verkhovenski

 
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Buddenbrooks: The Decline of a Family (Vintage Int&hellip Thomas Mann
Part10で当主のThomasが突然死し、邸は人手に渡り、これで壮大な挽歌を奏でて終はりかな、と思ひきや、Part11Chapter2に入ると、一人息子のHannoことJohannの、寝坊から始まる一日の学校生活が語られます。

なぜこの大詰めを迎へて、15歳の少年が、ラテン語の宿題を怠けて教師の指名に懼れをののく姿に焦点を当てるのでせう? まるでこれから青春小説が始まるかのやうです。おつかない教師、卑屈な教師、ガリ勉の級友、アンチョコをのぞく級友等々が織りなす、宗教やらラテン語やらの授業風景。学校が引け、唯一の友人Kaiに吐露する前途への悲観。そして帰宅し夕食の後、音楽に慰めを見出し眠りに就くまで。小さなドラマはあるけれども、まあ平凡といつていい一日を、Mannは一章丸々割いて、真面目な顔つきで皮肉をいふスタイルで、丹念に克明に再現し、”This was one day in the life of little Johann”と締めくくります。

4代にわたるブルジョワ一家の崩壊のドラマを終へようとする時、かういふ脇道に入つて、私は随分面食らつたのですが、続く最後の2章を読めば、作者のちと才気走つた、技巧的な狙ひは了解されます。… 続きを見る
四銃士 [Blu-ray] <b>Blu-ray</b> ~ オリヴァー・リード
四銃士 [Blu-ray] Blu-ray ~ オリヴァー・リード
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前篇の「三銃士」と同時に撮影されたので、体形も顔つきもそのままの同一キャストが演じてゐます。音楽はミシェル・ルグランから、「ダーティハリー」のラロ・シフリンに交代。私はルグランの方がいい(特に「愛のテーマ」To Love a Queen)と思ひますが。

仏王妃(ジェラルディン・チャップリン、喜劇王チャーリーの娘)を窮地から救つたダルタニャン(マイケル・ヨーク)と、三銃士ことアトス(オリヴァー・リード)、ポルトス(フランク・フィンレイ)、アラミス(リチャード・チェンバレン)が、今度は敵国イギリスのバッキンガム公爵(サイモン・ウォード)を、リシュリュー枢機卿(チャールトン・ヘストン)が放つ刺客から守らうと奮戦しますが…好漢アトスと妖婦ミレディー(フェイ・ダナウェイ)の因縁が明かされ、ボナシュー夫人(ラクェル・ウェルチ)に危機が逼り、そして修道院でのロシュフォール(クリストファー・リー)とダルタニャンの決闘(原作とは違ひますが)へと、いよいよ物語は大詰めを迎へます。

キャストばかりでなく、美術や衣装にも贅を尽くした、剣と恋の大ロマンではあるのですが、それが一筋縄ではゆきません。まるで結婚式で新婦の感謝の言葉に両親が感極まつたその時、風船を割つて驚かすかのごとき悪ふざけをふんだんに鏤め、悪役は勿論のこと、四銃士も、そして美人のヒロインですら、容赦なく笑ひの種にされてゐるのが、この映画の大変風変はりで面白いところです。それでゐて堂々たる風格を失はず、原作を読んだ子供の昔の、胸躍る思ひを懐かしく追体験できる、まことに不思議な作品です。… 続きを見る
月下の一群 (新潮文庫 ほ 3-1) 堀口 大學
5つ星のうち 5.0 翻訳詩の宝, 2014/8/6
「月下の一群」は堀口大学による、フランス近代詩の名訳集です。ボードレール、ヴェルレーヌ、ランボー、アポリネール、コクトー等の作者別詩集も、新潮文庫から出てゐますが、旧仮名旧字体の面目を保持してゐるのは「悪の華」と「月下の一群」のみで、しかも後者は今や、この通り古本しか手に入りません。他の出版社から現役で出てゐるものは、新漢字に置き換へられてしまつてをります。

フランス象徴派は、鈴木信太郎訳もなほ岩波から旧仮名旧字体で出てをります。関係者には未来永劫、新字体への変更を許さないやうお願ひしたいものですが、ただ、私は堅苦しくゴツゴツした鈴木訳より流麗な音楽的な堀口訳の方が好きです。

コクトーの「私の耳は貝のから」も、アポリネールの「ミラボー橋の下をセーヌ河が流れ/われ等の恋が流れる」も入つてゐます。ヴェルレーヌもヴァレリイもジャムもラティゲもあります。ただランボーがありません。執筆当時「どうしても僕の日本語にはなりがたい種類の詩人」で、10年後に翻訳したと後書きにあります。