることはタイトルからも明らかです。あきれたことに、上巻の1/3が長い長い前書きで占められるのですが、これは小説のリアリティを補完する意味でも、また神の視点を周到に排除する意味でも必然的な構成です(ここから読み始めた忠実な読者には、終盤にちょっとした楽しいトリックに驚く権利が与えられます)。

しかし、とにかく言っておきたいことは、この人工的な構成を持つ小説は、信じがたいことに(!)本当に本当におもしろいのです。時間を忘れるくらいおもしろいです(ですからなるべく長い休みの期間に読むようにしています)。どっしりとした時代の流れを背景に展開するよう子と太郎の運命的な恋愛。しかも、その恋愛を語る冨美子や、三枝家、重光家の人々の人生の浮き沈みのなんとおもしろいこと。冨美子が「キャリアウォマン」として働くくだりは、本書でも一番幸せな場面でとても好きです。この小説の周到な構成は、そのたくらみどおり、小説の「真実の力」を発現させることに成功していると言えます。この小説の人工性は、正当に読者のために使われているのです。
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8 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 この小説さえあれば、ほかの小説はいらない, 2007/9/26
 小説を読む悦楽、物語と人間との哀しくも優しい関係をこれほどまでにメッセージとして内包した小説はいままであったであろうか。
 この小説さえあれば、ほかの小説はいらない。私にはそう思えるほど、たくさんの物語がぎしりと詰まった宝石箱のような小説であった。
 中心となる話は混血の孤児太郎と上流階級のお嬢様よう子とその幼なじみの雅之との昭和初期の世田谷と軽井沢を舞台にした三角関係の恋愛物語であるが、その壮大なロマンに満ちた物語が、かつてよう子の家の女中をしていた土屋冨美子から、加藤祐介という元編集者の若者へ、さらには小説家の「水村美苗」へと、伝言ゲームよろしく物語が語り継がれて行く。
 語り手たちが変わるごとに、物語が物語を呼び、様々に変容していく過程を読者が語り手と共有することこそが、この『本格小説』を読む醍醐味である。私は夜の更けるのを忘れ下巻を読みながら涙が止まらず、読後は1週間くらい登場人物の心象風景の数々が頭から離れなかった。
 
 できるだけ多くの方に、この小説の素晴らしさを感じて欲しいと心から願っている。
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