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カナブンとスズメさんが書き込んだレビュー (空想の世界)

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加藤周一――二十世紀を問う (岩波新書)
加藤周一――二十世紀を問う (岩波新書)
海老坂 武著
エディション: 新書
価格: ¥ 840

5つ星のうち 4.0 加藤周一の素描, 2013/5/7
第一章「〈観察者〉の誕生」、
第二章「戦後の出発」
第三章「〈西洋見物〉の土産」、
第四章「雑種文化論の時代」
第五章「1960年代――外からの視線」、
第六章「〈日本的なもの〉とは何か――〈精神の開国〉への問い」
第七章「希望の灯をともす」から構成されます。

血気盛んな若き頃の加藤さん、独自の思想を構築するため試行錯誤をしていた加藤さん、
そして語ることに力を尽くした晩年の加藤さんを素描し、
加藤さんの考え・主張の先見性、意義、そして疑問点を提示していきます。

加藤さんがこなした仕事は多くかつ広くかつ深いですが、
本書は加藤周一の思想を理解するための一つの試みと言えます。

作画汗まみれ 改訂最新版 (文春ジブリ文庫)
作画汗まみれ 改訂最新版 (文春ジブリ文庫)
大塚 康生著
エディション: 文庫
価格: ¥ 730

3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 ジブリ文庫版『作画汗まみれ』, 2013/5/1
『作画汗まみれ 増補改訂版』を「文春ジブリ文庫」とした改訂最新版です。
全体で10章からなり、それらに高畑・宮崎両監督の寄せ書きと論文が付されています。

筆者はアニメーションは“動き”が第一であり、
制作には時に“遊び心”が必要との認識に立ちます。
自身のアニメーターとしての経歴、他のアニメーターたちの仕事、
そしてアニメーション会社の内情などについて見ていきます。
また、デジタル化の時代、ますます演技のタイミングなど“動き”が
重要になっているとの指摘は無視できないでしょう。

考え方の近い人や異なる意見の人のことについて適度の距離を保って論じつつも、
冷酷なところはなく、大塚氏の優しい人柄が行間に見え隠れします。

めざめれば魔女 (岩波少年文庫)
めざめれば魔女 (岩波少年文庫)
マーガレット・マーヒー著
エディション: 単行本(ソフトカバー)
価格: ¥ 840

2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 変身, 2013/4/8
14歳のローラ・チャーントは弟のジャッコ、母親のケートの3人で暮らしています。
ある朝、ローラは何かが起こる前触れを感じます。
学校の終わりにジャッコを連れて帰る途中とある店に入ると、
カーモディ・ブラックという男が現われ、突然ジャッコの手にスタンプを押します。
その後ジャッコの様子はおかしくなり、入院することになります。
弟の衰弱が止まらないのを見て、ローラは隠れ魔女のソリー・カーライルの家を訪ねます。
彼らからジャッコを助ける方法を知り、それを試すことに...。

自分たちを捨てた父親への怒り、母親の新しい恋愛への反発、
自身の恋の芽生えに対する戸惑いなどを体験しながら、
弟を助ける過程で思春期の微妙な心理状態が変化し、
ものごとは適当な所に落ち着いていきます。
良質のヤング・アダルト小説だと思います。

足音がやってくる (岩波少年文庫)
足音がやってくる (岩波少年文庫)
マーガレット・マーヒー著
エディション: 文庫
価格: ¥ 693

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 2週間−苦悩する人々−, 2013/3/10
バーニーはお父さんのジョン、新しいお母さんのクレア、
二人の姉のトロイとタビサと暮らしています。
ところがバーナビー大叔父さんが死んでから、
バーニーはレースの襟のついた青いビロード服の男の子を見たり、
「バーナビーが死んだ! ぼくはとってもさびしくなるよ」と
奇妙な声が聞こえたりします。
そしてバーニーの耳に誰かの足音が聞こえ始め、
ついに裏口のドアをノックする音が...。

特別な能力を背負った人たちが自身の能力を使って悪者を退治するといった英雄主義的なお話ではなく、
特殊能力を持つ人間たちが現実の日常生活との摩擦に悩み、
自身の苦しみの原因を直視し、明日の自分をつかんでいくお話です。

