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落日燃ゆ (新潮文庫) (文庫)

城山 三郎 (著)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

東京裁判で絞首刑を宣告された七人のA級戦犯のうち、ただ一人の文官であった元総理、外相広田弘毅。戦争防止に努めながら、その努力に水をさし続けた軍人たちと共に処刑されるという運命に直面させられた広田。そしてそれを従容として受け入れ一切の弁解をしなかった広田の生涯を、激動の昭和史と重ねながら抑制した筆致で克明にたどる。毎日出版文化賞・吉川英治文学賞受賞。


内容(「MARC」データベースより)

戦争防止に努めながら、文官としてただ一人A級戦犯に挙げられ、裁判を通じて一切の弁解をせず従容として死を受け入れた不世出の政治家、広田弘毅の生涯を、激動の昭和史と重ねながら克明にたどる。74年刊の新装版。 --このテキストは、 単行本 版に関連付けられています。

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5つ星のうち 4.0 尊い, 2007/1/6
このレビューの引用元: 落日燃ゆ (単行本)
人から勧められて初めて手にした。
東京裁判は学校での教科書で学んだ程度の知識しかなく、
今回この本を読んで、主人公となった広田弘毅はもちろん
戦争が引き起こしたすべての事象、巻き込まれた人間、
そしてこの戦争を正当化して推し進めていった者たちの
さまざまな思いを一気に感じさせられた気がする。

広田に対しては、その大多数が、
彼の人柄と、この戦争に自分自身をまっすぐに対峙させ、
「無罪」とは言えないと一貫して主張した姿勢からも
好意的な意見ばかりが存在する一方で、
裁判中も多くを語ることなく、また、在任中についても
自らの主張をせずに周囲の言いなりとなっていたと
批判的に見る意見も存在する。

これはまさに表裏一体であり、彼の黙して語らずの精神が
このような両極の意見を生んだのかもしれない。

独裁的・個性的な人間ばかりが政府の中心であった当時に
寡黙な彼は異色であっただろうし、多くを述べずに
自らが信じたことだけに心を尽くそうとした生き方ゆえに
文官でありながら死刑という悲劇が起きたのかもしれない。

当然ながら彼を中心に据えた本作であるから、
当時の他の政治家たちの目から見れば彼はもっと否定的に
言われる点もあるだろうが、それを差し引いても、
当時の陸軍の強行を押さえ込んでいればという思いは
拭い切れない。

そして、彼の表の顔といえる政治家としての手腕や
その実績も去ることながら、一人の家庭人としての
姿に心打たれた。
深い愛情で結ばれていた物静かな妻と物静かな夫。
裁判中に先に自害し、夫の心残りをなくそうと気遣った妻と
彼女亡き後、子どもたちに託す手紙には、
必ず妻の名前を書き、妻宛ての手紙を綴り続けた夫。
この激動の中に巻き込まれても、彼の揺るぎない家庭への
深い愛情と芯の通った生きざまは、
この家族の間にしっかりと息づいていたのだろうなと感じた。

こんな深く厚い人物を、安易に失わせてしまったことは本当に惜しい。
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37 人中、35人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 「自ら計らわぬ」という生き方, 2004/10/7
本書は太平洋戦争の東京裁判において、A級戦犯として絞首刑に処されたただ一人の文官・広田弘毅氏の生涯を追ったものです。
全文を通じて極力感情が抑えられた筆致、また戦後首相となった幣原喜重郎・吉田茂などの人物に対する描写も合わせ、
広田氏個人の伝記というよりも、日本と言う国が戦争に転がり落ちていく、その時代に抗おうとした人々の記録であると感じました。

大使、外相を務め、二・二六事件の直後に首相となった広田氏は、
日本軍ならぬ「二本軍」とも言うべき、意思の統一されない中枢と末端の齟齬の中で和平への道を模索します。
歴史の教科書ではわずか数行で記述され、その意義も「軍部の台頭を許した」とされてしまう広田内閣ですが、
例えその努力が実らなかったにせよ、一年ほどの任期中、広田氏が人事を尽くしたことは確かです。
それは良心として認められるものでこそあれ、罰せられるべきものではありません。

たとえ、ついに戦争を回避できなかったことを広田氏の罪とするとしても、
それは一個人の能力の限界であり、一人広田氏のみが死によって背負うべきものではありえません。
しかも東京裁判では、和平への道を決定的に閉ざした軍部の人間らと同列に扱われ、
ついには彼らと「共同謀議」したとされるなど、その努力に報われぬ評価を受けてしまいます。
敗戦の常とは言え、あまりに理不尽だと感じます。

その中での広田氏のあり方を、本書では「自ら計らわぬ」生き方として描いています。
それは透明で美しい思考で、人間のあり方として理想的でもあります。
しかしそれだけにひどく悲しいものだと私には感じられました。
死によって戦争を回避できなかったことを背負うならば、なぜ生きて新しい時代を創ることをしなかったのか。
戦争を起こさぬことを望むなら、なぜ裁判で自ら語り戦争に到る経緯を明らかにしなかったのか。
保身のために他人を貶めたくないという理想には共感しますが、語ることも一つの責任ではなかったかと考えてしまうのです。

本書はかつてあった、そして今ここにある戦争を知るための良書ですが、
私には「自ら計らわぬ」生き方には賛同できないところもあり、評価を4に留めさせて頂きました。
広田氏が自分の人生を自分の手だけで完結させてしまったことについて、今の私は納得できないからです。

ただし、この点は個人的な感情であり、本書の価値を貶めるものではありません。
戦争とテロで縁取られた今の時代を考えるために、
本書は日本人として必読の一冊であると考えます。
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6 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 日本を愛する人に。, 2009/1/12
東京裁判のキーナン首席検事をして「なんというバカげた判決か」と言わせた絞首刑という判決。昭和23年12月23日、A級戦犯(平和に対する罪)として世を去った広田弘毅氏が最後まで止めようとした戦争に至る経緯と広田氏の静かな、しかし気骨ある生き方を本書は史実に立脚し淡々と伝えてくれます。
統帥権という名のもとに暴走する関東軍、軍部と外務省の対立、さらに省内の分裂。外交官として軍部より世界をはるかに深く知っている広田氏は、こうした激動の時代を一貫して対話による外交と「物来順応」という態度で臨んできました。その姿勢は戦犯裁判になってからも変わることはなく、また家族に対する想いとあいまって読者に深い感慨を与えてくれるのではないでしょうか。
1978年、靖国神社にA級戦犯は合祀されましたが、それを誰にもまして戸惑って受け止めているのは天国でこの日本を見つめている広田弘毅氏のように思います。彼の持っている世界観は一国の英霊として祀られるより遥かに高い所にあること、また人生を諦観して見つめ続けたその生き方の真髄を本書は痛いほど読者に伝えてくれていると思います。
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