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5つ星のうち 3.0
昭和立ちぬ〜日テレのコペル君〜, 2013/1/24
2011年3月に亡くなった、前日本テレビ放送網会長であった
氏家齊一郎氏が自らの生い立ちと自身が生きた昭和という時代を語ったものです。
本書は『熱風』(スタジオジブリ発行)に2011年1月〜2012年8月に
かけて連載された聞き書きを単行本化したものです。
全18章と「解説」(辻井喬氏・鈴木プロデューサー)、
あとがき(塩野米松氏)そして氏家眞子夫人の言葉から構成されます。
ジブリとの関係から始まり、戦中の家庭・学校・社会の様子、
戦後の大学生活(渡邉恒雄氏や網野善彦氏といった学友たちとの交流や演劇活動)、
共産党入党と離党、そして読売新聞社への入社を振り返ります。
そして経済部記者としての仕事や読売新聞の社内・社外のトラブルを述べながら、
復興に邁進し、現代の日本社会の基礎を築いた戦後昭和の日本の姿を見ていきます。
氏家氏の死去により連載が終了したため、氏がこの連載を
どのように締めくくろうとしていたのかは分からないため、本書は未完成です。
未完成のため残念な点ともしかしたら幸せな点があります。
「非権力」(252-254頁)という意味が不明瞭な言葉を残し終わっています。
マスコミは政府・体制批判するばかりでなく、いいことをしたら褒めよ、
と氏家氏は主張し「体制批判」だという朝日新聞を批判します。
しかし、昨今の読売新聞による政府=権力の政策決定に関与しようとする
スタイルに全く問題がないとはいえないと思います。
このスタイルははたして「非権力」と言えるのでしょうか。
他方、朝日新聞は構造改革・新自由主義を支持する路線になっており、
朝日が「体制批判」側との指摘は理解に苦しみました。
この点について氏家氏の反論を聞けないのは残念です。
もしかしたら未完成で幸せな点は、
2011年3月11日の東北関東大震災に伴う福島第一原発の事故以降、
各地で脱原発の動きが広まり、ジブリの宮崎監督と鈴木プロデューサーは
『熱風』の文章を読む限り、原発再稼動に非常に消極的です。
しかし、読売新聞グループは原発を必要とする立場です。
もし連載が続いたら大震災と、戦後日本そして読売と不可分の
原発についても話題が上ったはずであり、
氏家氏が原発でジブリの面々と意見の食い違いを見ずにすんだのは幸せだったかも知れません。
以上、本書は「メディアの大御所」と呼ばれた一人の人間の
後ろ姿から明暗ある昭和という時代を見ていく書です。