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エストニアを知るための59章 (エリア・スタディーズ111)
エストニアを知るための59章 (エリア・スタディーズ111)
小森 宏美著
エディション: 単行本
価格: ¥ 2,100

1 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 ハンディで読みやすく、エストニアを知る上で欠かせない出版でした, 2013/4/21
エストニアの歴史、政治、経済、文化、芸術、生活を知りたいという欲求を適えてくれる本でした。
5年に一度、首都タリンの巨大な野外歌謡祭会場で行われるエストニア全国歌謡祭に特に関心を持っています。独立を果たした直後の感動的な歌謡祭の民衆の歌声の放映に圧倒されたことが、エストニアへの関心を持ち続けてきたベースにあります。
ユネスコの無形遺産にも登録された音楽祭で、「民族と国とをつくった祭り」と書かれている感動的なイベントについては、257ページに庄司博史氏によって説明してあり、全景は260ページの写真で伺えるようになっていました。壮観です。

「言語」の章でも触れられていますが、バルト三国の中でもフィンランドと同じ言語体系を持ちながら、ロシアに近いため、ずっと独立を果たし得なかったエストニアの思いも感じられる内容でした。
民族自決の考え方で独立する契機となったのは、ロシア革命やドイツの第1次世界大戦敗戦という強国のパワーバランスが崩れることによるのは知っています。本書の「歴史」や「政治」の章で、その苦難の歩みを知ることができます。記述が平易なのが嬉しいですね。

第1次世界大戦後に独立を果たしたエストニア民族の喜びとその後に続く、果てしない辛酸さに思いを馳せるとこの国の影の部分が見えてくるでしょう。
113ページの文章を引用いたします。「ナチといえば悪人だと思い込んでいるけど、ここでは違った。彼らは(ドイツ兵)はていねいにドアをノックして家を訪れ、子供たちにはチョコレートをくれた。ロシア人は違う。彼らは家に押し入り、殺し、奪っただけだった」と言う言葉は胸を打ちます。このよう過酷な歴史の流れを理解することで、国家の成り立ちや支配体制の変遷の本質や民衆の思いを知ることができると思います。

「人間の鎖」のように手をつなぎ身体で抵抗を訴えるエストニアの人々の心の叫びが感じられます。再度の独立への思いがそうさせたのでしょう。

現代のエストニアが抱えている問題や、エネルギー、資源、環境などの産業に関する項目もありますので、多面的な理解もできるように工夫されています。「スカイプ発祥の地」を読めば、IT立国のエストニアが見えてくることでしょう。

本書のところどころに800年の歴史を感じさせる建造物が掲載してありました。40ページに小森宏美氏が撮影したタリン旧市街の様子の写真がありますし、212ページに「世界遺産の旧市街」の項目に観光に必要な情報も紹介してありました。タリンを歩く際の観光ガイドの副本的な役割も果たせそうです。

マイ・ハート
マイ・ハート

5つ星のうち 4.0 伸びやかで、透明な歌声に魅せられて, 2013/4/21
レビュー対象商品: マイ・ハート (CD)
何を歌わせても素敵な歌唱を披露するシセルの幅広い魅力を1枚のCDで堪能できるようになっていました。2004年発売ですから10年近く前のアルバムですが、内容の素晴らしさが多くのリスナーの支持を集め続けているのでしょう。

8曲目の哀愁を帯びた名曲、ピアソラ「忘却」は強く印象に残りました。オリジナルの雰囲気を残しながらも彼女の抒情的な世界の構築が感じられ、しっとりとした情感はリスナーを魅了するものでした。ジャンル分けが不要なほどの素晴らしさと美声に酔いしれます。

軽やかで爽やかな歌唱の「ユー・レイズ・ミー・アップ」も魅力的でした。透明感あふれる声質の良さを最大限に生かすのは、ポップスでもクラシックでも可能ですが、クロスオーヴゥー系の曲により威力を発揮します。伸びやかさと広がりは唯一無二のものだと思いました。

勿論、プッチーニの「私のお父さん」も高く評価します。見事なリリック・ソプラノで、細く透き通るビロードのような声は、オペラのアリアをずっと身近なものにしてくれることでしょう。2分強の箇所は特に絶品でした。

シューベルトの「アヴェ・マリア」は2種類、収録してありました。11曲目は、ブリン・ターフェルとのデュエットでした。合唱も加わって敬虔な雰囲気が伝わってきます。
ただ、ブリンがオペラティックにドラマティックに歌いあげており、個人的には15曲目のボーナス・トラックの「アヴェ・マリア」のほうを支持します。