カリオストロ伯爵夫人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
カリオストロ伯爵夫人 (ハヤカワ・ミステリ文庫)
モーリス・ルブラン著
エディション: 文庫
価格: ¥ 798

5つ星のうち 4.0 ルパンの回想録−若き頃のルパンの冒険, 2013/2/17
若き頃のアルセーヌ・ルパンの冒険物語です。
ルパンとある一団そして絶世の美女カリオストロ伯爵夫人たちが
中世の修道院が遺した財宝をめぐって競り合います。
ロマンスあり、神経戦あり、手に汗握るシーンが展開されます。
ライバルであり、恋人でもあった伯爵夫人との
一語一語がぶつかりあってとびちる火花も見ものです。

内容的には、伯爵夫人の謎の美貌があるとはいえ、推理の要素は薄いように思えます。
ルパンの若き頃の回想録のようにも読めました。

宮本常一『忘れられた日本人』を読む (岩波現代文庫)
宮本常一『忘れられた日本人』を読む (岩波現代文庫)
網野 善彦著
エディション: 文庫
価格: ¥ 1,071

2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 四つの講座, 2013/2/9
『忘れられた日本人』(宮本常一著)を虫眼鏡にして、
中世の日本社会を浮かび上がらせた歴史書です。

全体は四章構成です。
第一講「宮本常一との出会い――民俗語彙の再発見」では、
著者と宮本常一との接点、日本語そして“進歩”への疑念などにつて見ていきます。
第二講「女の『世間』」では、老人、女性、子供、遍歴民について取り上げます。
中世日本女性は欧米の女性よりもアクティブであり、
また家の財政の実権を握っていたことが分かります。
第三講「東日本と西日本」では列島の西部と東部における
社会構造の差(ケガレ意識や部落差別など)を
形質人類学や朝鮮半島や北東アジアとの交流から解き明かしていきます。
第四講「『百姓』とは何か」では宮本常一の限界とこれからの課題を提示します。
百姓は農耕民に限らないこと、漢字だけでなく
平仮名・片仮名も知らない人々の世界がまだ未解明である、と指摘しています。

あとがきと解説(安丸良夫氏)が続き、本書は締めくくられます。
アジア各地域と交流のあった、多様で力強い中世日本社会が見えてきます。

ドイツ語で読む珠玉の短編―対訳 目に見えないコレクション・広間にて・パン
ドイツ語で読む珠玉の短編―対訳 目に見えないコレクション・広間にて・パン
諏訪 功著
エディション: 新書
価格: ¥ 998

4 人中、4人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 三つの短編, 2013/2/5
収録されている作品は『パン』(ヴォルフガング・ボルフェルト)、
『目に見えないコレクション ドイツ・インフレ時代のエピソード』(シュテファン・ツヴァイク)、
『広間にて』(テーオドア・シュトルム)の3作品です。

ページ左にドイツ語原文が、そしてページ右には日本語訳があり、
難しい単語・語句があってもストーリーを追っていくことができます。
ドイツ語学習初級をマスターし、中級の学習を始めたレベルであれば、
本書にトライできると思います。

淡々とした筆致で進んでいく『パン』、
ないはずの絵画をあるものとして振舞う、やや狂気を感じる、
『目に見えないコレクション』、
おばあさんのひと夏の庭での思い出を回想した『広間にて』
と珠玉の文学作品を堪能できます。

ぜひ続編を期待したいところです。

歴史を考えるヒント (新潮文庫)
歴史を考えるヒント (新潮文庫)
網野 善彦著
エディション: 文庫
価格: ¥ 452

5つ星のうち 4.0 ことばから見えてくる中世社会, 2013/2/3
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
“日本”語から読み解いていく“日本”の歴史、特に中世史です。

第一章「『日本』という国名」、第二章「列島の多様な地域」、
第三章「地域名の誕生」、第四章「『普通の人々』の呼称」、
第五章「誤解された『百姓』」、第六章「不自由民と職能民」、
第七章「被差別民の呼称」、第八章「商業用語について」、
第九章「日常用語の中から」、第十章「あとがき」という構成です。

「日本」という国名を手始めに、「関東」‐「関西」の呼称の誕生と当時の国内の状況を見ていきます。
さらに「百姓」は必ずしも農民ではないということ、
いわゆる奴隷身分と職能民の違い、ケガレの意識の成り立ち、
「市場(市庭)」の場所や手形・切符など、
当時の社会とともに網野氏の持論(「網野史学」)を眺めていきます。

