らくちん

 
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レビュー

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中国台頭の終焉 (日経プレミアシリーズ) 津上 俊哉
31 人中、26人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
 中国への愛のこもった、中国経済に対する最も悲観的な警告。今後の中国は、成長率5%程度の中成長がせいぜいで、GDPで米国を抜いて世界一になる日は来ない、という。2003年に流行言葉にもなった「中国台頭」を著し、サントリー学芸賞をとった著者が、自らその終焉を告げる書である。自らの論の射程を明確にしているのは、なんと知的に誠実なんだろう。
 中国に対する論というと、経済の規模と高い成長率を強調する楽観論か、政治的嫌悪感に基づく悲観論が多い。著者は、そのどちらにも属さず、中国への愛を持ちながらも、冷静に経済を分析した結果、最も悲観的な立場をとっている。著者は、中国の民間企業経営者や地方の役人などに本音で話せる友人を多く持ち、中国人留学生への支援を行うなど中国の人に対して暖かく接しておられる。だからこそ、友人に警鐘をならさずにはおられなかったのだろう。
 とはいえ、たとえ米国を抜く日が来ないにしても、世界2位のGDPの経済規模を持つ国が、今後も約5%の成長を続けるとすれば、それはそれで世界全体と隣国の日本へのインパクトは大きい。この本で挙げられている、四兆元投資の反動、国進民退、都市・農村二元構造、少子高齢化などに視点をもって、十分に注意して見ておかなければならないのは、間違いない。
「常識」としての保守主義 (新潮新書) 櫻田 淳
9 人中、6人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
元来、保守主義は、偏狭なナショナリズム、頑迷な現状維持主義、知識人による上から目線の観念論とは無縁である。むしろ、異質なものを受け入れる開放性と自由主義、変化に対応する進取の気性、プラグマティックな現実主義と国民への信頼を基盤にしたものである。そこには、ある一定のイデオロギーや政策セットなどない。状況に適応して柔軟に現実的政策を打ち出す「中庸の作法」にこそ保守主義の真髄がある。
従って、ここで参照される5人の保守主義の政治家たちは、共通して保守主義の「作法」に従って成果をあげているが、実行した政治の内容は実に多様である。そこに、保守主義の多様な豊潤さと、香りたつような魅力が生まれる。
今の日本の政治のお粗末な状態にあるのは、最大野党である自民党がしっかりとした魅力ある保守主義を提示できないからでもある。自民党は、民主党に対抗して新たな人気取りマニュフェストを提示するのではなく、災害や国際的な経済危機など、予測できない事態が将来に起ころうとも、柔軟に対応できる保守主義の作法の魅力を十分に伝えなければならない。そう、思わせる素晴らしい本である。
ビヨンド・エジソン 最相葉月
12 人中、10人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 科学と情念, 2009/10/14
科学の様々な分野で最先端の成果をだしている12人の研究者に取材したノンフィクションです。研究者には、あらかじめ、影響を受けたという伝記や評伝を挙げてもらい、その話を切り口にこれまでの研究生活について、著者が直接インタビューしています。

科学と情念の関係を考えさせられました。客観的でクールな手法を旨とする科学の領域で素晴らしい成果をあげている方々は、実に主観的な強い心を持っている。なんとしても謎を解明し、問題を解決するぞ、という、情熱などという生ぬるい言葉ではなく、情念とでもいいたくなるような熱い心。そうした心を育むのに影響を与えた先人もまた、科学する情念にとりつかれたような人々です。

そうして読みおわると、研究者に加えて、著者に対して、ノンフィクション作家としての客観的でクールな説明と、そうした科学する心への熱い思いとの、鮮やかな対照が、また、読む者を気持ちよくしてくれます。研究者も著者もともに、「熱い思いで、客観的になっている」のが、熱くてさわやかな読後感を残します。