この「アヴェ・マリア」は、リーフレットの吉村浩二氏の解説にもあるように日産ブルーバード・シルフィのCMで使用されたのでお馴染みのヴァージョンでしょう。少しテンポを遅くして、切々と厳かに歌うシセルにより、この曲の魅力が倍加されたように感じます。ヴィヴラートの少ない歌唱ですので、ボーイ・ソプラノのような雰囲気も感じられ、このアルバムのラストを飾るに相応しい歌唱でした。千住明の編曲が惹きたてています。

人口学から見た少子高齢社会 (アーユスの森新書)
人口学から見た少子高齢社会 (アーユスの森新書)
嵯峨座 晴夫著
エディション: 単行本
価格: ¥ 945

5つ星のうち 3.0 予想される少子高齢社会に対して、図表を用いながら解説した書, 2013/4/21
「少子高齢社会」と言われて久しいですが、人口ピラミッドを眺めていますと、当然ながら未来の姿はますます超高齢化へ邁進しているのが見てとれます。
本書は、「人口学から見た」と標題に書かれているように、人口学、社会統計学を専攻された早稲田大学名誉教授の嵯峨座晴夫氏の著作でした。

序 章「人口学的見方について」では、2060年までの老年人口、生産年齢人口、年少人口の推移が示され、予測値は人口問題研究所の中位推計を使用していました。2060年の総人口は8700万人、65歳以上の老齢人口は3500万人(総人口比39.9%)となるそうで、「人口高齢化が急速に進む」ことが理解できます。

第1章「人口減少と超高齢社会の到来」の40ページに記されていますが、「日本の人口転換の途中で特徴的な事実は、戦後の第一次ベビーブームのあと、出生率が急速に低下」し、それが世界一にまで高める要因と論じています。「人工妊娠中絶が母体の保護を目的に合法化されたことなどが、むしろ強大な影響を与えたと言われている」と論じていました。日本の住宅事情もそれの要因に挙げられています。51ページの諸外国との比較の表を見ても日本の高齢者比は格別に上昇しているのが伝わります。

第2章「人口が社会を変える」では、「扶養負担の増大」を指摘し、「高齢者の介護や医療、年金などの問題が、扶養負担の増大」させる点も書かれています。「高齢化は役割喪失の過程に対応している」という記述は面白い展開でした。

第3章「社会が人口を変える」では、89ページから「女性の高学歴化とともに増えた社会進出にともなって上昇していることによって、退職・出産を抑制している」とありました。そうかも知れませんが、保育所の不足をとってみても、政策的な遅れもそこには当然あると思います。

第4章「長寿化の原因と結果」、第5章「高年齢人口の特徴と高齢者の生活」、第6章「日本人口の将来展望」、第7章「新しい高齢者の生き方―サクセスフル・エイジング―」と続きます。

統計学がご専門の筆者ですので、豊富な図表は理解を助けてくれますが、本文に数値が羅列して書かれるため、読みにくさも随所で感じました。図表を見れば一目瞭然で状態を把握できますので、もう少し数値の記載を押さえられた方が良かったのに、という感想を持ちました。

197ページに書かれたラストの文章の「今後、さらに進展すると予想される少子高齢化社会においては、高齢者を対象にした対策を立てるという発想ではなく、全ての世代の全ての人が生きやすい社会をつくることをめざすなかで、高齢者の生涯発達を実現することだと思います」というまとめはその通りですが、その後の提言も読者は期待してしまいます。

【精米】北海道産 無洗米 ななつぼし 5kg 平成24年産
【精米】北海道産 無洗米 ななつぼし 5kg 平成24年産
価格: ¥ 2,246

3 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 4.0 この価格帯のお米としては普通でしょう, 2013/4/21
Amazon.co.jpで購入済み(詳細)
ななつぼしの評判を頼りに注文して見ました。これくらいの価格帯になると競争相手の銘柄も増えてきますので、それを凌駕するまではいかなかったですね。

食味は個人的な印象が強いので、客観的な評価は難しいと思いました。
いつもは生協の無洗米を利用していますし、以前は秋田県大潟村から送ってもらっていたので、それらと比較しても一定の評価は付けられますし、検討に値する品質だと思いました。

