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とおのとほさんが書き込んだレビュー (山形県東置賜郡)

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暦のはなし十二カ月
暦のはなし十二カ月
内田 正男著
エディション: 単行本
価格: ¥ 2,160

5つ星のうち 5.0 自分では元号を西暦に変換できない人のための最初に手に取る書物, 2015/3/2
レビュー対象商品: 暦のはなし十二カ月 (単行本)
わたしは時間についてすごく興味がある。時間のジャンルの一つとして暦にも興味がある。その一つである旧暦も目に付きやすく興味がある。
自分でも気づいていない障害があるからだろうか? そもそも時間感覚がイマイチなところがある。若いころ図書館で試験勉強をしているうちに、肝心の試験をスルーしてしまうことが重なったりした。こんな自分なので、かえって攻略して見たくなったのだが、理数的な話は理解しがたいし、概説はシックリしないのだ。
例えば、丙午とか、寛政6年とかは西暦何年なのか、を自分では計算できない。それどころか、「明け六つ」はテキストに記述されているシチュエーション(夏至の日とか)では何時なのか、という時刻にも答えられない。
今どきwebページを探せば書いてあることかもしれないが、自分でできなければシックリしない。
そこで、エピソードで親しんでみようと思い、本書を手にしてみた。読み始めは、やはりシックリしない。だが、ガマンして読み進むうちに「自分」と引っかかるところが出てきた感じがするようになった。
ほとんど理解できなかったといっても過言ではないが、平安時代の陰陽師みたいに、江戸時代も天文方が三家あった、ということに興味が持てた。
あるいは芭蕉「おくのほそ道」での、芭蕉の歩く速度についての説明がおもしろく読めた。
文学書の解説では「辰の上刻とは午前8時」との説明。正午までの4時間で鹿沼~日光間の7里を歩くのは忍者だったからではないのか、ということに対し、5月18日の辰の上刻は5時15分になるから6時間あることになり、特殊な人間でなくても歩ける、との説明は、なんだか恨めしいほどだった。
わたしなら「おくのほそ道」はフィクションなので、字義通りに読むことはないのでは? 曾良日記を併せて読んでみた? としかいえない。
おかげさまで、とっかかりができたようで、これからも学習していけそうな展望が開けてきた。

膨大な知識を詰めこんでありながら、気軽に読めるエッセーに仕立てられている。本書一冊で暦や天文学を理解しようとは思わない。慣れ親しみ、理解の道のはなむけの書となるべきものだろう。


朗読CD 朗読街道(32)銀河鉄道の夜 宮沢賢治 (2CD)
朗読CD 朗読街道(32)銀河鉄道の夜 宮沢賢治 (2CD)
価格: ¥ 2,452

5つ星のうち 5.0 原作に忠実なシンプルな朗読はかえって貴重かもしれない, 2015/2/24
スタジオスピークに問い合わせたのだが、原作に忠実に朗読しているということだったので、購入した。
耳しか空いていない通勤時間に「銀河鉄道の夜」を味わいたかった。だが、脚色・演出があると、それは別物になってしまうので、たえとえそれが良いデキのものであろうと避けたかった。
一人の読み手が、原作を一語も省略しないで読んでいるもの、それには本CDがうってつけのようだった。

原作に忠実といったが、そもそもテキストは確定していない、ということを聞いたことがある。物語の順序が現行とは違うという意見がある。
ともかく現行の原作に忠実ということだ。

実際に聴いてみると、歯切れもよく、文句なし。もっとも、もっと感情を込めて、と思うところもあった。だが、それではその人の解釈になる。シンプルでこそ自分なりに鑑賞できるというものである。

聴者がどんなものを望むかで、本CDの評価は変わるだろうが、それは製作販売者の責任ではない。シンプルな朗読はかえって貴重かもしれない。


実践!アインシュタインの論理思考法
実践!アインシュタインの論理思考法
スコット・ソ−プ著
エディション: 単行本

5つ星のうち 5.0 頭の勤勉は手の勤勉から, 2015/2/21
最初の2、3ページはおもしろくなかった。だが、すぐ面白くなり、途中で最初を振り返ってみる気になったが、もはやおもしろいばかりであった。

