DEEP DIVE ― さかいゆう

Amazon.co.jpが注目するアーティストについて“深く掘り下げる=Deep Dive”コーナー。今回は1stフルアルバム『YU,SAKAI』をリリースするさかいゆうのインタビュー/セルフライナーノーツ&試聴を掲載!

ジャズ、ソウル、R&B、ヒップホップなどの黒人音楽をベースにしながら、決してマニアックな趣味性に陥ることなく、あくまでも“日本語の歌”として成立させる。シンガー/ソングライター“さかいゆう”の1stフルアルバム『YU,SAKAI』は、彼の音楽的特性がはっきりと示された作品となった。竹内朋康(ギター/マボロシ、Super Butter Dog)、 SWING-O(Key./Jamnuts)といった才能あふれるミュージシャンたちとのセッションによるサウンドも超クール。僕らは、またひとつ、日本のポップミュージックの新しい局面を体験することになるだろう。

インタビュアー: プロフィールには“二十歳から音楽をはじめた”とありますが、何か強い動機はあったんでしょうか?

さかいゆう: ミュージシャン志望の友達が交通事故で亡くなったんですけど、そっからですね。歌もピアノもバンドもやったことがなかったし、洋楽を聴いたこともなかったんですけど、いきなり音楽をやろうと思って。彼の意思を受け継ぐ、ということでもないんですけど、何かにとりつかれるように音楽にのめりこんでいったんですよね。その感じはいまも続いてます。

インタビュアー: なるほど。ほとんど1人で作り上げた1stアルバム(「ZAMANNA」)と違い、今回はバンド・メンバーとのセッションが基本になってるとか。

さかいゆう: 気心の知れたメンバーばかりだから、ラクなんですよね。僕はほんとに気まぐれで、たとえばライブの本番でも、リハとは違うことをやりはじめたりするんですよ。だから、呼吸が合う人ではないと、なかなか難しいところがあって。今回のアルバムにも、いろんなタイプの曲が入ってるし…。

インタビュアー: ブラック・ミュージックのテイストがかなり入ってますけど、それだけではなくて。

さかいゆう: ブラック・ミュージックっていう意識はぜんぜんなくて、あくまでもポップ・ミュージックをやりたいと思ってるので。ポップっていう“縛り”のなかで、それをどんなふうに壊していけるかっていうのが楽しいと思うんですよ。お笑いもそうだけど、ひとつの型を壊すっていうところに興奮させられるわけであって。何をやってもいいよ、って言われると、困りますよね(笑)。

インタビュアー: 実際、ふだん作ってる曲もバラエティに富んでるんですか?

さかいゆう: ヒップホップがあったり、EXILEさんみたいな曲があったり、ハナレグミさんっぽい曲もあったり。 このアルバムに入ってる曲は、基本的に歌詞と曲で選んでます。完成度が高いとかってことではなくて、好きなものを選んでるんですけどね。いままで自分がやってきたことの情報も、自然と入ってると思うし。たとえば僕らがゴリゴリのヒップホップをやろうと思っても、エンパイア・ステート・ビルみたいな感じにはならないんですよね。声も違うし、使ってるスタジオも違うから。

インタビュアー: 大事ですよね、それを自覚するのは。

さかいゆう: 僕、アメリカに1年ちょっと住んでたことがあるんですけど、ゴスペルなんかを歌っても、絶対にこいつらには勝てないって思っちゃうんですよ。でも、演歌とか民謡を歌うと、“すごいな、どうやって歌ってるんだ?”って言われる。そういうことだと思うんですよね、きっと。オレは日本人だから…って意識してるわけではないんですけど、『井の頭公園』みたいな曲って、アメリカ人からは出てこないと思うんですよね、メロディもコンセプトも。カレーをたべた後、ふたりで公園を歩きながら、季節を感じてるっていう。でも、完全に邦楽っていうわけではなくて、洋楽からの影響もあって。

インタビュアー: 竹内さんがラップを担当している「SHIBUYA NIGHT」も印象的でした。渋谷の空気とディープなヒップホップがしっかりひとつになってて。

さかいゆう: 渋谷って、東京のターニング・ポイントだと思うんですよね。すごく都会なんだけど、ギスギスしてて、平和じゃない部分もたくさんあって。渋谷に行くと、すぐに帰りたくなっちゃうんですよ。それはやっぱり、何らかのエネルギーがあるからだと思うし、それを曲にしてみようと思って。竹ちゃんのラップは、“ラップ、オレじゃダメなの?”って言うから、やってもらいました(笑)。

インタビュアー: 「MONEY CRUSH」の「あぁもうお金以外は全部あるのに」という歌詞もリアルですよねえ。

さかいゆう: 世の中の女性にあてたメッセージソングです(笑)。こちとら、お金以外は全部あるぜ、っていう。サウンドはヒップホップだけど、歌詞はフォーキーというか、哀愁がある。そのアンバランスさを狙った曲ですね。

インタビュアー: 歌詞のことでいえば、「Dreaming」の「おれは生きてるぞ」というフレーズにもグッときました。

さかいゆう: 僕なりの死生観が出てると思いますね。さっき話した友達が、夢に出てきたことがあるんですよ。海のなかで泳いでると、そいつが現れて“あれ、おまえ、死んだんじゃねえの?”っていう……。彼は18歳のままで、自分だけ年食ってるんですけど、そういうことを辛気くさい感じではなく、“オレは生きてるぞ”っていうポジティブな歌にしたくて。