魚沼コシヒカリと同じ特Aとのことでしたが、そこまでの評価は付けられませんが、十分に美味しかったです。

マクロ経済学 第2版
マクロ経済学 第2版
伊藤元重著
エディション: 単行本
価格: ¥ 2,940

2 人中、2人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
5つ星のうち 5.0 今こそ、「マクロ経済学」を学ぶ必要があると思いましたので・・・・, 2013/4/14
レビュー対象商品: マクロ経済学 第2版 (単行本)
東京大学大学院経済学研究科教授で、総合研究開発機構(NIRA)理事長の伊藤元重氏の著作です。テレビ東京の「ワールドビジネスサテライト」のコメンテーターとしても有名な方です。『マクロ経済学』が10年ぶりに書きなおされたわけで、第2版を読んでみました。

15章に分かれています。1セメスターで活用される教科書なのでしょうが、情報量の多さに驚きました。分かりやすく平易な文章で綴られていますが、経済学の門外漢にとっては最後まで読了するのも大変でした。
3色刷りですし、豊富な図版が理解を助けてくれます。

「まえがき」にありますが、現実の経済問題に関心を持ちながら理論的な基礎を学べるように意図された編集がなされています。

まず概説的に「マクロ経済学とはどういう学問か」があり、Part 1「マクロ経済学の基礎」として「1 マクロ経済学のとらえ方」からスタートします。
19ページに、様々な基本的な経済指標の意味が紹介してあります。基礎的な用語ですが、簡潔に正確に伝える際には参考になります。

「マクロ経済の鳥瞰図」は企業と政府と家計の関わりと役割を図式化したもので、ここでの基本的な取引を知ることがサービスや財の流れを理解することにつながるわけです。
「実質GDP成長率の推移(1960〜2011年)」で、日本と韓国、アメリカを比較していますが、日本の景気低迷に苦しむ姿がグラフから見て取れます。

「2 マクロ経済における需要と供給」では、成長予測と財政運営にも触れられており、財政健全化策での実質2%(名目3%)の成長率の想定や成長戦略に対しては楽観的な予想という批判を紹介しながら、高い成長を実現できる政策の実行と捉える筆者のある種の「気配り」を感じ取りました。

「3 有効需要と乗数メカニズム」では、「消費税は景気を悪化させるか」という点に関して、北欧諸国の税収の使われ方や手厚い社会保障制度、潤沢な税収をもとに手厚い労働者保護制度の確立などを例に挙げ、「税制の改正は長期的な経済のあり方を決めるもので、短期的な視野に縛られてはいけないのです。」とまとめていました。

「4 貨幣の機能と信用創造」「5 貨幣需要と利子率」と続き、「6 財政政策の基本的構造」では、社会保障負担率と租税負担率という国民負担率の推移(1955〜2012年)を提示し、一般会計の歳入と歳出をグラフで可視化しています。財務省の財政資料は円グラフですが、本書では棒グラフにして表しています。歳入における公債と歳出に占める社会保障の大きさが一目瞭然で伝わることでしょう。

149ページには「世代会計」の考え方に触れ、恩恵と負担の違いを数値化しています。これから生まれてくる将来世代の負担が非常に重く、恩恵が相対的に小さくなっていることを紹介していました。世代間格差の是正を真剣に考えないといけないタイミングでしょうね。

「7 財政・金融政策とマクロ経済」では、156ページに金融政策への政治的介入に言及しています。伊藤元重氏が考える政府と中央銀行のあり方が明示されています。関心のある方はご一読を。
166ページの「フリードマンのフィリップ曲線と自然失業率」への説明は分かりやすいものでした。

なお「金融緩和の波及メカニズム」は172ページに図式して説明してあり、貨幣供給量増大(金融緩和)→資産市場での利子率低下→投資増大→乗数効果→GDP増大となるのですが、ここで流動性の罠に触れ、「不況が深刻化して、多くの企業が保守的になり投資を控えようとしたら、利子率が低下したからといって投資は増大しないかもしれません。このような場合には、金融政策の効果は非常に弱いものとなります。」と結んでありました。
なおその後の展開は財政支出増大にも触れていました。興味は尽きません。

「8 総需要と総供給」の後は、Part 2「マクロ経済学の応用」で、「9 労働市場の機能と失業問題」「10 インフレーションとデフレーション」「11 財政破綻と財政健全化」「12 金融政策と金融システム」「13 国際金融市場と為替レート」「14 通貨制度とマクロ経済政策」「15 経済成長と経済発展」という章立てで、より具体的な現実の経済課題について言及してあります。

