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近代日本の右翼思想 (講談社選書メチエ)
 
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近代日本の右翼思想 (講談社選書メチエ) (単行本)

片山 杜秀 (著)
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登録情報

  • 単行本: 246ページ
  • 出版社: 講談社 (2007/9/11)
  • ISBN-10: 4062583968
  • ISBN-13: 978-4062583961
  • 発売日: 2007/9/11
  • 商品の寸法: 18.6 x 13 x 2 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.0  レビューをすべて見る (6件のカスタマーレビュー)
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5つ星のうち 5.0 皮肉なまでにアクチュアル, 2007/9/20
「目の覚めるのような」という表現はこうした作品にこそ捧げられるべきかと思う。

まず驚かされるのは、四章構成の各章のサブタイトル−「世の中を変えようとする、だがうまくゆかない」「どうせうまく変えられないならば、自分で変えようと思わないようにする」「変えることを諦めれば、現在のあるがままを受け入れたくなってくる」「すべてを受け入れて頭で考えることがなくなれば、からだだけが残る」−に濃縮された明快なパースペクティブだ。

「未来」に賭ける「左翼」。「現在」を肯定する「保守」。「過去」へと反り返る「反動」。政治思想をさしあたりそのように大別できるにせよ、実際に生起する思想はしばしば接合と分離を繰り返し、複雑怪奇な様相を呈して止まない。とりわけ右翼思想は、微温的な道徳訓から破壊的なテロリズムまで、農本主義から軍国主義まで、教養主義から反理性主義まで、およそ正反対の要素が「右」の名の下にいとも簡単に同居する。

そうした右翼思想のアクチュアリティに分け入るべく、狭義の政治思想のみならず文学・芸術作品までを視野に収め、縦横無尽な論述が展開される。その博識と慧眼は尋常ではない。ときに難解きわまりない哲学談義を一刀両断に命題化し、ときに罵詈雑言から一貫するロジックを抽出し、ときに、長谷川如是閑、西田幾多郎、阿部次郎など、いわゆる「右翼」とは考えられない論者からも思想的連関を発見する。

その結果見出されるのは、「ものの考え方に全体の構造としてうまくゆかないところがあり、その中で堂々巡りをしているうちに、奇妙な想念にどんどん流されてしまう」という右翼思想の姿、そしてそれが一部の論者や作品に顕著に見出されるばかりでなく、近代日本の思想風景全般に関わり、そしてその構造は今なお残響しているという認識である。

「美しい国」を掲げる政権の崩壊を目の当たりにした現在、本書の射程は皮肉なまでにアクチュアルだ。
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30 人中、25人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 右翼思想の全体像へ, 2007/9/23
By ソコツ - レビューをすべて見る
(TOP 50 REVIEWER)   
近代日本右翼思想史構築への第一歩。すこぶるおもしろい本である。自己のオリジナルな論説をリズミカルにたたみかけてくるような気のきいた文章もすばらしい。
気に入らない現在を変革するために、悠久の天皇のいる過去を鑑として現在に向き合うが、その現在にもしかし天皇はいるので、抜本的な世界革命はおこせず、どん詰まりになり、けれどそのどん詰まりぶりが多種多様な思想に結実する、という右翼思想の魅力(?)を、著者はごくごく明解に示していく。しかも、本書では北一輝や大川周明といったような有名どころよりも、よりマイナーな、というかその言い分が低レベルとみなされバカにされがちな右翼思想家や日本精神主義者、あるいは意外な作家や哲学者などが主に取り上げられる。
全体を通して非常に興味ぶかいが、私的に特に関心をひかれた所が三点ほど。第一に、政治家や企業経営者たちの導師として著名な安岡正篤を、大正教養主義とりわけ阿部次郎の思想の右翼化として位置づける説明。第二に、西田幾多郎の哲学からある種の葛藤が抜け落ちその論理だけが「今」を絶対視するファッショ的思念に転化していった過程の確認。それから、日本人の正しい姿勢や身体技法を涵養することの大切さを主張することが、やがて国家を文字通り死守する国民を育む思想に帰結してしまった、という今日でも(でこそ)妙にリアルに感じられる言説を展開した、佐藤通次という哲学者の身体論の再発見、である。こういう系譜があったか!とか、こんなこと考えていた人物がいたのか!!という思想史的な驚きに満ちているのである。
著者も述べているように、これは「ささやかな第一歩」の書物である。今後、著者本人、あるいは本書に触発された論者による、さらなる右翼思想史の探求がこころみられる予定なわけだ。どんな新しい見方がありいかなる思想家がいまだ埋もれているのだろう?とわくわくしてしまうではないか。

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13 人中、11人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 右翼のジレンマ、ねじれ、その根幹としての「天皇」, 2008/2/24
 「あとがき」の「右が好きだった私としては、もちろん右翼の魅力を語りたい気持ちも強い」っていう言葉に対しては、「その思い、愛はちゃんと伝わってるよー」と返したい。いやぁ、とても刺戟的な本だった。
 「ものの考えかたに全体の構造としてうまくゆかないところがあり、その中で堂々巡りをしているうちに、奇妙な想念にどんどん流れてしまう」っていう近代右翼思想の潮流がとってもうまく整理されていて、ほんとうに面白かった。「未来にぶらさがって現在を攻撃する左翼に対し、過去や現在に足場を置くのが右翼」とか、「反動は過去に反り返って動く。保守は現在を大事にする。左翼は未来に期待する」とか、そういった素人語りって「講談社選書メチエ」という一般書とは言え、なかなか扱いがイデオロギーだと、学者は言い切れないもんだと思うんだよね。全編を通じて、著者の潔さ、キレの良さを感じる。
 「どうせうまく変えられないならば、自分で変えようとは思わないようにする」安岡正篤の存在にフォーカスしてページを割いているのが新鮮。理想の右翼と現実の右翼のジレンマっていうか。
いずれにしても、そのジレンマっていうかねじれの根幹に「天皇」があるっていうね。
 本書は一応、1945年の敗戦に至る近代右翼思想について書かれている訳だけど、昨今の、よしりんとか、新しい歴史教科書をつくる会とか、「Will」とか、ネット右翼とか(十把一絡げにする訳じゃないけど...)の心情ってのも、決して戦前と切れている訳じゃないっていうか、右翼の根本問題はいまだ解決されていないっていうか。
 それにしても、石原莞爾「世界最終戦論」の「今から三十年内外で人類の最後の決戦の時期に入り、五十年以内に世界が一つになる」なんて世界観は、経済に舞台を変えた今のグローバリズムってやつと寸分変わらない気がするな。
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