おもしろくないと思った理由は「ルールを破れ」というくだりがあたりまえすぎたからだ。

順不同で、おもしろかった事項をメモしておこう。

「困難を避けられれば、もっと創造的になれる」

これこそ目からウロコではないか。困難に立ち向かえとか、難問を解決しようとかがフツウいわれることではないか。
自分の斬新なアイデアを貫くための障壁への対処の仕方が述べられている。わたしはそんなことには興味はない。若いときはそれもあった。けれども高齢者になった現在は「できることをしよう!」というインスピレーションのようなものを受取った。
「できることから始めれば、もっと生産的になれる」と。

前に戻って・・・「疑問点を必ず書き出せ」。ノートにしていつも眺めるようにすれば解決策が浮かぶ、というものだ。これも聞いた事があるような話だが、おもしろかったのは「問題書」を作れ、ということだ。
「問題」「解決策を求める理由」「次のステップ」を表にまとめろという。
たしかに問題は突きつけられないとちゃんと考えないものだ。

いつも思うのだが、わたしはこの「問題」意識がなかなか湧いてこない。なんか、平常、何不自由なく暮らしているような、ノンビリ屋さんなのだ。そんな自分を「へそ曲がりの猜疑心のかたまり」にしなければならない。これは本書には書いていないことだ。

そしてその問題はなぜ解決しなければならないのか、意義を確認する。
解決したらどうーなるのか、解決してどーしたいのかを書く。
こうしておくと、解決策が浮かびやすくなるようだ。

やっぱり、手を動かすことなんだなあ。手を動かすと頭も動くんだなあ。

「昔の人間は手の勤勉、今の人間は頭の勤勉」と思ったけれど、手と頭は連動しているんだなあ。

ボンヤリと停滞していることを、いろいろ書き出してみうよっと。


右脳の達人 爽快!まちがいミュージアム2
右脳の達人 爽快!まちがいミュージアム2

5つ星のうち 5.0 おもしろい! 頭にもいいかも・・・老眼対策にもいい, 2015/2/21
「右脳の達人」という言葉が付してある。ゲームをやっていると右脳が開発されるのかと、始めた。すぐにハマってしまった。すごいものだ。寝ても醒めても引きつけるなんて。時間がすぐに過ぎていく。適度な難度だ。じっくり好きなだけ自分のペースで間違い探しをするものと、秒読みでやるものをした。タダの時間つぶしなのか、右脳の開発に繋がるのか。それは実感できないが、目を良く動かすので、老眼対策には良いと実感できた。
紙のものだと、家族で使い回すには印を付けられない。それはとてもきついことだ。ゲームだとみんなでできる。・・・しかし飽きた。
またいつかやるときまで閉まっておこう。2週間だった。


発達障害の子どもたち (講談社現代新書)
発達障害の子どもたち (講談社現代新書)
杉山 登志郎著
エディション: 新書
価格: ¥ 778

5つ星のうち 5.0 ビッシリと具体的な提言が込められていて手元から離せない, 2015/2/13
発行日が2007年。現在2015年だから、少し古くなったかもしれない。けれども本書でなされているたくさんの提言は、ひょっとしてあまり進展していないのではないかと恐れる。自分自身、もっと早く本書を読んでいればよかったと後悔している。

「発達障害」というとわたしがすぐに思い浮かべるのはADHDなので、そのつもりで本書を読むと、第一に自閉症、次にアスペルガー症候群が重点的に叙述されている。後ろ半分がADHDや学習障害などほかの障害が取り上げられている。それでも、どれもが十分なほど対処のしかたの提言がなされている。
ましてや、本腰を入れて述べられている自閉症やアスペについての「洞察」は多岐に及び、相当に念入りで密度が濃く、本書は手放せない書物となるようだ。
考察ではなく「洞察」と述べたのは、観念論ではなく、臨床に基づいた提言ばかりだからだ。その提言は各個人が心すれば実現できるものも多い。現場で診療や療育に携わる方々へのアドバイスや苦言。行政への改善や施策の加速化を促している。専門の児童精神科医の不足も憂いている。

児童虐待のネグレクトは、発達障がい者によることがあるようだ。発達障がい児を生むのではなく、・・・それもあるだろうが、なにより親が当事者であるといわれて合点がいった。自分の子どもを死に追いやるほどの折檻をなぜできるのだろうか、と不思議だったのだ。連れ子を虐待する若い父親の場合も、小さい子が煩わしければ遠ざけるという程度ではなぜ済まなかったのだろう、という疑問があった。