245ページの「インフレは再来するか」という命題について、日本銀行も「きびしい不況よりもインフレのリスクを賭けても大胆な金融緩和策を行うという選択をするかもしれません。」と述べています。黒田総裁によって賽は投げられたのです。

同様に「インフレは財政危機を救うのか」も大切なテーマでした。残念ながらインフレになっても財政負担軽減効果は消えるようです。将来の社会保障負担に影響がないのがその理由のようです。

なお各章に演習問題があり解答も掲載してありますので、理解の範囲が明確になると思いました。
包括的な視点と網羅的な解説、多くの経済課題への一定の答えを知る上でも好著であるのは間違いありません。

アフガンからの風
アフガンからの風
長島 義明著
エディション: 大型本
価格: ¥ 3,990

5つ星のうち 5.0 1977年秋のアフガニスタン 平和だった頃の美しい街と人々の姿, 2013/4/14
レビュー対象商品: アフガンからの風 (大型本)
30数年前の何気ないアフガニスタンの人びと日常の姿が美しく切りとられていました。
訴求力のある写真が、平和だった頃の生き様を見事に表現しています。

冒頭に「1978年に軍事クーデターが起き、翌年には旧ソ連軍が侵攻を開始。その後、内戦の激化、アメリカ軍による空爆、テロの勃発と、戦場状態が続いている。」と書かれている通りのアフガンしか知らない者にとって、この写真集は全く違う光景と表情が収められていました。

表紙にも使用されているハズラト・アリー廟前の広場で、数え切れないほどの白い鳩が飛び立っている光景と全身をブルカで覆った女性、そしてラピス・ラズリが放つ光沢のある青の背景が目に飛び込んできました。

ターバンを巻いた老人の頭に留まる白い鳩。餌を与える少年たちの後ろには無数の白い鳩の乱舞。30数年前の「平和の象徴」の鳩の姿と、戦場となって荒廃した近年の報道とのギャップが平和の尊さを伝えているかのようでした。
6ページの聖都マザリシャリフの瑠璃色に輝くモスクのブルータイルの美しさもまた当方を魅了する美しさでした。

ファイザーバード、カイバル峠、ヒンドゥークシュなど自然の景観、厳しい環境の中で生き抜く人々の姿も印象に残りました。何れも写真家・長島義明氏の技量の冴えが感じられるとともに、20代から現在まで世界100ヵ国以上撮影旅行をされてきた自由な旅の魅力が伝わってきます。

カーブルの旧市街のバザールの店先には、鮮やかな布地、山積みされた豊かな野菜や果物、香辛料やお茶、吊り下げられた肉やカバブ、パン、銀細工など、日常の営みの豊かさが伝わってきます。こんなアフガニスタンもあったわけです。

121ページ以降には、バーミヤンの大仏の景観が写し取られていました。今ではイスラム過激派によって完全破壊されてしまったのは、日本でも報道されていますのでご存じでしょう。
ハズラト・アリー廟の白い鳩の姿を表紙に持ってきた長島さんの平和の希求への思いが強く感じられる写真集でした。

KIMIKO
KIMIKO
出品者:玉光堂
価格: ¥ 4,412

5つ星のうち 5.0 名アルバム 伊藤君子さんの素晴らしさが全曲から伝わってきます, 2013/4/14
レビュー対象商品: KIMIKO (CD)
リーフレットの伊藤君子さんのコメント「久しぶりのスタジオでのレコーディング・セッションでした。嬉しかったー! 楽しかった!」の通りの内容でした。

2000年3月、ニューヨークでの収録でした。小曽根真のプロデュース、アレンジャー、ピアニストという小曽根の完全バック・アップがアルバムの質を高めたのは間違いなく、本アルバムで2000年度の『スイングジャーナル誌』ジャズディスク大賞日本ヴォーカル賞を受賞しています。

伊藤君子(VO) 、小曽根真(P)のほか、北川潔(B)、クリス・ミン・ドーキー(B)、 クラレンス・ペン(DS,PER)、グレッグ・ハッチンソン(DS)、 ジョー・キャロ(G) 、アンディ・グラヴィシュ(FL)ほかのメンバーが花を添えていました。

少女が少年に代わった「A Boy From Ipanema(イパネマの少年)」では少女の愛おしい気持ちを感じて歌っている伊藤さんがここにいました。発声も少し可愛くしており、変拍子のリズムが軽やかさをもって伝わってきます。