網野氏および「網野史学」の中の余裕、
また“日本”中世社会の多様さ、そして“日本”語の豊かさを知ることができます。
一方で、余裕であること、多様であること、豊かであることが
現代の“日本”には希薄のように感じました。

昭和という時代を生きて
昭和という時代を生きて
氏家 齊一郎著
エディション: 単行本
価格: ¥ 2,520

1 人中、0人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 3.0 昭和立ちぬ〜日テレのコペル君〜, 2013/1/24
2011年3月に亡くなった、前日本テレビ放送網会長であった
氏家齊一郎氏が自らの生い立ちと自身が生きた昭和という時代を語ったものです。
本書は『熱風』(スタジオジブリ発行)に2011年1月〜2012年8月に
かけて連載された聞き書きを単行本化したものです。

全18章と「解説」(辻井喬氏・鈴木プロデューサー)、
あとがき(塩野米松氏)そして氏家眞子夫人の言葉から構成されます。
ジブリとの関係から始まり、戦中の家庭・学校・社会の様子、
戦後の大学生活(渡邉恒雄氏や網野善彦氏といった学友たちとの交流や演劇活動)、
共産党入党と離党、そして読売新聞社への入社を振り返ります。
そして経済部記者としての仕事や読売新聞の社内・社外のトラブルを述べながら、
復興に邁進し、現代の日本社会の基礎を築いた戦後昭和の日本の姿を見ていきます。

氏家氏の死去により連載が終了したため、氏がこの連載を
どのように締めくくろうとしていたのかは分からないため、本書は未完成です。
未完成のため残念な点ともしかしたら幸せな点があります。
「非権力」(252-254頁)という意味が不明瞭な言葉を残し終わっています。
マスコミは政府・体制批判するばかりでなく、いいことをしたら褒めよ、
と氏家氏は主張し「体制批判」だという朝日新聞を批判します。
しかし、昨今の読売新聞による政府=権力の政策決定に関与しようとする
スタイルに全く問題がないとはいえないと思います。
このスタイルははたして「非権力」と言えるのでしょうか。
他方、朝日新聞は構造改革・新自由主義を支持する路線になっており、
朝日が「体制批判」側との指摘は理解に苦しみました。
この点について氏家氏の反論を聞けないのは残念です。

もしかしたら未完成で幸せな点は、
2011年3月11日の東北関東大震災に伴う福島第一原発の事故以降、
各地で脱原発の動きが広まり、ジブリの宮崎監督と鈴木プロデューサーは
『熱風』の文章を読む限り、原発再稼動に非常に消極的です。
しかし、読売新聞グループは原発を必要とする立場です。
もし連載が続いたら大震災と、戦後日本そして読売と不可分の
原発についても話題が上ったはずであり、
氏家氏が原発でジブリの面々と意見の食い違いを見ずにすんだのは幸せだったかも知れません。

以上、本書は「メディアの大御所」と呼ばれた一人の人間の
後ろ姿から明暗ある昭和という時代を見ていく書です。

ルパン、最後の恋 〔ハヤカワ・ミステリ1863〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
ルパン、最後の恋 〔ハヤカワ・ミステリ1863〕 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
モーリス・ルブラン著
エディション: 新書
価格: ¥ 1,365

2 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 ルブランが夢見たこと, 2013/1/12
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
コラ・ド・レルヌは社交界の花で、大使館のパーティーでも注目を集めていました。
しかしパーティーから戻ると父親の元外交官レルヌ大公が自殺してしまいます。
遺言書からコラの周囲にいる4人の紳士の中に
アルセーヌ・ルパンがいることを知ります。
その後彼女が実は英国の高貴な血を引いていることが明らかになると、
彼女の身に危険が忍び寄って来て...。

作者が推敲する前の状態であるだけに全体として荒削りであり、
ストーリーの彫り具合は深くありません。
しかし、第一次世界大戦という総力戦とその後の内政の混乱を見て
ルブランが実現を夢見たことをルパンに代行させようとしたのではないか、と思いました。
エルガーの「チェロ協奏曲」やラヴェルの「組曲《クープランの墓》」
といった作品に共通する祈りを感じました。

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