自閉症の子どもは「逆転バイバイ」つまり手のひらを自分に向けてするという。これはギクッとした。思い当たることがあったからだ。大人のしかたを機械的に真似れば、それは正解であるが、人の体験を自分の体験に重ねることができない証だとする。
わたしの思い当たる子どもは、最初は機械的に真似てもやがて自分に取り込むようになる、それまでの初期対応をしているのだと思いたい。

行政や医療制度の現実的な遅れをカバーするためには、やはり草の根の立ち上がりが必要だと感じた。杉山先生は自助会「アスペ・エルデの会」を結成したようであるが、ファミリーサポーターの会などを広くたくさん結成し、助け合えるシステムを作るべきなのだ。

近年になって発達障がい児は増えているという。その原因は、添加剤の多い食品を食べる機会が増えてきたからかと思おうとしたところ、糖尿病のように潜在的に因子の持つ人は元々多かったようだ。社会的な規律が弛み続け、個性を重んじるようになった現代、その因子が「個性」となって露顕してきたようだ。そうなるのはしかたがない。個性を重んじる風潮は後戻りできない。いままでは抑制され隠され、放置されてきたのだ。その替わり二次障害が生じ、さまざまな社会不適応現象を起こしていたのだ。刑務所に入所している人たちの中には、発達障がい者が少なくない割合で混じっているというではないか。それはとても悲しいことだ。

わたしはどうしたら草の根の組織を作れるのかは知らない。そのような動きがあれば参加して、微力ながら一助にでもなれればと切に願う。


跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること
跳びはねる思考 会話のできない自閉症の僕が考えていること
東田 直樹著
エディション: 単行本(ソフトカバー)
価格: ¥ 1,404

5つ星のうち 5.0 人はなぜ分かってくれないのか, 2015/2/5
「人の話を聞く」という章で、東田くんがつらかったのは、自分の気持ちを分かってもらえなかったことだという。
人は自分なりに相手の思いを想像し、困難にくじけてしまう自分を思い描きたくなくて、物語を創作してしまう。そんな人のアドバイスは到底受け入れられるものではないようだ。余計なことを言わずに、ただ寄り添ってもらう方がいい、という。

・・・そうかなあ。人はいい方向に持って行ってあげたくて解決法を提示してあげているんじゃないのかなあ。でも、ヘタな説教よりもそばで話をひたすら聞いてあげることだね、それがいいんだね。

本書は「思考」と銘打っているだけに、文学的でありつつも哲学的で、おもしろい切り方に楽しめた。もう「自閉症児が書いた珍しい文集」からは脱皮したといえると思う。
わたしとは違う時間の過ごし方、世界でのあり方が描写されていて、自分の暮らし方を振り替えさせられた。たとえば、風の音や雨音を私は堪能したことはない。音楽を聴き、読書に耽り、テレビにうつつを抜かしている。別に電気のない山小屋に籠ることもないだろう。日常でも体験できることなのだ。自分もピョンピョン、体力の限り飛び跳ねて、その感覚を心ゆくまで味わってみようかという気にさせられた。川や雲の流れをいつまでも眺めるのもいいかもしれない。

誰かが自分のことを待ってくれていると思うだけで彼は幸せな気分に浸れるという。誰かとは誰のことだろう。何事かを成し遂げたボクを待ってくれている存在。その思いがあれば、もう、孤独に怯えることはないのは確かなことだ。
マンガ「エヴァンゲリオン14」でも、シンジくんはお母さんである初号機が天上で見守ってくれると言葉があって孤独を乗り越え、自立を目指せるようになり、人類補完計画は頓挫した。
「僕を待ってくれる何ものか」それがあって、直樹クンは孤独を乗り切ってきたことだろうし、世の多くの孤独な人々も、例えば「神」「イエス」といった成長を見守ってくれる超越的存在を感じるようになれば、人生を乗り切っていけるのだと思う。