フュージョンの名アルバム、ジョー・サンプルの『虹の楽園』に収められていた「When The World Turns Blue」を粋なバラードとして歌いあげています。伊藤さん自身の解説にもあるように、クリス・ミン・ドーキーのベースが味わい深く、小曽根真の叙情的なピアノが心に染みるようでした。

ボノ・ノヴァの名曲「Like A Lover」も美しく流れるような歌唱で披露していました。昔、セルジオ・メンデスの心地よいサウンドで親しんだ曲が、静かな雰囲気をまとって帰ってきたようです。

「Isn't It Romantic ?」の余裕を感じさせる歌い方はまさしく円熟味の表れでしょう。小曽根のピアノに伊藤さんのスキャットが乗っかっていく2分30秒以降の箇所は心地よく伝わってきます。見事な息の合い方でした。

ラストの「Everytime We Say Goodbye」は、小曽根とのデュオです。伊藤さんのコメント「歌いながら心が震えました」の通りでした。素晴らしい音楽には言葉を要しません。ただ聴くのみでしょう。

ディーヴァ・ディーヴォ
ディーヴァ・ディーヴォ
価格: ¥ 2,749

5つ星のうち 4.0 様々な役柄を歌い分けるメゾ・ソプラノのジョイス・ディドナート, 2013/4/14
レビュー対象商品: ディーヴァ・ディーヴォ (CD)
リーフレットの3ページ目の録音データには、2010年9月18日から28日に録音したと書かれていますが、指揮者の大野和士氏の解説には「今回の録音は、2009年9月に10日間にわたって行われた。会場は、リヨンのオーディトリウムというコンサートホール。」とありました。
どちらが正しいのかは分かりませんが、「2012年の第54回グラミー賞『最優秀クラシック・ヴォーカル・ソロ(Best Classical Vocal Solo)』」受賞作という輝かしい評価を受けたアルバムをじっくりと聴きました。

音域の影響もありますが、メゾ・ソプラノのアリアは陰影に富んだ曲が多いですし、本作では「ズボン役」と言われる男役と女役のアリアが交互に収録されているのが特徴でしょうか。ジャケット写真はそれをイメージしたものです。

表現力の幅広さは、1曲を聴くにつれ確信に変わっていきました。弱音の響かせ方も上手いですし、低音の迫力もなかなかのものでした。多才な一面を聴かせるアルバムですし、華やかさと言うよりもいぶし銀のような輝きを放つアルバムと言えるでしょう。

ジョイス・ディドナート自身による2ページの解説の後、リヨン国立歌劇場管弦楽団と合唱団を指揮した大野和士氏のコメントがまとを得ていましたので、引用させてもらいます。
「ジョイス・ディドナートの素晴らしさは、彼女の音楽への献身の深さにある。あらゆるテクニカルな問題をクリアしながら、作品の中の本質的な部分へ、全力を挙げて近づこうとする。なので、彼女の舞台からは、声の饗宴といった次元をはるかに越えて、人間の業が伝わってくる。彼女自身が愛してやまない、人間そのものの様々な感情がほとばしり出る。」とのこと。

ラストのR.シュトラウス:歌劇「ナクソス島のアリアドネ」の「先生、お許しください!(作曲家)」のような難曲も卓越した表現力で歌いあげています。これくらい役に入り込む歌唱ぶりを聞かされるとそのポテンシャル能力の高さに驚かれることでしょう。グラミー賞に値する表現力をもったメゾでした。

日本の地方財閥30家 知られざる経済名門 (平凡社新書)
日本の地方財閥30家 知られざる経済名門 (平凡社新書)
菊地 浩之著
エディション: 新書
価格: ¥ 798

5つ星のうち 5.0 地方財閥の成り立ちや発展ぶり、現状を知ることができる書, 2013/4/14
これまで日本の財閥や同族企業について著作のある筆者・菊地浩之氏が地方財閥の30家を取り上げ、その地域の経済活動の中心となった過程と現状を分かりやすく解説した書でした。

地域別に資産額の多さで選別されたようで、冒頭の「甲州財閥」の若尾家が幕末維新後、利権を獲得し、東京電燈、若尾銀行などを設立しましたが、戦後をまたずに没落した経緯が述べられています。

一方の根津家は、東武鉄道を買収した根津嘉一郎が有名です。根津美術館の優れたコレクションを見ても、その経済力の豊かさは今でも感じることができます。33ページに根津家の華麗な家系図が示してありますが、地方財閥の範囲なのでしょうが、中央政治や経済界との密接な交わりを見て取れます。

