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最初、ムッとしたのだけれど、しばらく後に「言いえて妙である」と腑に落ちた。そう、この作品はまぎれもなくB級なテイストを思う存分漂わせた小説である。スリリングにストーリーは展開してゆきながら、最終的には文学たりえているのだ。
その鍵はもしかしたら、文中に登場する「フリオ・イグレシアス」にあるのかもしれない。冒頭と最後で象徴的に登場するフリオ。
なぜ、フリオっ? てところが文学。そして、表紙も当時は大胆で奇抜で新しかった。「インディヴィジュアル・プロジェクション」というタイトルが英語なのも、今までにほとんど例がなかったらしい。
阿部和重の輝かしい出世作。J文学はここから始まった。時代が回転する小説がコレだ!
政治的なテーマが通低にあるような気配を漂わせながら、引きこもりな凶悪少年の妄想がついに現実へと向かう、その一部始終が、緊張感を持って語られていくさまはなかなかのものがあります。
初読の際は、「うーん、つまらんかも」と思ったのですが、しばらく経って再読したら「うーん、おもしろい」に変わっていました。
初読の当時は、まだ、『ニッポニアニッポン』のもつ時代性を掴みきれていなかったのかもしれません。その意味でも、じつに同時代性を伴った作品だとは思います。
最後に、阿部氏のロリータ・コンプレックス描写は小気味いいものがあります。 ボクは好きです、こういうの。
狂気と笑気が絶妙なバランスでブレンドされ、ラストへ向けて駆け抜けていきます。
鏖(みなごろし)は、その映像が次々と浮かんできて、どうしようもなく楽しめました。 ほんっと悔しくなるぐらい!
本当は、この作品で芥川賞をとってもらいたかったですよ。