1巻に登場した杉下・久通・吉宗の最期が描かれる8巻は、
物語の折り返し地点と思われる。
7巻のラストで登場した、福姫こと家重の平凡さと愚かしさを受け止め、
「長い間苦しませてすまなかった。そなたが次の将軍じゃ」と伝える吉宗。
そこには福姫の父である卯之吉の死後、
「私には人の心の細かな襞(ひだ)いうものが分からぬようだ」とつぶやいてからの
長い時間が感じられた。
吉宗に欠けていた『人の心の細かな襞(ひだ)』を補い続けた杉下は、
「吉宗の娘たちの父親代わり」であり「大奥総取締」として再登場した。
1巻から思うとたいそうな出世である。彼が登場する芳三とお幸の方のエピソードでは、
よしながふみ作品ならではの「食」に対する薀蓄が満載だ。
また、中盤の久通の告白シーンは衝撃的だった。
吉宗を将軍にするために手を汚していた久通に対して、作中ただ一度の吉宗の涙。
「私の連れ合いと同じ事」と言った杉下の臨終にさえ涙を流さなかったのに!
吉宗と久通は戦友のような間柄だったのかもしれない。
そして杉下と久通、二つの支えを失い、ゆっくりと死へ向かう吉宗が最後に願ったのは
「赤面疱瘡の撲滅」だった…
よしなが「大奥」、伏線をきっちり回収しながら
新たな展開も織り込んで読みごたえ充分の8巻だった。…
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