――下田さんが担当された「鏡音リン・レン」以前に、「初音ミク」があったわけですけど、初音ミクの存在を初めて知ったとき率直にどう思いました?
下田 知ったというか何と言うか、初音ミクちゃんを知ったのは2007年9月ぐらいなんですけど、「VOCALOID」というものを知ったのは藤田咲ちゃんと同じ時期(※藤田咲さんは初音ミクのCV担当。初音ミク発売は2007年8月31日)だったんですね。鏡音リンという名前はまだ決まってなかったんですけど、初音ミクちゃんの第2弾をやるっていうのがほぼ同じ時期に決まっていたんです。なんとなく、仮歌を作成するソフトと聞いて収録していたんですけど、その後、初音ミクちゃんってものが巷で流行ってるって聞いて、何だろ?初音ミクちゃんって、と思ってたらアレだった! みたいな感じの勢いで(笑)
――このソフトがあらかじめ用意された音声を使って、ユーザーが自由に作曲できるという点については?
下田 いやー、ついに日本もここまで来たかと(笑)。収録していて、いまいちこれがどう繋がるのかって実感が湧かなかったですけど、デモソングを聴いて、こんなふうになるんだーって思いました。今は、いろんな作品が出てくるのを楽しみにしています。
――初音ミクと同時期に収録されたということですけど、そのときから一人二役って決まっていたんですか?
下田 そうではなかったんですけど、収録現場にいた時に「下田さんって男の子も出来るんですか? もしかしたらもう一役お願いするかもしれません」っていう流れはあったんです。でも確定ではなくて、その後3ヶ月くらいお話を頂かなかったので、もう無くなったのかなって思ってたら、ようやく「お待たせしました」と。
――3ヶ月待った、ということは、かなり前に収録が終わってますよね?
下田 ミクちゃんの発売前に終わってますね。だから、ミクちゃんの影響があって…というのではなかったんで、本当にコアな音楽業界の人たちが使うソフトだと思ってました。
――そうだったんですか。あと、今回の一人二役は「アイドルマスター」の双子の役があってのことなのかなと勝手に思っていたんですけど。
下田 アイマスは双子ではあるんですけど、声がまったく一緒で特に大きく使い分けてもいないので、今回は私がいろんな音を出せるという特長をすごく買って頂いた部分がありました。そういう意味では私らしさが反映されてて、すごく嬉しいソフトだなと思っています。

――収録現場について聞かせてください。収録はどうやって進めていくんですか?
下田 みなさんに聞かれて説明してもチンプンカンプンな顔されるんですけど(苦笑)。大体みなさんに「“あ”から順番に録っていったんですか?」って言われるんですけど、そんなことはなくて。全然見たことも無い言葉で「ザンザンジー」とか「マダマダミタヨ」とか、本当に何なのこれ? っていうような訳分かんないカタカナがバーッて書いてあって、それに音程をつけてひたすら歌っていくだけなんですよ。それを繋げることによって歌ってるみたいに聞こえるっていう。収録は2日間かけて4時間ずつで終わりました。
――なるほど。素人としては本当に一語一音ずつ録っていくのかと思ってました。
下田 どなたに説明してもイマイチ納得させてあげることができなくて、私自身もいまだによくわかってなくて(笑)。渡された台本を読んでいただけなのでアレがどうやったら歌になるのかと。ホンッとに。
――収録するにあたって求められたことや演技アドバイスなどはあったんですか?
下田 特に演技っていうことはしなかったですね。イメージ的にミクちゃんは可憐で清楚なイメージがあったんですけど、それに対してアップテンポな曲に対応させたいということで、ヘッドホンからガイドメロディーが流れていてそれに合わせて録るんですけど、ミクちゃんよりちょっと早いテンポで録ったりだとか、あとは「明るめな感じでお願いします」って。フレッシュでパワフルということを全面に出したかったみたいで、そこを意識してとは言われましたね。
――ふだんお仕事で歌われることもあると思うんですけど、やっぱり自分の声が早いテンポの曲に合っているという意識はあります?
下田 そうですねー。バラードが苦手なんで早いほうが得意ですね。声質的に明るく聞こえるらしくて、特に感情を込めなくても自然に明るく歌ってるように聞こえるみたいです。
――鏡音リン・レンでは、キャラクターデザインを見て、この子だったらこの声だなっていうイメージがあったんですか?
下田 私なりに思った声でまず最初にやったんですけど、「もうちょっとそれよりこういうふうにして」とか色々言われた結果「ストップ!それで!」と言われて。でも、またクリプトンさんの注文がちょっと微妙で、さっきやったのがダメで次やったのがOKと言われたんですけど、いまいちその差がよくわからなくて(笑) え?!どっち? ということもありながら(笑)
――初音ミクを担当された藤田咲さんからアドバイスとかありました?
下田 話したのは録り終わってからですね。何だったんだろ?あの台本は? みたいな。でも、初音ミクちゃんがブームになってからまた喋って、すごいねって。仮歌を作るソフトという程度の認識だったので、初音ミクちゃんがアーティストとして、インターネットを通していろんな人に受け入れられていることがお互いにビックリしました。歌を通して、作った人もそうだし聴く人もそうだし、何らかの感情を動かされて感動するってことは、少なくとも頑張ろうって力になるわけじゃないですか。それっていろんな人の人生に影響してるんだなと思うと、ただの機械というだけじゃもったいないソフトですね。国際交流とかいろんなジャンルに役立っていければいいなと思いますね。
――またインターネットでも盛り上がると思いますが、この鏡音リン・レンでどういった歌を作ってもらいたいですか?
下田 とにかく良さを全面に活かした、リンちゃんだからこそっていう歌とか、レンだからこそっていう個性を大事にしてくれた歌とか、あとはデュエットとかもできるので、ただ歌わせるだけじゃなくて「キャラクターシリーズ」ってところを活かした歌を聴いてみたいですね。この「VOCALOID」の魅力って誰でもプロデューサーになれるところだと思うんですね。なので、おもちゃとして受け入れるよりは、自分のアイドルとしてちゃんと大事にしてあげて欲しいなって思うし、買ってくれた人のもとでかわいがってもらえることが願いなので。愛を持って、命が授かるかどうかはあなた次第ですよ、Youがんばっちゃいなよ! そんな勢いです(笑)
――(笑)最後にファンへのメッセージをお願いします。
下田 インターネットで初音ミクちゃんの歌声を聴いて買ったって方もたくさんいらっしゃるので、たぶん今回も作品が上がってから買う方がいらっしゃると思うんですね。なので、ぜひ神様、職人さんがんばってくださいと(笑)。休まないでなんとかお仕事していただきたいなと思います(笑)