続く、江州財閥の伊藤忠兵衛家は説明不要でしょう。丸紅や伊藤忠の祖ですので、本来もっと記述内容は多くても良いのですが、30家を盛り込むために簡略な説明になっているのは仕方が無いですね。
同様に近江高島から出た高島屋の飯田家に触れています。ダイエーとの提携は当時話題になりましたが、脱創業家に関してはここでも簡単な記載に終わっています。
地方財閥の成立から発展、そして没落もしくは影響力の喪失までをダイジェストに知るには好著ですが、深く知るには巻末の参考文献(興味深いものが紹介してあります)や会社史にあたるのがベストでしょう。

中京財閥の岡谷家(岡谷鋼機)、瀧家(タキヒョー)、神野家、森村家(ノリタケ、TOTO)など、現在につながる発展過程を見るにつけ、財閥の息の長さに改めて感心することでしょう。
九州財閥の貝島家、麻生家、安川家では、総理大臣を輩出した麻生家が有名ですが、炭鉱全盛期の凄さをもっと知りたくなりました。

102ページに阪神財閥には、住友財閥、野村財閥、鴻池財閥もあるわけですが、本書では省略し、岩井産業やダイセル化学の岩井家、菊正宗や白鶴の嘉納家、白鹿の辰馬家、神戸銀行の・同和火災の岡崎家、川西家(川西航空機、現新明和工業)など、現代につながる会社の歴史を辿れます。企業系統図が面白く、合併の歴史が栄枯盛衰を感じさせました。

なお、第2部は事業編で、醤油の茂木家、浜口家、正田家、酢の中埜家、農林水産の部の田部家、諸戸家、本間家、中部家、紡績・製糸の部の大原家、片倉家、坂口家、機械工業の部の島津家、中島家、服部家が紹介してあります。

何れも名門・名家で、現在でも様々な都市を訪れるとその往時の栄華を誇る建物や住居を見ることができます。先日も桑名の諸戸家のお屋敷を拝見してきましたが、山林王の財力の凄みを感じてきました。

個人的には257ページに紹介された本書から削除された財閥の書が読みたいと思ってしまいました。資料も社史も少なくなるでしょうが、まさしく知られざる地方財閥という意味で関心があります。

歴史REAL八重と会津戦争 (洋泉社MOOK)
歴史REAL八重と会津戦争 (洋泉社MOOK)
価格: ¥ 880

5つ星のうち 4.0 ムックの情報量の多さは読み手を満足させます, 2013/4/14
山本八重や会津戦争に関心がありますので、本ムックに行きつきました。
まず、幕末の銃砲がカラー写真と解説で示されていました。ゲベール銃、ヤーゲル銃、エンフィールド銃、そして八重も鶴ヶ城に立て籠もり使用したスペンサー銃、ほか当時使用された機関銃や大砲などは類書で満たされなかった情報が詰まっており、期待を高めます。

会津が生んだ「幕末のジャンヌ・ダルク」の山本八重の生涯と激動の時代背景をつぶさに詳しく紹介してありました。写真の多さが分かりやすさに通じます。
歴史叙述の文体も読者を意識した平易な記述が好ましくうつりました。

「会津藩の士風と家訓」に書かれているように、藩祖保科正之の教えが流れており、それが会津藩の立ち位置と状況に大きな影響を与えていることを述べています。幕末の京都の治安状態は広く知られているわけですが、幕末の歴史のダイジェスト版だと思えば、よくまとまっていました。
25ページには高須4兄弟の写真が掲載してあり、敵味方に分かれて戦った4兄弟の徳川慶勝、一橋茂栄、松平容保、松平定敬のその後の集合写真は数奇な運命を写しだしているようでした。

会津戦争についても同様で、見開きの新政府軍侵攻図によって、日をおって会津が追い詰められていくのが伝わってきます。中野竹子が奮戦した「柳橋の戦い」、「悲劇の白虎隊」「会津籠城」そして「会津開城」とドキュメンタリー・タッチで描写してありますので、堅苦しい歴史書を読むという雰囲気は感じられません。

古写真でみる会津若松城は見開きしか掲載してありませんが、確かに戦闘の激しさを物語っています。

山本八重に関してはかなり詳しく晩年まで様々な角度から記してあり、丁寧な編集と言えるでしょう。新島襄との出会いから結婚、同志社創設以降の生き方もしっかりと叙述してありました。人名や地名に振り仮名がふってある配慮が読者を助けることでしょう。

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