DEEP DIVE ― 安室奈美恵

Amazon.co.jpが注目するアーティストについて“深く掘り下げる=Deep Dive”コーナー。今回はベストアルバム
『BEST FICTION』を
リリースする安室奈美恵の解説&インタビューを掲載。
■PV動画を見るPVダイジェスト■試聴する001.「Do Me More」002.「Wishing On The Same Star」003.「shine more」004.「Put 'Em Up」005.「SO CRAZY」006.「ALARM」007.「ALL FOR YOU」008.「GIRL TALK」009.「WANT ME, WANT ME」010.「White Light」011.「CAN'T SLEEP, CAN'T EAT, I'M SICK」012.「Baby Don't Cry」013.「FUNKY TOWN」014.「NEW LOOK」015.「ROCK STEADY」016.「WHAT A FEELING」017.「Sexy Girl」



彼女の場合、アイドルかフィクションか。アイドルというのは、大衆の願望や憧れを偶像化した存在のことで、作品表現はそれを受け取る側の思いに重点が置かれていることが多い。一方、フィクションとはつくりもの。想像の産物。こちらは、作り手の主観や思いがモノを言うし、表現の主役は作り手側にある。
安室奈美恵が6年ぶりにリリースするベスト・アルバム
『BEST FICTION』。ここには彼女をソロ・デビュー時からプロデュースしてきた小室哲哉の手を離れてからのシングル曲が収録されている。これらの曲から感じられる彼女の表現スタイルは、前述の2種で言えば、間違いなく後者。彼女はアルバム・タイトルの理由をこう語る。
安室: 「最近やってきたものって、最高のフィクションだなっていう気がするんです。特に新曲の「Do Me More」は歌詞と曲調がちょっとファンタジーっぽいし、フィクションって強烈な言葉だなと思ったんですけど、敢えて使ってみました。小室さんのときの曲って、フィクションよりもノンフィクションって言うほうが近いと思うんです。たとえば「Sweet 19 Blues」は、そのときの私とか19歳っていう年の女の子たちが考えることを意識して作っていたから」



小室哲哉の手を離れてすぐは、自分の見せ方がわからず、「すごく不安だった」と言う彼女。そこで、彼女はソロとは別にSUITE CHICというプロジェクトを立ち上げ、03年にアルバム
『WHEN POP HITS THE FAN』をリリース。自分の好きなR&Bを歌うことに邁進した。SUITE CHICで得たヒントを安室奈美恵にフィードバックさせたシングルが「Put ‘Em Up」「So Crazy」「ALARM」。この間は自分が思い描くイメージをなかなか上手く表現できないことに葛藤しながらも、「自分の見せ方だったり、自分の仕事のやり方だったり、いろんなものがひとつずつ解決していった」時期だと言う。そして、今の安室奈美恵のスタンスを決定づける大きな一歩となったのが「GIRL TALK」「WANT ME, WANT ME」との出会い。以降、作品作りに対して「こだわるところが変わってきた」と言う。
安室: 「その2曲って“すごくいい! もう今すぐ出したい!”っていう思いがあったから、“冒険してみてもいいのかな?”と思ってリリースした曲だったんです。で、リリースしてみたら、意外と反応が良くて、“あ、こういうことか”って。本当に自分が楽しければ楽しく見える。自分が100%自信を持ったものは作品からその空気が滲み出ちゃう。そういうのって聴いてる方にも伝わるんだなって。そこから自分が本当に今いいと思ってるもの、少しの揺るぎもなく、100%いいって思う曲を探していくようになったんです」
昨年リリースの「FUNKY TOWN」からは、その思いがさらに加速。同曲を含む最新アルバム
『PLAY』では初めてコスプレちっくな衣装を採り入れてみたり、最新シングル「60s70s80s」ではさまざまなクリエイターとコラボしながら、その時々で自分が面白いと思うことを、曲、衣装、ミュージックビデオなどに、どんどん反映させていった。結果、安室奈美恵が届けてくれる楽曲はどんどんコンセプチュアル・アート化。その今のところの究極といえるのが、本作に収められた2つの新曲「Do Me More」と「Sexy Girl」だ。前者は男性誘惑ソング、後者は女性応援ソングで、2曲とも最近のR&Bシーンのトレンドと言えるトランス/ハウス/エレクトロな仕上がり。その辺の“時代の目利き”感もニクい。



安室: 「「Do Me More」は、すごくストーリーが思い浮かぶ曲。ここまでどっぷり雰囲気がある曲ってやったことないなって。だからミュージックビデオもおとぎの国のような感じが合うんじゃないかなと思って、ちょっと不思議な世界観にしたんです。「Sexy Girl」は(
『PLAY』収録の)「Hello」の続編じゃないけど、感覚的にはそんな感じ。女の子たちが集まって“男の子どーする?”みたいな話をしてる、みたいな」
このベスト・アルバムで辿る6年間を「いろいろな変化があった」と振り返る安室奈美恵。彼女にとってこの期間は“挑戦期”であり、“改革期”だったのだと思う。その結果、彼女はアルバム
『PLAY』で6年ぶりの1位、シングル「60s 70s 80s」で9年振りの1位を獲得した。
安室: 「そのときに思ったのが“私は追いかけるのが好きなんだな”って。追いかけられるのは、たぶん刺激がないんでしょうね。攻めてる方が意外と楽しいっていうことに気づいた。常に一番をめざして走ってたほうが楽しいし、そっちのほうが冒険できたりする。守りに入るのがすごいイヤだったんです」
不安や焦りに駆られるなか、自分のスタンスを模索し、自分のスタイルを試行錯誤しながら、再びトップの座を掴んだ安室奈美恵。マイペースに自分のやりたいことを発信し続け、いつしか時代と同期した安室奈美恵。この6年間の作風に対して、彼女は「私が理想とする女性像を作り上げてるっていう感覚がある」と語るが……。いやいや、あなたこそ、最高にかっこいい女性です。
猪又 孝(DO THE MONKEY)