インタビュアー: アルバム全体に言えることですけど、生命力にあふれてますよね。

さかいゆう: 人のために歌ってるというか、最終的には“元気になろうよ”ってことを言いたいんですよね。もしかしたら応援歌には聴こえないかもしれないけど、人に元気を与える音楽じゃないと、良くないと思ってるので。あとは、ちゃんとポップ・ミュージックであること。そこだけは自信があるんですよね。

インタビュー・文 森朋之



■ 『YU,SAKAI』セルフライナーノーツ

1. Yu’s groove: ラジオ番組「Jam the nuts」で出演者とジャムってる時に偶然できた曲です。
黒人でも、白人でもない、まさに忍者系ファンクチューン。ベース(僕)とドラム(小森耕造)の一発録りの緊張感が、はりつめたGroove感を出しています。

2. SHIBUYA NIGHT: アーバンなのにゴツゴツしている、渋谷ゲットーの独特な世界を僕の視点から見たファンクチューンです。竹内朋康のクールなラップ、ピアノソロはいつ聞いてもスリリング。
■試聴リンク 「SHIBUYA NIGHT」

3. よくばりホリデイ: 伝説のニューオリンズバンド、ミーターズのビートで遊んでいるうちに出来た曲です。
コーラスがよく利いていてとてもポジティブなエネルギーを感じる曲。
最初は遊びの曲だと思ってたけど、ポップミュージックとして完成度が高くて意外と名曲かも??後半ブレイク後の多重録音のアカペラが最近のJ-POPにはあまりないタイプの展開なので新鮮に感じます。
■試聴リンク 「よくばりホリデイ」

4. Money Crush: 歌詞がおもろくて、実は深い曲。
女性と付き合うと、やたらとお金がかかる。
この曲は世の女性陣に送った切実なメッセージソングです。
うねりまくるシンセベースがかっちょいい。
■試聴リンク 「Money Crush」

5. POSEIDON: 海神。超低音のシンセベースが海底のイメージ。

6. ポロリ: 古い曲で、実家の高知の桂浜で寝そべってるのを思い出して作った曲。
ヒップホップ系のビート、ピアノとメロウなボーカルのアンバランスさが気持ちイイ。
■試聴リンク 「ポロリ」

7. Dreaming: アルバムに入る予定ではなかったけど、スタッフの強い希望で入りました。
アルバム中、一番スピリチュアルな曲。友達の死を悲しまない為のウタ。
四つ打ちと生のチェロのアレンジがオモシロイ。
■試聴リンク 「Dreaming」

8. 無言の月: ディープな曲が続きます。 この曲のテーマは勇気と挑戦。ポップシーンではご法度の6分を軽々と超える長尺曲。
今にも切れそうな糸のような緊張感ある、さかいゆうバンドのプレイとウタ。
このアルバムのクライマックスだと、個人的には思います。

9. 井の頭公園: むかし、カレーを食べた後、この曲でウクレレを弾いているnuccaと、よく遊んでいました。最近では珍しいアナログ録音がアルバムの中で特異な空気を出している、アコースティックなneo Folk Song。レコーディング・エンジニアの伊藤さんの天才的な録音センスでピアノの音色がまるで池に広がる波紋のようにきこえます。
■試聴リンク 「井の頭公園」

10. オレアの夢: 「ほんの少しの勇気から」という絵本を読んで書き下ろした曲。
主人公のオレアちゃん視点で書きました。
ピアノ&ボーカルのシンプルなアレンジがほっこりします。
■試聴リンク 「オレアの夢」

11. BIG BANG: どんな偉そうな奴も、いつかみんな平等にハゲで死ぬ。
そんな宇宙的なスケールのGospel Song。
人生笑わずには生きてゆけない。あなたの為に、人の為に歌う。
その涙が乾くまではこの歌をやめない。
そんなウザイ曲です。
■試聴リンク 「BIG BANG」


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マイフェイバリットディスクス
text by さかいゆう

小谷美紗子『PROFILE』
言葉のチョイスが凄いアルバムだと思います。まず暗い。出口がない。聞くのに莫大なエネルギーがいる。このコトだけでエネルギーのありあまってたあの頃(思春期~20歳)に聞くにはピッタリのアルバム。彼女のアルバムとの出会いが、具体的に僕を音楽の世界へと導いてくれました。20歳前の僕らそのもの。

山下達郎『For You』
達朗さんのアルバムはどれも完成度が高く、したがって選ぶ場合は好みの問題になってきます。アルバムの質感としては『スペイシー』が好きなんですが、6/8ソウルバラッドの「ふたり」という曲があまりにもイイ曲なのでこのアルバムを選ばせていただきます。数年前に出たソノリテも凄いアルバムです。新旧問わず、どの時代でも妥協のなき姿勢を感じます。

Miles Davis『Kind of blue』
なんか音楽に関して悩み事があるごとに聞いてますね。このアルバムの曲をコピーしたことは一度もないけど、ほとんど音楽として完璧に近いアルバムだと思います。演奏とかプレイヤーがどうこうというより、バッハの音楽のように何か敵わない宇宙に向かって動いている空気感。何から何まで素晴らしい。リラックスしていてなおかつ、音楽の鼓動は高い。

D’Angelo『Voodoo』
とにかく汗臭くてファンキーで脱力していてクールなのになぜか熱い、男が惚れる男の音楽。フェイドインで始まる一曲目から、時代を掴む不思議な魅力に溢れている。発売当時、僕のオヤスミBGMでした。とくに最後の曲「アフリカ」なんて自分の子供の子守唄に使いたい!

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