地獄の黙示録 特別完全版 [DVD]
地獄の黙示録 特別完全版 [DVD]
DVD ~ マーロン・ブランド

5つ星のうち 5.0 ベトナム戦争を戦ったアメリカ軍人の地獄, 2015/2/5
あれほど人気を博した「ゴッド・ファーザー」をわたしが楽しめたのは第1作目だけだった。あとは暗闇の中で気持ちよくお昼寝をさせてもらっただけだった。そのフランシスコ・コッポラ監督の手になる「地獄の黙示録」はしかし、期待を持って映画館に入場したのだった。「ゴッド・・・」で掘り当てた金脈をすべて湯水のごとく注ぎ込んで制作した本画。金鉱で得た限りない富が回収しきれないほどであった。おかげで富豪になりえたのは一時で、たちまち借金返済に追われる身となった。その起因となった気合の本画は、公開当初からヒッシと伝わってきており、いい時間が過ごせそうだと期待するところがあったのだ。・・・しかし、やはり後半まで持たず、わたしは睡魔の誘惑に負けて眠りに付き、時おり目を覚ましてスクリーンに目をやるのだが、地獄の絵図は確かに繰り広げられてはいる、しかしそれよりも、何を言わんとしているのか、曖昧模糊とした眼前の状況を前にして意味を突き止めるのがなによりの地獄といえたものだった。
「砂の惑星」もそうであったが、営業の都合で勝手にフィルムを寸断してしまうと訳分からなくなるという地獄であったか。完全版をもう一度観直さないと死んでも死にきれないという現在になって再度、なにが「地獄の黙示録」なのか確かめることにした。

ともかくゴージャスな戦場再現であることは間違いない! ウィラード大尉は密命を帯びてベトナムのヌン川を俎上する。イカレて神になったというカーツ大佐を暗殺するためだ。

川を俎上するに従って、いろんな戦場の様相が現れる。「プレイボーイ」のセクシーモデルのバニー・ショー、アメリカの前の支配国フランス統治時代に入植して70年もの年月を過ごしているフランス系農園経営者一族、そして混乱する前線の文字どおりの地獄・・・川の終点で出迎えたのはカーツ大佐にマインド・コントロールにある武装原住民たち。
彼の王国は死体だらけ、生首だらけのおぞましさだ。
デニス・ホッパーの扮する米人カメラマンが案内役になって、いよいよカーツ大佐と面会するのだが、彼はいつか暗殺者が来るであろうことを予想していた。
カーツはいう。「おまえは殺し屋か」ウィラートは答える。「いえ、軍人です」・・・けれども暗殺もするアメリカ文化である。最終的には「古事記」のヤマトタケルノミコトと同様、宴会で盛り上がっている最中に紛れて、カーツを切り倒すのである。「これでオレは少佐に昇進だ」。

カーツ大佐は優れた軍人でありつつ、詩を朗読する人物とされている。画面に映し出された書籍は「The Golden Bough」と「From Ritual to Romance」。どちらもアメリカやイギリスの図書館ならどこにでも蔵書してある(だろう)古典である。ちなみに、神話、呪術などが書かれてあって、岩波文庫の「金枝篇」を捲ってみると、けっこうおもしろそうな内容である。

カーツ大佐は肝心なことを、彼の思想を述べるのだが、どうも、訳分からない。分かったことは、ベトコンと軽蔑していた敵はとても優れた、訓練を受けた相手であることが分かって生き方を変えた(敵前逃亡した)ということだ。

タイトルになった「地獄の黙示録」が公開以来気になっていて、数年前に新約聖書すべてを読み、最後の「黙示録」にも行き着いて読んでみたのだが、映画の関連で言うならば、神と悪魔の決戦となるべく、決戦場であるハルマゲドンであるベトナムの、人間の遭遇する最悪の事態の中にいま、放り込まれているのだということだろう。

しかし、現実は、ベトナムという局地における米軍の史上初の負け戦ということでしかない。それはそれで地獄であるわけだ。


新世紀エヴァンゲリオン (14) (カドカワコミックス・エース)
新世紀エヴァンゲリオン (14) (カドカワコミックス・エース)
貞本 義行著
エディション: コミック
価格: ¥ 626

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5つ星のうち 4.0 人類補完計画によらなくても母の見守りによって地球は安泰を得られる, 2015/2/2
長年にわたって細々と書きつづけられていたエヴァンゲリオンシリーズがいよいよ完結。執筆が長期間になると条件が変わってくる。
執筆者が青年から中年になるという避けられない時間による変容というものがある。青雲の志を持った緊張と野望と知的・肉体的初々しさが、余裕と保守と知的・肉体的疲労に取って代わるようになる。
エヴァがテレビで放映していたころは中学生を中心とした、シンジと同世代の男子の心を掴んでいたが、同世代の男子が忌まわしい事件を起こしたりして、カウンセリングのジャンルの方向から本シリーズに切り込まれることが通常であった。男の子と親・家族のあり方とか。
SFだと作中創造された技術や世界観の考察が多く語られることだろうが、本シリーズは思春期の男の子の大人になり方が語られるネタになった。
すっかり高齢になったわたしなどは、改めて本シリーズを俯瞰すると、使徒はまるで癌だ。中年から発ガンの心配や様々な生活習慣病の発病が気になるようになる。
中性脂肪、高血圧、コレステロール、尿酸、糖尿、クレアチニン、癌・・・インパクトを青春期の社会対応上の爆発的行動だとすれば、それによるツケが中年になって肉体を襲ってくる。これらはまさに使徒と重なって見えるのだ。
それはともかく、お父さんが青春の爆発を起こしているころ、子どもが中学生に上がると、子どもにすればまったくいわれのない大人たちからの様々な押し付けに、対応を迫られるようになる。そのひとりとなるシンジには共感を抱くのだが、中学生たちは数年もすれば混乱が整理され、大抵は覚悟ができるようになる。まさに本巻のシンジも落ち着いてしまって高校受験に集中するようになっている。
父親という男は青春期の爆発以後、家庭を顧みることもできずに眼前の課題に夢中になって取り組み、家庭を振り返ることができるようになるには、くたびれて行き詰まった中年以後を待たねばならない。子どもはそのころにはいい年になっていて、かつての父親像を引きずって、くたびれた父親をいたわることもなく、軽蔑し憎悪してたりする。それでもある程度大人になっているものだから、適当にあしらうこともできるようになっている。
それまでは仕事のためには子どもも利用することがあっただろう。それが子どもには荒れる一因となったこともあっただろう。そのツケは冷たく返戻される。
大人の食っていくためにはわが子さえ利用するというやり方を世の中の現実として、父ゲンドウは息子シンジに教え諭すのかと思っていたら、なんと、シンジに辛くあたった理由は女ユイの取り合いだったというのだ。逆エディプス・コンプレックスではないか。息子が母を慕い、父を憎らしく思う、というあり方の逆。
冷酷な大人のルールの象徴だったはずのゲンドウが、じつは口唇期コンプレックスのような、マザコンのような、大人になりきれていない男だった。日本的だなあ。
確かに、仕事から家に帰ったとき、夕食やらお風呂やら妻から準備してもらったり、かまってもらいたい時に、赤ちゃんの世話に追われて「自分で食べて」なんていわれると赤ちゃんが憎らしくなるものかもしれない。でも、赤ちゃんはかわいいから、そんな思いなんてすぐになくなると思うのだけれど。
妻が赤ちゃんの世話に追われて、自分は寂しくテレビ見ながら食事をするなんてガマンできると思うんだけれど・・・。ゲンドウはそれがガマンできない情けない人物だったのだ。
長編になりすぎ、時間が経過しすぎると、どのように結末をまとめたらよいか、自分の投げた波紋が大きくなりすぎて、手に余るということもあるだろうなあ。

そして本巻。
いよいよ人類補完計画が着手されるのだろうかという、手に汗握る結末になるはずが・・・。
初めての恋人はお母さんに似ているとよく言われる。だから綾波レイがじつは母のDNAを持ったクローンだとしても、それはまあ、キモチの悪いことではない。さらに母と息子が近親相姦の関係になったとしても・・・。
母である初号機エヴァが天上からずっと見守ってあげるから安心して生きていきなさい、という構図もまだアリだろう。
悪逆非道と思われたゼーレの人類補完計画は人類を個体の殻から外して命を一体のようにさせるというものだった。本巻では途中まで進行したが、なんとゼーレは「これでよし」としてストップして元に戻ってしまった。それは母の守りをシンジが得られたからであろうが、ちょっと甘いのでは?
・・・時間・空間は錯綜しながらもほぼ元に戻り、シンジは東京の高校を受験してひとり立ちすることになりそうだ。
最後のシーン。人類補完計画の大道具だった9体の使徒たちは朽ちて遺物となり果てている。地球はまた通常の歴史を歩むようだ・・・。


新世紀エヴァンゲリオン (13) (カドカワコミックス・エース)
新世紀エヴァンゲリオン (13) (カドカワコミックス・エース)
貞本 義行著
エディション: コミック
価格: ¥ 626

5つ星のうち 5.0 本巻は、ただ、ひたすら、奇跡に向かって息を飲んで事態を見守るしかない, 2015/1/30
アスカを助けるべく奮起したシンジ。ついに9体のエヴァを倒した・・・と思ったら復活。やつらは不死身なのか? 復活したエヴァは羽化している。月に突き刺さっていたロンギウスの槍が抜け地上に降下。初号機はついに、エヴァシリーズと槍によって拘束され、魔方陣に貼り付けにされる。もはや、サードンインパクトは避けられないのか。

地下に眠るアダムの前にゲンドウとレイが立つ。レイも変化し始める。アダムとリリスの合体か?
レイはここに来てゲンドウを異体であると識別する。レイはそのまま巨大化し目指した本命は拘束されている初号機シンジだ。
シンジもまた変貌している。完全にそれまでとは別物の突起物になる。
二物は合体してインパクトを引き起こすのか?
レイとシンジはアダム(地球)とリリス(外天体)の関係だったっけ?
もはや自分にはついていけない複雑さだが、ともかく最終大団円に向かって13巻は終わる。
泣いたり、感動する時間は終わっていた。本巻では、ただ、ひたすら、奇跡に向かって息を飲みながら事態を見守るしかない。


新世紀エヴァンゲリオン 12 (角川コミックス・エース 12-12)
新世紀エヴァンゲリオン 12 (角川コミックス・エース 12-12)
貞本 義行著
エディション: コミック
価格: ¥ 605

5つ星のうち 5.0 息子の叫びに地中から気合の入った母のエヴァが甦るように登場する, 2015/1/29
エヴァンゲリオンで泣いてしまうとは! ゼーレの軍隊がネルフの本部を襲撃。対人防衛に慣れていない本部職員はどんどん撃滅されていく。
シンジはまったく動かない。「動けないんだ」と弱気だ。いよいよ究極の決断に迫られているというのに。
友人をまたしても握りつぶさざるを得ない事態にあってナーバスになったとしても、いまは立ち上がるべきなのだ。でなければ、みんな死ぬ。いや全人類が滅びる。
じつは、外天体が地球の衝突。ファーストインパクト。外天体リリスに在った生命の卵が人間を誕生させた。人間もまた地球を傷つける使徒の一つだったのだ。
もともと地球にあった生命の卵アダムは12の使徒を生んだ。
外天体の生命体である人類を掃討し、新しく地球本来の生命を地球に誕生させようという。誰がだかは分からないけれど。ともかくこのままだと人類は滅びる。使徒をシンジたちの働きによって殲滅。しかしゼーレやゲンドウは人類補完計画を諦めない。・・・ともかく、今戦いに勝利しないと明日がないのだ。
父ゲンドウが体内に取り込んだアダムが胎動し始めた。その父はシンジを冷たくしていたのは妻ユイの愛をシンジが一身に受けていたことへの嫉妬であった。!
「もういい、シンジ、おまえは母ユイのもとへ行け!」
ゲンドウはそう言い残して、自分は愛人化したレイに会いにその場を去る。残されたシンジはまだ動かない。ミサトが励ます。濃厚なキスまでしてあげる。やっと動けるようになったシンジを送り出し、ミサトは敵と共に自爆。ああ、泣ける!
外ではゼーレの送り込んだ新型エヴァのシリーズ9体全機が襲う。それをママの力によってこの世界に戻れたアスカが孤軍奮闘で撃滅しまくる。しかし限界が近づいた。シンジ! 早く駆けつけるんだ!
ミサトに送り出されたシンジは母であるエヴァ初号機にたどり着いたものの、現状はもはやドロドロだ。
シンジは叫ぶ。「母さん! 動いて!」
息子の叫びに地中から気合の入ったエヴァが甦るように登場する。


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